【北京=中川孝之、ワシントン=蒔田一彦】中国軍が南シナ海で2020年8月に行った対艦弾道ミサイルの発射実験の際、航行中の船を標的にしていたことを、中国軍の内情を知りうる関係筋が明らかにした。

 米軍高官もこの事実を認めている。「空母キラー」とも呼ばれるミサイル2発が船に命中したとの複数の証言もあり、事実とすれば、中国周辺に空母を展開する米軍の脅威となる。

 発射実験は8月26日、海南省とパラセル(西沙)諸島の中間の海域で行われた。関係筋によれば、無人で自動航行させていた古い商船を標的に、内陸部の青海省から「東風(DF)26B」(射程約4000キロ)1発を先に発射。数分後、東部の浙江省からも「DF21D」(射程1500キロ超)1発を発射した。ミサイル2発は「ほぼ同時に船を直撃し、沈没させた」という。

 別の関係筋も、ミサイル2発が商船に命中したと証言した上で、海域周辺に展開していた米軍の偵察機やイージス艦に「中国軍のミサイル能力を誇示した」と明かした。中国軍が南シナ海で動く標的に発射実験を行ったのは初めてとみられる。船の位置を捕捉する偵察衛星などの監視体制、ミサイルの精密度が着実に向上していることを示す。

 米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官は11月下旬、オンライン形式で開かれた安全保障関連の公開フォーラムで「中国軍は動く標的に向けて対艦弾道ミサイルをテストした」と認めた。実際に船に命中させたかどうかについては明言しなかった。