食習慣が乱れがちな年末年始に注意すべき点は何か。東京慈恵会医科大学附属病院栄養部係長で管理栄養士の赤石定典さんは「肉類など脂質を適量摂ることは重要ですが、フライドポテトやポテトチップスは脂質も糖質も過剰になりがち。また麺類は血糖値上昇のリスクがあるため、ラーメンなら食べる前にある工夫をするといい」という--。

※本稿は、『プレジデントFamily2020秋号、2021冬号』の一部を再編集したものです。

撮影=よねくらりょう

■脳にいい上手な脂の取り方、あぶら抜きはむしろ中性脂肪が増加

大人も子供も好きな食べ物といえば、鶏の唐揚げ、とんかつ、ハンバーグ、ステーキなどの脂っこい料理。でも、脂質の取りすぎが気になる……という方は多いでしょう。

確かに脂質を多く取りすぎると肥満の原因になり、動脈硬化のリスクも高まります。だからといって、むやみにあぶらを避けるのは感心しません。

なぜ脂質を抜いてはいけないのか。まずはここからご説明しましょう。

脂質は糖質、タンパク質とともに三大栄養素の一つ。エネルギー源になるほか、体の細胞膜や核膜をつくったり、皮下脂肪として体温を調節したりとさまざまな役割を担っています。脳の約60%は脂質でできていますし、神経伝達物質の材料にもなる。脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収にも欠かせず、とても重要な栄養素なのです。

さらにいうと、脂質は消化に時間がかかるため、腹持ちがいいのも特徴です。脂肪が少ない食事はすぐにおなかがすいてしまい集中力が低下します。また、物足りなさから白米やパンなどの主食やお菓子などの糖質を取りすぎてしまいがち。するとインスリンが過剰に分泌され、集中力も低下するほか、血液中の脂肪である中性脂肪を増やし、かえって動脈硬化のリスクが高まってしまうのです!

大切なのは、脂質を適量、食事に取り入れることなのです。厚生労働省の基準では、1日に必要なエネルギー量の20〜30%が目安とされています。10〜11歳の子供だと約2000㎉を必要とするので、そのうち400〜600㎉、重量にすると約55gの脂質を取らなければなりません。100gのロースカツの脂質は約35g、鶏もも肉の唐揚げは3個で約25gなので、前後の食事や翌日の食事で脂質の量を調整すれば、食べてもまったく問題はないのです。

むしろ気をつけたいのは、食事以外の脂質です。おやつにコンビニなどで手軽に手に入る揚げ物を食べるというのは注意が必要です。

大人も子供も大好きなフライドポテトやポテトチップスには脂質に加えて糖質もたっぷり。これをおやつに食べると脂質も糖質も過剰になるばかりか、おなかが膨れて食事量が減り栄養バランスも崩れてしまいます。フライドポテトなら主菜のつけ合わせにして5〜10本程度に抑えましょう。ちなみに、じゃがいもは細切りより大きめに切ったほうが油の量は少なくなります。

■朝は卵、昼は鶏肉、夜は魚

もう一つ、心がけてほしいのは、バランスよく脂質を取り入れることです。脂質を構成する脂肪酸は、肉や乳製品などの動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸と、植物油や魚に多く含まれる不飽和脂肪酸に大別され、1:3で取るのが理想です。

この割合を保つには3食の主菜の食材を被らせないのがポイント。朝食に卵を食べたら、昼食は鶏肉、夕食は魚にする。調理法も焼く、蒸す、煮るなどバリエーションをつければ、脂質の偏りだけでなく取りすぎも防げます。

また、魚についてはサバやアジなど青魚を意識して食卓に上げてください。魚の脂に含まれるDHAとEPAは体内でつくり出せない必須脂肪酸にあたり、脳の働きを活発にするうえ、中性脂肪を減らし、血液をサラサラにするなどいいことずくめ。

さて、最後にみなさんに質問です。

揚げ物をした後の油はどうしていますか? おそらくこしてもう一度使う家庭が多いのではないでしょうか。実は揚げ油の再利用は絶対に避けたい行為。油は熱(温度)と空気と光で酸化する性質があり、一度でも揚げ物に使うと酸化した油になってしまうのです。

それを料理に使うのは、体に良くないものをとっていることになります。体内に活性酸素が増えて血管や細胞を老化させてしまいます。「大量の油を捨てるのはもったいない」という方は、少ない油で揚げ焼きにして量を減らすか、揚げ物はつくらないかにしましょう。

■ラーメンの前に食べるといいおやつとは?

ラーメン、うどん、パスタなどの麺類はみんな大好きなメニュー。休日のお昼ごはんは麺類というご家庭は多いでしょう。特に冬は温かい麺類の登場回数が増えていませんか?

撮影=よねくらりょう

注意してほしいのは、麺類はご飯やパンと同様、糖質の多い炭水化物だということ。食べると血糖値が急上昇し、インスリンが過剰に分泌されて脂肪を蓄えやすくなるのです。

子供は大人に比べて活動量が多く、また成長にもたくさんのエネルギーを使うので、糖質を多く取ってもすぐに太ることはありません。しかし、子供の頃の食習慣が大人になっても続くと肥満や糖尿病につながるので、今から体によい麺の食べ方を身につけることは大切です。

まず知っておきたいのは、麺類でも血糖値の上がり方には差がある点です。

血糖値が上がりにくい麺はそば。そば粉は食物繊維を多く含むため、血糖値の上昇が緩やかに抑えられるのです。ただし、「そば」と表示されていても小麦粉を多く使った商品もあり、その場合は血糖値が上がりやすくなります。そば粉の割合が多い二八そばや十割そばを選ぶといいでしょう。また、パスタもデュラムセモリナ粉という粒子が粗く硬い小麦粉でつくるため、血糖値の上昇は比較的緩やかです。

逆に血糖値が上がりやすいのは小麦粉からつくる麺で、ラーメン、うどん、そうめんが代表格です。ラーメンにライスやチャーハンを組み合わせたら、糖質のダブル攻撃で血糖値が爆上がりします。ギョーザも皮は小麦粉ですから注意しましょう。

とはいえ、ラーメンっておいしいですよね。実は私も大好物。そこで、ラーメンを食べるときに心がけていることが三つあります。

■麺は硬めが正解な理由

一つめは具だくさんにすること。もやしやほうれん草などをトッピングするほか、炒め野菜をのせたタンメンもおすすめです。野菜の食物繊維で血糖値の急上昇が抑えられ、ビタミン類を取ることもできます。ただし、野菜だけでは栄養的には不十分。チャーシューやゆで卵を追加したり、炒め野菜に豚肉を入れたりしてタンパク質も補えば完璧です。

うどんも具だくさんに。納豆、わかめ、かまぼこなどの練り物、野菜のかき揚げなどをのせましょう。パスタの場合もペペロンチーノのようなシンプルなものより、肉・魚介、野菜を加えたほうが健康的です。もし、ペペロンチーノを食べるなら、前菜にチキンサラダなどを食べましょう。

二つめのポイントは、麺を硬めにゆでること。すすって食べる麺類はかむ回数が少なく、早食いになりがちです。満腹中枢が働くまでには20分かかるとされています。早く食べ終えてしまうと物足りず、残ったスープにご飯を投入……なんてことになってしまいます。

その点、硬めにゆでればかむ時間が長くなり、満腹感が得られやすくなります。また、“レジスタントスターチ”によって血糖値の上昇を抑えられます。レジスタントスターチとは、小腸内で吸収されないでんぷんのこと。硬めにゆでるとその割合が増え、大腸では食物繊維と同様の働きをするといわれています。3分のゆで時間なら2分半にするなど、短めのゆで加減を意識してください。さらにゆでた麺を一度冷やしてしめると効果的です。つけ麺や冷やしラーメンといった食べ方もいいですね。

三つめのポイントはスープや汁を飲み干さないことです。全部飲むと塩分過多になり、ラーメンは脂の取りすぎにもなるからです。飲み干すクセのあるお子さんにはスープを薄めにつくるか、量を少なくしておく。底のすぼまった器に盛ると、スープが少なくても見映えし、飲み干した後の満足感も味わえます。

■カカオたっぷりチョコやこんぶ、茎わかめが◎

最後にもう一つ、おすすめしたいのが、カカオ70%以上のチョコレート、こんぶ、茎わかめなどを、麺類を食べる前に口にしておく裏ワザです。これらは食物繊維が豊富なので、ラーメンやうどんを食べても血糖値の上昇を抑えることができます。

写真=iStock.com/GCapture
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GCapture

----------
赤石 定典(あかいし・さだのり)
管理栄養士
東京慈恵会医科大学附属病院栄養部係長。『慈恵大学病院のおいしい大麦レシピ』などの本やテレビで、食事で健康になる情報を発信している。
----------

(管理栄養士 赤石 定典 構成=上島寿子 料理=伊藤晶子)