共謀罪の新設をめぐり、日本弁護士連合会は8日、法務省がホームページ(HP)に掲載した文書「『組織的な犯罪の共謀罪』に対する御懸念について」に対する反論を日弁連HPに載せた。「共謀罪の成立範囲のあいまいさは払拭されておらず、一般的な社会生活上の行為が共謀罪に問われる可能性は残る」と指摘している。

 衆院法務委員会で審議中の組織犯罪処罰法改正案に盛り込まれた共謀罪は、2人以上の集団が法律に違反する行為に合意するだけで、実際には犯罪行為をしていなくても罪が成立するとされる。政府案では対象の犯罪の数は619を数えるとされ、道路交通法や商法、公職選挙法なども該当するため、野党や市民団体などが「“相談した”だけで処罰できるため、市民活動そのものを脅かし、市民の言論を封じることになる」と反発している。
 
 法務省が4月19日付でHPに掲載した「御懸念について」では、「組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪を共謀した場合に限って成立する」と説明。これに対し、日弁連は「このような説明をするのであれば、むしろ端的に、『組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪』に限定することを法文上明らかにすべき」としている。

法務省の説明と日弁連の反論の要点◇
法務省の説明日弁連の反論
「共謀」とは、特定の犯罪を実行しようという具体的・現実的な合意をすることをいい、犯罪を実行することについて漠然と相談したとしても、(政府)法案の共謀罪は成立しない。
飲酒の席で、犯罪の実行について意気投合し、怪気炎を上げたというだけでは、法案の共謀罪は成立せず、逮捕されるようなことも当然ない。
たとえ飲酒の席でも、具体的に犯罪の方法や日時を決めれば共謀罪は成立することになるはずであり、共謀罪の成立範囲のあいまいさは払拭されていない。
(政府)法案の共謀罪は、例えば、暴力団による組織的な殺傷事犯、悪徳商法のような組織的な詐欺事犯、暴力団の縄張り獲得のための暴力事犯の共謀など、組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪を共謀した場合に限って成立するので、このような犯罪以外について共謀しても、共謀罪は成立しない。法案には、「団体」「組織」への言及はあるが、「組織犯罪集団」が関与する行為との限定はない。このような説明をするのであれば、むしろ端的に、「組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪」に限定することを法文上明らかにすべきだ。
国民の一般的な社会生活上の行為が法案の共謀罪に当たることはなく、また、国民同士が警戒し合い,表現・言論の自由が制約されたり、「警察国家」や「監視社会」を招くということもない。法案では、実行の着手前に警察に届け出た場合は、刑を減免することとなっている。監視社会を招くことはないとするなら、この密告奨励になりかねない規定を削除すべきだ。


【了】

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