学歴は本人の努力しだいだから、公平に近い指標だと言われることがある。2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は「基本的に子どもの学歴は親の知能と収入で決まる。だから、『東大に行けなかったのは努力が足りないからだ』と考えないほうがいい」という――。

※本稿は、ひろゆき『叩かれるから今まで黙っておいた「世の中の真実」』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

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「ニコニコ動画(RC2)」発表会に出席した(左から)、2チャンネル創設者の西村博之氏、小林宏・株式会社ドワンゴ代表取締役社長、杉本誠司・同ニコニコ事業部長=2007年10月10日 - 写真=時事通信フォト

■子どもの学歴は親の年収でほとんど決まる

教育社会学を専門とするお茶の水女子大学の耳塚寛明教授(現青山学院大学コミュニティ人間科学部学部特任教授)が、首都圏に住む約1200人の小学校6年生とその親について調査を行っています。

そこでは、親の経済力と子どもの学力の関係を探っており、次ページの表のような結果が出たそうです。

これを見ると、一つの真実が浮かび上がってきます。親の収入が多いと、子どもはよく勉強し成績もいいのです。耳塚教授は、他にも興味深い指摘をしています。それは、子どもの教育に対する親の期待値が高いほど、子どもの学力も上がるということです。

成績が一番いいのは「大学院まで進んでほしい」と期待している親の子どもで、次が「大学まで」、続いて「専門校・短大」までとなっています。

面白いのは、「高校まで」と「中学校まで」にはほとんど差がないどころか、わずかに「中学校まで」のほうが高いのです。こうした傾向は世界的にも見て取れます。

その中でも社会学者であるアメリカのジョンズ・ホプキンス大学のカール・アレクサンダー博士が行った調査は有名です。

アレクサンダー博士は、ボルチモアの住人約800人を対象に、小学1年生から20代後半になるまでの約30年間を追跡し、その子たちの生活環境と経済的な成功度合いとの関係を調べました。

その結果、両親が健在で経済的に恵まれた子どもは成人しても裕福で、親が離婚したりして経済的に苦労した子どもは、ほとんどが貧困層から抜け出すことはできませんでした。少しの例外として、大学の学位を得た人が28人、比較的高い収入を得られるようになった人が33人いただけでした。

■子どものやる気を出させるためにもお金が必要

よく学歴は本人の努力しだいで手に入れることができるから、公平に近い指標だと言われることがあります。しかし、実験結果を見る限り、実際には親の収入や周りの環境がかなり影響を与えるようです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Prostock-Studio

東京大学名誉教授の上野千鶴子氏は2019年の東京大学学部入学式の祝辞で「あなたたちが今日『がんばったら報われる』と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです」と述べ、大きな話題を呼びました。

上野氏が東大の新入生に向けてこのような発言をしたのは、本人の努力以外に、どのような環境で生きてきたかというのが、学力などにも影響を与えていることを伝えたかったからでしょう。

お金があれば、単純に学費や塾の費用などの教育費をたくさん出せるのはもちろん、子どもにいろいろな機会を与えてあげることができます。

たとえば、小学校の頃に日本の各県の特徴や名産を学びますが、教科書をただ眺めているだけだとなかなか頭に入ってこないでしょう。

それよりも、実際にあちこち旅行に連れて行ってもらい、「青森県は、リンゴの生産量が全国一なんだ。そういえば、青森に旅行したとき、リンゴ狩りをしたな」などと自分の体験に即して学ぶことができれば、記憶に残りますし、学習意欲も湧きます。

でも、親にお金と時間がないと、こういう体験をすることができません。

■「努力がすべて」という考え方は危険

学校の勉強以外に、いろいろな分野で知的な刺激を得られることが、子どもの学力に大きな影響を与えていると僕は思っています。

なかには、貧乏な家庭に生まれながら、学力が高い子どももいます。ビートたけしさんのお母さんは、極貧の中で「教育こそが貧乏から抜け出る道だ」と猛烈な子育てをしたことで有名です。

そして実際、ビートたけしさんと兄の北野大さんは大学進学率が30%を切る時代に、二人とも明治大学へと進学しました。とくに大さんは学問の道へと進み、明治大学の名誉教授にまでなっています。

こうした本人の努力によって、テストでいい点を取ったり、いい大学に入ったりするのは、もちろんすばらしいことです。

でもそこで、努力すれば必ず報われるとは考えないほうがいい。うまくいかない人に対して、「お前の努力が足りないからだ」と否定してしまうことにつながるからです。

ここまで見てきたように、学力は環境によっても大きく左右されるので、努力がすべてではないということを意識しておいたほうがいいと思います。

■東大生の親はほとんどが高収入という現実

日本学生支援機構が2018年に発表した「学生生活調査」によると、大学生がいる家庭の平均世帯年収は、国立で841万円、公立730万円、私立834万円となっています。

また、世帯年収1000万円以上の家庭の割合は、国立29.2%、公立20.3%、私立25.7%です。

かつては、お金持ちの子どもは私立の一貫教育校へ進み、お金がない家庭では大学進学などをあきらめ、その中でとくに優秀な若者は苦学の末に国公立大学を目指すという構図がありました。

ひろゆき『叩かれるから今まで黙っておいた「世の中の真実」』(三笠書房)

しかし、今はすっかり逆転し、平均年収が高い家庭では、国立大学に進む割合が高くなっています。

ここでさらに日本の最高学府である東京大学について見てみましょう。

東京大学が行った2017年の「学生生活実態調査」によると、東大生の家庭の平均世帯年収は918万円です。調査年が違うため単純な比較はできませんが、先の「学生生活調査」によると、2018年の大学生がいる家庭の平均世帯年収は830万円となっています。

さらに、教育社会学者の舞田敏彦氏が調べたところでは、東大生の親の場合、世帯年収950万円以上に占める割合が62.7%もあったそうです。一般的な45歳から54歳の男性の場合は12.2%ですから、いかに東大生の親がお金持ちかがわかります。

■青年期のIQは半分が遺伝で決まる

今は国立の年間学費も50万円くらいはかかりますし、そもそも受験に合格するために塾や中高一貫の私立進学校に通ったりしてお金がかかるのです。

お金に余裕がある家庭は、自分の子どもの教育にふんだんに投資できる。そして、親の気持ちにも余裕があるから、子どもの将来についていろいろアドバイスをすることができます。

一方でお金がない家庭は、日々の暮らしをどうするかで頭の中がいっぱいで、金銭的にも精神的にも「それどころじゃない」というのが現実でしょう。言い方を変えれば、今の東大生の多くは「親の金銭力なくしては東大生たりえない」ということになります。お金や環境だけではなく、「遺伝」という面から見ても「東大の子は東大」になりやすいと言えます。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/brightstars

行動遺伝学を専門とする慶應義塾大学の安藤寿康教授は、著書『日本人の9割が知らない遺伝の真実』(SBクリエイティブ)の中で、次のような指摘をしています。

・子どもの学力は遺伝に大きな影響を受ける
・青年期のIQの個人差は、遺伝54%、共有環境19%、非共有環境27%によってつくられている

しかも、単純に知能レベルが遺伝するだけでなく、性格的な遺伝要素も大きいというのです。たとえば、コツコツと努力ができる親の子どもはやはりコツコツ努力ができるし、飽きっぽい親の子どもは飽きっぽい。

そうしたことが相まって、高い学歴の両親を持つ子もまた、高学歴になりやすいのです。

■有名私立小学校の面接で試験官が見ているもの

かつて某有名私立大学の小学校に子どもを通わせていた僕の知人は、その入試で行われる面接試験についてこう語っていました。

「あくまで子どもの面接という建前だけど、実は一緒に来ている親を見ているんだよ」

短い面接時間で子どもの学習能力を見抜くのは無理だし、そのときに多少、学力の差があってもいずれ同じようにできるようになる。

だから、子どもを見ても意味がない。それよりも、子どもの教育環境を左右する親を見たほうが評価しやすいというのです。

このように、幼稚園や小学校の受験では、当たり前のように、子どもは親の要素で判断されているのです。

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ひろゆき2ちゃんねる創設者
本名は西村博之。1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。主な著書に、『無敵の思考』『働き方完全無双1』(大和書房)、『論破力』(朝日新書)などがある。
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(2ちゃんねる創設者 ひろゆき)