青森山田のキャプテンを務める藤原。来季の浦和加入内定がすでに発表されている。写真:松尾祐希

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 スコアは13−1。青森山田は再開後の公式戦初戦を最高の形で終えた。だが、キャプテンのDF藤原優大(3年)は納得のいかない表情でピッチを見つめていた。

 8月30日にスーパープリンスリーグ東北の第1節が行なわれ、青森山田はブラウブリッツ秋田U-18と対戦。MF松木玖生(2年)と安斎颯馬(3年)のハットトリックなどで13点を奪い、開幕戦をモノにした。

 試合後、藤原は「前線の選手が頑張ってくれました。クオリティは練習するたびに上がっていて、得点力に感謝しています」と躍動した攻撃陣を賞賛。様々なパターンでゴールを重ねたアタッカー陣に頭を下げた。しかし、自身のプレーぶりに関して尋ねられると、口ぶりが一変する。

「ひとつのミスで失点してしまうと、勝ったとしても心残り。キャプテンとしてまだまだです」

 失点はPKによるひとつだけ。決して責められるような出来ではなく、むしろ試合を通じてのパフォーマンスは高かった。空中戦の強さ、左右の足から繰り出すフィード、1対1の対応。「歴代のCBと比べても藤原は良い。右足と左足の精度、キック力もスピードもあって、ヘディングも強いし、足もとでボールもコントロールできる。できないことがない。ウィークポイントを克服してきたから、本当に凄いレベルの選手になってきたと感じるし、すぐにプロでやれる」と黒田剛監督が話すように、どれを取ってもハイレベルだったのは間違いない。

 何故、藤原は納得せず、試合後はグラウンドに残って失点シーンを振り返っていたのか。答えはPKを与えたプレーにある。

 問題の場面は試合終了間際の84分。敵陣でのCKからカウンターを仕掛けられると、MF安藤功記(1年)に独走を許す。チームメイトの対応が遅れ、懸命に戻った藤原はカバーに入った。GK韮崎廉(3年)とともにシュートコースを切っていただけに、ファウルで止めなくても失点は防げた可能性がある。しかし、藤原は相手を倒してPKを与えてしまう。このプレーが許せなかったのだ。
「仲間のミスを自分が対応したけど、カバーをしてボールを取り切るまでがカバーリング。そこで次のプレーに繋げるのがキャプテンだと思う。やっぱり、PKを与えてしまったので、キャプテンとしてはまだまだ甘い」

 たったひとつのファウル。自分を責めたのには理由がある。去年のプレミアリーグEAST15節・尚志戦で同様の経験があったからだ。
 
 2−1でリードをしていた83分。仲間のミスからピンチを招くと、カバーが間に合わずにペナルティエリア内で相手を倒してしまう。このPKで追い付かれ、チームは後半アディショナルタイムの失点で逆転負けを喫した。

 当時の記憶は今でも藤原の脳裏にある。だが、再び同じミスを犯してしまった。

「去年の尚志戦でもカバーに入ったけど、相手を倒してしまった。やっぱり、ゴール前で焦って飛び込んでしまう。それは自分でも理解をしていた。だけど、頭の中で少し焦りがあったんです。まだまだ成長しないとダメだなと痛感した。今まで以上に自分が謙虚に取り組まないといけない」

 秋田戦のミスは、今後に生かさなければ意味がない。黒田監督は言う。

「失点まではパーフェクトだった。プロへ進む彼の今後のサッカー人生を考えれば、良い教訓になったと思う」

 高校卒業後は浦和でプレーする藤原。本人も次のステージを見据え、今回の教訓を無駄にするつもりはない。

「プロの世界で通用するような技術やスキルを身に付けないといけない。高校年代でできていたことがプロでは通用しなくなる。同世代の中で圧倒しないと、プロの世界で活躍できないので、高校年代でミスなくやり切ることが自分の成長につながっていく」

 勝利に満足せず、失点と向き合う姿勢。このスタンスが藤原をさらに成長させる原動力になる。

「2度同じミスを繰り返しているので学習しないといけないし、もう一度気を引き締めないといけない。気持ちは切り替えるけど、反省点として受け止める。(リーグ戦で)これ以上の失点は許されないし、今回は自分のミス。今度は他人のミスを救えるようにしたい。結果は消えないけど、チームのために戦えるようにやっていきます」

 同じ失敗を繰り返すつもりはない。自分を戒めた高校No1CBは“今日のミス”を成長の糧にする。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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