突然の安倍首相の辞任で、株式市場や為替市場が乱高下。すぐに落ち着いたものの金融マーケットに衝撃が走った。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に9月の為替相場の行方をうかがった。

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 突然の安倍首相の辞任で、株式市場や為替市場が乱高下。すぐに落ち着いたものの金融マーケットに衝撃が走った。米国の大統領選挙が大詰めになってきたところで、今後の世界情勢が気になる9月相場だが、日本の政局の変動も加わって、大きなイベントが盛りだくさんの相場になりつつある。果たして9月はどんな相場はどうなるのか・・・。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に9月の為替相場の行方をうかがった。

 ――突然の安倍首相辞任でしたが、為替市場には影響があったのでしょうか?

 8月28日に「首相辞任報道」が出た直後、株式市場は日経平均株価で600円を超える下落場面がみられました。為替市場も、ドル円で一気に50銭以上のドル安円高に振れました。安倍首相退陣からアベノミクス終焉という連想が生まれ、株安、円高に振れて、瞬間的、一時的に金融市場が乱高下したようです。

 ただ、安倍政権に代わる新しい政権の政策に大きな変化は無いだろうという安心感が広がったこと。さらに、安倍首相と7年8カ月もの間、共に政権を運営してきた菅官房長官が首相への立候補を明言したために、安心感が広がって株式市場も、為替市場も、落ち着きを取り戻しつつあると言って良いでしょう。
 
 そういう意味では、9月は自民党総裁選など政局が絡む相場になるかもしれませんが、コロナ禍のいま、ポスト安倍で争っている場合ではなく、急激な変化はないと考えていいでしょう

 ――米国の大統領選挙はいよいよ大詰めですが、為替市場への影響は?

  日本に比べて、大きく揺らいでいるのがアメリカの大統領選挙です。共和党、民主党ともに大統領候補者が決定し、いよいよ9月からはテレビ討論会も始まり政策の違いが明らかになってくると思われます。

 第1回目のテレビ討論会は9月29日に決まっていますが、それまでのプロセスも含めて9月相場の大きな注目点になるかもしれません。お互いの政策の違いを明確にしてくるでしょうし、討論会以前にトランプ大統領の手段を選ばない掟破りの政策が出て来るかもしれません。大統領選の行方を見ることが、為替市場の動きを知るカギになると言って良いでしょう。

 これから大統領選が決着する11月中旬ぐらいまで、為替相場は神経質な動きをすると考えた方がいいでしょう。コロナ禍での米大統領選という未体験の選挙戦でどんな結果に導かれるのか・・・。目が離せません。

 ――FRBが新しい指針を出して話題になっていますが・・・

 米国の中央銀行に当たる「FRB(連邦準備制度理事会)」は8月27日、臨時のFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催。金融政策の新たな指針として、物価上昇率が2%を超えても直ちに金利を上げるのではなく、一定期間容認することを決めました。「当面の間は2%を上回るインフレ率を目指す」と声明文にも明記しています。

 物価上昇率が2%を超えれば「即利上げ」ではなく、「平均」で2%を超える水準にならないとゼロ金利政策がすぐに解除されるわけではないという「アベレージ・インフレ」の考えを導入。この声明は、長期にわたるドル安を容認したこととなり、9月相場もトレンドとしてはドル安になるものと考えられます。

 今後、注目したいのは9月15日−16日に実施されるFOMCで、新たな「フォワードガイダンス」が発表されるのでないか、ということです。ゼロ金利政策の長期化や実質金利の低下傾向をより鮮明な形に示すのではないかという指摘です。ただ、ダラス連銀のカプラン総裁やクリーブランド連銀のメスター総裁など、一部地区連銀総裁から異論が出ており、実際のFOMCがどんな結論を出すのかはまだ不透明です。