「選択肢を増やすのはいいことだと思ってない?」GACKTが教えてくれた“幸せのつかみ方”
まさか、GACKTさんに取材する日が来てしまうとは。きっと前世でとんでもない徳を積んでいたに違いない。前世、ありがとう。
今年8月に発売され、2カ月足らずで10万部を突破した書籍『GACKTの勝ち方』。GACKTさんの「成長哲学」と「お金の作り方」が書かれた非常に贅沢な一冊なのですが、最後にこんな意味深な言葉が…。
「【成功】している者は多いが、【成幸】しているものは少ない。この差は大きい」
1973年生まれ、沖縄県出身の男性シンガーソングライター、俳優。マレーシア・クアラルンプール在住。「ベスト・アジア・ロックアーティスト賞」を日本人としてはじめて受賞しつつ、富裕層向け不動産業、飲食業など、実業家としても幅広く活動している
これだけ成功を収めているGACKTさんが、「幸せは、成功とはべつのところにある」とおっしゃっているのです。じゃあ、GACKTさんにとって“幸せ”って、いったい何なの…? 気になりすぎる。
ということで今回は、GACKTさんのプライベートスタジオ(プライベートスタジオって何?)にお邪魔し、「お金と成功」について、直接お話を伺ってきました…!
〈聞き手=サノトモキ〉
ここはいったいどこなんだ…天国でしょうか…?
GACKTさんいわく“道は「成功」と「失敗」のふたつに分かれていない”
サノ:
ガ…GACKTさん、今日はよろしくお願いいたします!(直立不動)
GACKTさん:
よろしくね。そんなところに立ってないで、まあ座りなよ。
あ、握手を…。想定外としか言いようのないフランクさと握力
サノ:
今日は、“お金と成功”についてお話を伺いたくて。
GACKTさんは不動産投資や飲食業など、複数のビジネスで成功していると著書で読みました。「生活を維持するのに年間2億円必要」だとか…
なんでそんなに何でも成功できちゃうんですか?
GACKTさん:
うーん…その質問はさ、“何かに挑戦すると、「成功」と「失敗」というふたつの道がある”と思ってる人の言葉。
えっ。それ以外なんかありましたっけ…?
GACKTさん:
ボクは、そもそも「成功」と「失敗」に道が分かれてると思ってない。
「失敗」「失敗」「失敗」「失敗」…「成功」。
モノゴトは「成功」と「失敗」に分岐なんかしていない。成功するまで一本道が続いているだけ。そういう考え方なんだ。
サノ:
ということは、GACKTさんもビジネスで失敗されたことがあるんですか?
GACKTさん:
そりゃあ、言えないくらいたくさんある(笑)。
そのたびに、成功してる人たちに何度も頭を下げて話を聞かせてもらった。
サノ:
ガ、GACKTさんが人に頭を下げて教えを請うようなことを!?
GACKTさん:
いっぱいやった。ビジネスがうまくいってる人をなんとか紹介してもらって、「どうすればうまくいくのか」っていう話を延々と…
チャンスをつかむのは、“すごいヤツ”じゃなく“かわいいヤツ”
GACKTさん:
若いころって、「あの人は忙しいだろうから、自分から連絡するのは控えよう」って思いがちじゃない。
これって大きな間違いなんだ。
サノ:
ええー…? でも実際迷惑になったら申し訳ないし…
GACKTさん:
不思議なもので、「来週空いてますか、来月空いてますか」って連絡がくるうちに、「こいつ、しつこいな」が「こいつ、かわいいな」に変わるタイミングってある。
ボクのまわりにも若い子いっぱいいるけど、断られても何度もめげずに情熱を伝えてくる子って、「わかったわかった、じゃあこの日なら」ってなるもんなんだ。
サノ:
「こういう話がしたいので会ってください」っていう、話の中身に興味を惹かれて会ってみるとかではないんですか?
GACKTさん:
違う違う、そんな難しい理由じゃない(笑)。
こいつ面白いなとか、何か任せられるんじゃないかって感じるのは、実際に会ってから。そもそも忙しい人は、若い子に期待なんてしてない。
サノ:
(グサッ)…
「すでに成果を出してたり、会うメリットがあったりしないと相手にしてもらえない」と思っちゃってました。
GACKTさん:
違う。「かわいいヤツ」だからこそ打席が増えていって、「すごいヤツ」になっていく。
チャンスをつかんでいくのは、「すごいヤツ」じゃなくて「かわいいヤツ」なんだ。
まさかGACKTさんが「かわいさ」の重要性を語るとは…
GACKTさん:
「気前よく力になってくれる先輩がいない」と嘆くのは、ナンセンス。自分の行動が、「気前よく力になってくれる先輩」を作る。
「かわいさ」を手に入れるために、どれだけの努力をしたのか? これが、何か事を成すときの基本なんじゃないか?
無駄に選択肢を増やすことは、時間を浪費することにつながる
サノ:
教えを請うお話、正直意外でした。なんでも自力で突破してきた方なのかと。
GACKTさん:
いや、人生には消費期限があるから。
自分で考えるだけじゃなく、結果を出してる人から学びを得たほうが圧倒的にスピードが上がる。
自分の消費期限に本気で危機感を抱いているヤツは、意固地に一人でやりつづけるなんて選択、絶対にできない。
GACKTさん:
でも、「時間」への危機感って、人によってまったく違うわけさ。
「ボクには時間がないんだ!」って言っても、伝わらない人には全然伝わらないし、ボクから見ると、みんなすごくもったいない時間の使い方をしてる。多くの人が、寄り道に時間を使いすぎてて…
ちょっと図に描いてみようか?
サノ:
えっ!?
GACKTさん:
たとえば、「いい中学」に入ったら、その分「いい高校」の選択肢が増える。また同じように、「いい高校」に入ったら「いい大学」の、「いい大学」に入ったら「いい企業」の選択肢が増える。
“そのためにいい学校に入りなさい”というのが、日本では主流の考え方。
つまり、みんな「選択肢がたくさんあること」がいいことだと思ってる。
なんとGACKTさん直筆の図がこちら。下の「自」が自分のこと。そこから中学、高校、大学、会社というふうに、多くの選択肢でつながっています
サノ:
そりゃあ…はい。
え、違うんですか?
GACKTさん:
これって一見正しそうに思えるけど…実際は決断を先延ばしにしてる間に、悩む選択肢が増えていってるだけ。
ああ、わかった…これはグサッとくるやつだ…
サノ:
たしかに、「選択肢を増やしてみたものの、結局『これだ』と思うものは決められず片っ端から試してみる」って、人生の節目でけっこうやってるかも…就活とか。
GACKTさん:
みんな、「今頑張ったら何かにつながるかも」って、常に「次」に期待しちゃってるんだよ。
その結果、自分の「幸せ」とは無関係な寄り道をしながら、無数の選択肢を前に悩む時間ばかりどんどん膨らんでいく。
サノ:
選択肢の多さが、裏目に出てたとは…
じゃあ、GACKTさんはいったいどんな考え方で進路を決めているんですか?
GACKTさん:
ボクは、ゴールから描く。
そこから、現在地に向かって「逆算の直線」を引く。
「結果→Z→Y→X→→→A→自分」というふうに、一直線でつながっています
GACKTさん:
ゴールにたどり着くためには、「Z」という結果が必要で、「Z」を得るためには「Y」が、「Y」のために「X」が…とさかのぼっていくと、今やらなきゃいけない目の前の「A」がわかる。
あとは、ただそれをやるってだけの話。
ゴールを決めてる人は直線をたどるだけだから、選択で悩まない。選択肢を増やしつづけてる人とは、人生で使える時間がまったく変わってくる。
サノ:
なるほど…
でも、「ゴールを決めること」自体がすごく難しいと思うんです。今の自分が描くゴールに確信を持てないから、とりあえず選択肢を増やそうと…
GACKTさん:
行動をつづけるうちにゴールが変わるのは、べつにかまわない。「今の自分なりにゴールを決めて描く」ということが、とにかく大切。
ただなんとなく目の前のことをやってるのと、「時間の価値」がまったく変わるんだ。
GACKTさん:
「人生は文学だ」って言う人もいるけど、人生とは非常にシンプルな「数学」だよ。
「時間」を大切にしたい人は、今の自分なりの結論を決めて、今から描いていく数式を導き出したほうがいい。
サノ:
たしかに、覚悟を決めない限り、際限なく悩めちゃうのが人間だもんな…
自分にとっての幸せは「面積」で考えるべき
サノ:
もうひとつ聞きたかったのが、「成功=幸せではない」と書かれていたことについてなんです。
「生活を維持するのに年間2億円必要」というGACKTさんにと言われても、しょ、正直ピンとこないといいますか…
幸せとは何なんでしょうか…?
GACKTさん:
みんな、「何かで成功すれば幸せになれる」って期待してるけど、それは違う。
ボクも、成功者と言われてる人にはたくさん会ってきたけど…彼らがみんな「幸せ」かというと全然そんなことはない。
GACKTさん:
そもそも、「幸せとは何か?」っていう問いに、ひとつの答えはない。
「幸せ」って、“面積”で考えるべきモノなんだ。
サノ:
面積、ですか?
GACKTさん:
たとえばボクの「幸せ」は、「お金」「仲間」「時間」、この3つの要素で構成される“三角形”の面積で決まる。
GACKTさん:
1.やりたいことをやるための「お金」があること。
2.「お金」を得るために一緒に戦ってくれる「仲間」がいること。
3.「仲間」と共有できる「時間」があること。
この3つがキレイな正三角形を描いていることが、ボクにとって「幸せ」という状態。
あとは、その面積をいかに大きくしていけるか…ってだけの話。
サノ:
GACKTさんの幸せの捉え方、めちゃくちゃわかりやすい…
GACKTさん:
みんな、自分の「幸せの形」がわかってないんだよ。だから、他人が幸せそうにしてる姿を見て不安になる。
自分の「幸せ」がどんな図形をしているか、その図形はどんな要素で構成されているのか、それを自覚しなくちゃ。
サノ:
たしかに…。ちなみに、「正」三角形であることには何か意味があるんですか?
GACKTさん:
ボクは、幸せの図形を「正多角形」のままバランスよく拡大していくことこそが「成幸の法則」だと思ってる。
GACKTさん:
たとえば学生時代って、「仲間」と「時間」はあるよね。でも極端に「お金」がないから、すごく歪で小さな三角形になる。
そこで必死に「お金」を得ようとするんだけど、ふと気づくと「お金」を稼ぐこと以外見えなくなって、「仲間」と「時間」を犠牲にしてるヤツって、けっこういる。
何か一つを追いかけて、ほかを疎かにしてしまう。違うんだ。全部バランスよく手に入れる方法を考えなくちゃいけない。
サノ:
それ、めちゃくちゃ刺さります…
幸せを追いかけてるはずなのにどんどん不幸せになっていくのって、きっとこういうカラクリだ…
GACKTさん:
幸せの図形は5角形になったり6角形になったり…人それぞれいろんな形があると思うし、自分で自由に決めたらいい。
ただ、できるだけ「正多角形」に保ちながら、バランスよく「面積」を広げていくこと。これはみんな意識しておいたほうがいい。
GACKTさん:
世の中では“成功の法則”とかってよく叫ばれるけど、功を成すこと以上に、幸せを成すことを考えるべきなんじゃないの…っていうのが、ボクがいつも思ってること。
「幸せにお金は関係ない」と言うヤツが、人生に“本気”になってるとは思えない
サノ:
僕も自分の図形を描いたら、絶対「お金」が入ってくると思うんですけど…
日本って、すごくお金の話がしにくい気がするんです。
GACKTさん:
うん、それは事実。
GACKTさん:
お金の話をする人を「欲にまみれた人」とか、「弱者から巻き上げようとする悪者」みたいに言いたがる人ってけっこういるけど…そうじゃない。
日本に住む以上、「お金」は必ず幸せの図形に入ってくる要素だよ。
資本主義の現代においてその事実を無視しようとするのは、非常に子どもじみてる。
サノ:
でも、それこそミュージシャンも、「お金のことより、いい音楽を作りたい」というアーティストのほうがカッコいい感じがしませんか?
GACKTさん:
いや、お金がなければライブもレコーディングもできない。
音楽をファンに届けつづけたいと思ったら、お金は無視できない。
GACKTさん:
昔は、難しいことはレコード会社に任せて、こっちは音楽作りに没頭してれば大丈夫だった。
ところが今は「レコード会社に所属してれば安泰」なんてことはまったくなくて、自分の頭で考えなくちゃ生き残れない。
だからボクは、音楽を届けつづけるためにビジネスにも手を広げていったっていう、それだけのこと。
サノ:
自分で「お金」のこと考えなくちゃいけなくなったの、僕らビジネスパーソンも同じかもしれません。
昔は終身雇用でそれなりに身分が保証される時代だったけど、今は自分で考えないとヤバそうだし…
GACKTさん:
お金があれば幸せになれるとは言わない。
でも、「幸せにお金は関係ない」と言うヤツが、人生に“本気”になってるとも思えない。
自分や自分の大切な人たちを幸せにする覚悟を決めてる人は、「お金」を侮ることなんてできない。
サノ:
GACKTさん、今日は貴重なお話をしていただき本当にありがとうございました…!
なんだかすごく、スイッチを入れていただいた気がしました!
GACKTさん:
いやいやいや、ボクが何を言おうと自分にスイッチを入れられるのは自分自身だけ。
誰も背中を押しにきちゃくれない。今この記事を読んでる人だって、きっと何か感じるものがあって、自分の意志で読んでいるはず。
人生は、そういう「今この一瞬発想力・想像力・創造力」の積み重ね。記事を通じてボクと出会った今この一瞬をどうモノにするかも、自分次第っていうことなんだ。
再び力強い握手にて取材は終了。ありがとうございました!
「幸せってなんだろう」とはよく言うけれど、「幸せの形」を法則にして言語化しちゃうのはさすがの一言…。
まずは僕も、自分なりの幸せの正多角形を形にしてみようと思います。そして、逆算して目の前のやるべきこと決めてみせます。
GACKTさん、めちゃフランクかつ対等に接してくれて最高のお方でした。
が、とてもこの世のものとは思えない空間でアツすぎるお話を目の前で展開していただいて、緊張ゆえの疲労感がハンパなかったです…!
〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=池田博美〉
GACKTさんが自身の「成長哲学」と「お金の作り方」を徹底的に記した貴重な1冊。自身の幸せを手に入れるための「成長のヒント」が、きっと見つかるはず。
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