Spotify(スポティファイ)がバイアコム(Viacom)のアドバンスト・マーケティング・ソリューションズ(Advanced Marketing Solutions)部門と契約を結んだ。バイアコムは2020年、Spotifyのために、カスタムコンテンツや番組、インフルエンサーコンテンツを制作する。

この契約の対象となるのは北米、ヨーロッパ、中東、南米、アジア太平洋地域、インドの15市場。バイアコムもSpotifyも詳細な金額を明かしていないが、世界規模だと強調している。

バイアコムはメディア購入を行っておらず、Spotifyは指定代理店UMと社内エージェンシーの助けを借りて、広告を掲載することになる。Spotifyの顧客製品マーケティングを統括するジューン・ソーバゲット氏はリニア、デジタル、ソーシャルプラットフォームでのバイアコムのリーチを生かし、カスタムコンテンツによって「付加価値と優良インベントリー(在庫)」を手に入れたいと述べている。

狙いは世界規模のリーチ

このような形の提携はまだ珍しいが、今後は標準的なものになっていくと、ソーバゲット氏は予想する。「率直な議論ができれば、優良インベントリー、インパクトの強いインベントリーを低コストで確保できる。ブランドにとっては、間違いなく有益だ」。

ソーバゲット氏によれば、Spotifyがバイアコムとの提携を選択した主な理由は世界規模のリーチ。また、マイクロオーディエンスにリーチするには、バイアコムが持つ多彩なチャンネル、リソースも魅力的だという。ソーバゲット氏はその例として、オウサムネスTV(AwesomenessTV)にはZ世代、BETには都市生活者のオーディエンスがいると説明している。バイアコムは米国で、18〜34歳の80%にリーチしている。

Spotifyはブランドイメージを高めるため、有料メディアのみに注力するようなプラットフォームではないと、ソーバゲット氏は述べている。Spotifyはユーザーになる可能性のあるオーディエンスにリーチし、語りかけたいと考えており、音楽をはじめとするSpotifyのコンテンツは文化に深く根差しているため、文化的な関連があるパートナーを必要としている。

「我々のユーザーはコンテンツを選ぶ際、文化の地域的なニュアンスの影響を受ける」と、ソーバゲット氏は語る。「我々が必要としているのは、我々のマーケティングのニュアンスがわかり、局在的で柔軟性もあるパートナーだ」。

「すべてを行う必要がある」

バイアコムの広告部門であるアドバンスト・マーケティング・ソリューションズは2018年、3億4300万ドル(約373億円)の収益を計上。現在、デジタル事業の強化を進めている。バイアコムはインフルエンサーマーケティング会社フーセイ(WhoSay)、Z世代をターゲットにしたデジタルスタジオ、オウサムネスTV、ストリーミングサービスのプルートTV(Pluto TV)を所有する。

「我々の課題、獲得したいオーディエンスに適したさまざまなソリューションがあり、我々のために努力してもらうことができる」と、ソーバゲット氏は話す。

バイアコムの広告戦略担当エグゼクティブバイスプレジデント、スティーブ・エリス氏は「広告主はバイアコムからテレビ広告枠やインフルエンサーキャンペーン、イベントのスペース、デジタル広告枠を購入できる」と語る。「効果的なマーケターになりたければ、いまやこれらすべてを行う必要がある。テレビやFacebookの広告枠を買うだけでは不十分で、あらゆる場所に存在しなければならない」。

エリス氏によれば、Spotifyにとってのバイアコムの利点はクリエイティブ、配信、リーチで、クリエイティブがバイアコムのプロパティに限定されない点も大きな価値があるという。Spotifyはあらゆる場所に存在し、あらゆる場所で配信できる。ただし、バイアコムのチャンネルの「優良」枠を確保できることも、間違いなくSpotifyの利益になる。

「一定のコミットメントとアウトプットが約束されている」と、エリス氏は話す。「CPMの料金体系で効率的に配信できる。契約の金銭的な詳細はこのように明確化されている」。

試験的なキャンペーンを実施

エリス氏は今回の契約について、クライアントとエージェンシーのシステムの変化を象徴していると考えている。「我々は全体的な視野を持ち、長期的なニーズに対応できるようビジネスを構築している」。バイアコムはCBSとの合併を予定しているが、この合併によって「さらに価値が増す」と、エリス氏は述べている。

Spotifyは、バイアコムとの提携関係をやみくもに結んだわけではない。提携の効果を見極めるため、数回にわたって試験的なキャンペーンを実施した。

2018年のホリデーシーズンには、バイアコムとSpotifyが手を組み、Spotifyでルポールによる「ラップド(Wrapped)」キャンペーンを行った。Spotifyは1年を締めくくるこのキャンペーンでさまざまなパートナーと組んできたが、2018年のトラフィックは過去最高だった。

2019年6月にも、Spotifyはバイアコムの協力を得て、ソフィー・ターナーによるブランドキャンペーン「プレイリスト・フォー・エブリ・ムード・オア・モーメント(A Playlist for Every Mood or Moment)」を実施。インスタグラム(Instagram)のストーリーを公開したあと、わずか1日でSpotifyの訪問者数が7倍に増加した。

2019年春にも、バイアコムがHulu付きのSpotify・プレミアム(Spotify Premium)をPRするため、Huluの「PEN15」シリーズのスターたちを起用。インスタグラムの投稿を経由した動画再生回数が、Spotifyによるソーシャル投稿の平均再生回数の2倍に達した。

Spotifyは再びバイアコムと手を組み、2019年の「ラップド」キャンペーンの準備を進めている。今回のキャンペーンは範囲を拡大し、米国外でも展開される。

契約を延長する可能性も

ソーバゲット氏によれば、カスタムコンテンツの制作で提携を検討しているパブリッシャーはバイアコムだけではないという。また、バイアコムとの提携がこのままうまくいけば、1年後に契約を延長する可能性もあるそうだ。

ソーバゲット氏は「2番目に重要な目標はユーザーの獲得だ」と前置きし、次のように述べた。「すべてのユーザーを同じように獲得できるわけではない。パートナーを選ぶのであれば、価値の高い顧客をもたらしてくれる相手がいい。バイアコムと手を組めば、我々にとって価値の高い消費者基盤にリーチできるというのが我々の結論だ」。

Deanna Ting(原文 / 訳:ガリレオ)