女は、直感にしたがい、時として大胆にお金をつかう。

その瞬間、彼女たちが心に描くのは、とびきりの夢や幸せな未来。

この連載で紹介するのは、“ある物”にお金をつかったことで人生が変わった女たちの物語。

欲しい物にお金をつぎ込み、夢を見事に叶えた女や、それがキッカケで人生が好転した女もいれば、転落した女もいる。

これまで受験に失敗した女の闇や、占いにはまる女を紹介した。

さて、今回登場するのは?




Vol.8 インスタの闇から抜け出すために300万かけた女


名前:佐藤杏さん(仮名)
職業:アパレル会社経営
年齢:26歳

「インスタ女子の闇は、本当に壮絶ですよ。承認欲求の戦いですから」

今回取材した杏さんは、闇という言葉とは裏腹に、まるでこれから笑い話でもするかのように明るく話し始めた。

もともとティーン向けの読者モデルをしていた杏さん(26歳)はさすが元読モだけあって、マキシ丈のワンピースが良く似合う高身長にハーフ顔。インスタで見る顔と実際の顔に、差がない綺麗な女性だ。

「私は、読モ時代から現在に至るまで、インスタを含めSNSを巡る壮絶なバトルの中で生きてきたんですよ」

彼女は着々と起業資金300万円でアパレルブランド立ち上げ、今のところ売り上げも順調だとのこと。その結果、SNSヒエラルキーバトルから抜け出すことができた。

彼女にしか語れない、読モやSNSの世界のリアルを詳しく聞いてみた。


読モになるために、原宿を闊歩し続けた10代


マウンティングは、10代の頃から


「15歳の時、原宿で雑誌のスナップ写真を撮られたことがきっかけで、ティーン向け雑誌の読モになりました。原宿ってスカウトされたい子がウロウロしてるんですけど、私もその一人でしたね。だから、憧れの読モに選ばれた時は、本当に嬉しかったです」

それまで、何か得意なことがあるわけではなかったが、読モになったことにより、友人や見知らぬ人からも「見たよ!」と注目されるようになった。そして、次第に注目されることが、快感となっていった。

「読モ同士のマウンティングに巻き込まれ始めたのは、そこからですね」

杏さんは、語気を強めて話を続ける。

「読モって初めはお小遣い程度しか稼げないんですけど、有名になるとブランドのレセプションパーティーに呼ばれたりして、お金が稼げるようになってくるんです。だから他の読モに負けないように、陰で悪口を言ったりお互いのマウンティングがすごかったです」




より人気を得て有名になるために、お互いが蹴落とし合いをする日々だったという。

例えば、ネットの掲示板に悪口を書き合ったり、過去の見られたくないような写真が勝手に流出したりするとのこと。

「ちょっと映りが悪い写真が勝手にSNS上やネットに出回って、今の顔は整形しているとか、学校でいじめられていた、いじめていたとか…。根も葉もない噂話をネット上に流し、イメージダウンさせられたりするという世界でした。私も、結構掲示板やSNSのコメント欄に色々書かれていましたよ」

今でも、カリスマ性がある雰囲気を漂わせている杏さん。読者モデル時代から、目立つ存在であったに違いない。注目度が上がれば上がるほど、足を引っ張られることも多かったのだろうと想像がつく。

しかし、杏さんはそんなことにはめげず、大学時代はミスコンなどに出て知名度を上げながら、読モを続けた。

「他には、読モカフェなんかで働く子も多かったですね。そこで働くとちょっとした芸能人のような感覚になるみたいです」

読モといっても、永遠に続けられるわけではない。読モだった子は、どのような末路をたどるのだろうか?

「読モだった子って、最近は雑誌が廃刊になるとかの事情で、インスタグラマーに移行する子が多いんです」

とはいっても、それだけで食べていける子は少なく、消えていく子も多いという。

「だいたい、読モの末路は、3つのパターンに分かれます。20代前半でハイスペ夫を捕まえて“ママスタグラマー”になる子。支援者を見つけて、その人の援助で生きていく子。そして、普通の仕事に就く子。ただ普通の仕事に就いても、ちやほやされる華やかな世界じゃないので、満足できず辞めてしまう子が多いのも現実です」

杏さんは、大学卒業後は一旦PR会社に就職したとのこと。読モ時代の経験でPRに興味があったからだという。一方で彼女も、注目される華やかな世界が忘れられず、インスタグラマーとしての活動は続けていた。

そしてここでもまた、インスタ界の壮絶なマウンティングの世界に巻き込まれることになる。


インスタグラマー同士の、壮絶なマウンティングとは?


「寄生って言うんですけど、フォロワーを増やすために、みんなフォロワーが多い人と繋がりたがるんです。いったんフォロワーが多い人のストーリーでタグ付けされたりすると、急にフォロワーが増えますからね」

お互いがお互いに寄生してフォロワーを増やしていく。そのため、フォロワーが1K以下の人とはつながらない、などルールを作っている人もいるらしい。

フォロワー数にも敏感で、「フォロワーを買っている」と噂を流されたり、「不正アカウントです!」と警告し合ったり、酷いコメントを残されたりもするとのこと。

「私も、当時1.5K程のフォロワーがいましたから、よく誹謗中傷のコメントを書きこまれましたね。消しても消しても、他のアカウントでコメントを残されて。しかも、親しい人しか知らないようなことを書き込まれたりしたこともあります。犯人は身近にいることに、背筋がゾクッとしました」


インスタの闇から抜け出すために


そんな中、杏さんは、SNSヒエラルキーから一歩抜け出す計画を立てる。




今までの経験を生かし、アパレルブランドを立ち上げることにしたのだ。周りにいる大半の子は男性からの支援を受けていたが、杏さんは自分の資金でやることにこだわった。

理由は出資してもらうと、また変な噂を立てられる可能性もあるからだ。ブランドイメージを守りたいために、自己資金で運営すると決めたそうだ。

「私の場合は、読モ時代と社会人になってから貯めた資金300万を投資して、ティーン向けのアパレルブランドを立ち上げました。実際ブランドが立ち上がったら、もともとつながっていた芸能人やインスタグラマーが、ハッシュタグをつけて投稿してくれたりして、一気に「かわいい」って広がってくれて。身につけてくれる人も増えました」

ブランドの人気に伴い、杏さんが顔出しをする機会は減っていったという。その商品がSNSを通じて自然と誰かに紹介されて、広がっていくシステムができあがったためだ。

「SNSって地獄に落ちることもありますけど、有効活用すれば、私みたいな素人がブランドを立ち上げて、世界中の人に認知してもらうこともできるから不思議ですね」

SNSヒエラルキーから抜け出したいと思い、立ち上げたアパレルブランドだったが、SNSを利用したからこそ成功したという皮肉な話だった。

何事にも二つの側面があるということであろう。

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