「私が10歳の日本の子供なら、一刻も早く日本を飛び出す」。著名投資家のジム・ロジャーズ氏(右)は日本にそこまで言うのはなぜか(写真:筆者の花輪陽子氏(左)撮影)

ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。2019年3月に冒険投資家として日本でも著名なジム・ロジャーズ氏のシンガポールの自宅に伺い、インタビューをさせていただきました。

生まれ故郷のアメリカから脱出して東南アジアという新天地で、子供の教育や理想的なライフスタイルなど人生で成功を手に入れたジム・ロジャーズ氏との出逢いは、私の人生を大きく変えるきっかけとなりました。日本人にとって非常に参考になるメッセージで、私自身も実践していることを、この連載内でご紹介していきます。

一刻も早く、日本を飛び出すべきだ

ジム・ロジャーズ氏はこう言います。「私が日本に住む10歳の子供であれば、一刻も早く日本を飛び出すことを考えるだろう。中国や韓国に移住したほうが、よほど豊かに生活できるのだから。将来、日本の多くの家庭で、「お母さん、わたしたちはどうして外国に住まないの?」といった会話がなされる未来が私には見える。そのとき、日本人の親たちはどのように答えるだろう。これは私の“意見”ではない。意見に対しては異論が成り立つが、この問題は簡単な算数ができれば誰でも明らかにできるものなのだから。したがって、これから起きる破綻は、日本人が自分で決めたことにほかならない。しかし、本当にそうした未来を望んでいるのだろうか?」

実は、今回出した書籍の帯にあるメッセージなのですが、私はこの言葉が一番心に刺さりました。というのも、私自身、5歳の娘がいるからです。インタビュー中にも、彼は「あなたの5歳の娘の将来は?」と何度も投げかけて来ました。

また、私も母でもあり、ファイナンシャル・プランナーであって、日本の財政赤字がどれくらい深刻で、将来子供達にどのようなツケが回ってくるのかは数字で計算をしたら想像がつきます。そういう意味でも、子供のためにできる限りシンガポールに踏みとどまって教育を受けさせ、外国語をネイティブレベルに身につけさせ、将来好きな国に羽ばたかせてやりたいという思いが日増しに強まっています。

もちろん、日本から離れることができない理由がある人も多いでしょう。その場合も、一定の年齢になれば子供だけを留学させる方法もありますし、語学を身につけさせるという投資も可能です。

「私が今、投資家として日本人に最高のアドバイスをするとしたら、『子どもや孫には中国語を習わせなさい』ということだ。子孫の未来に希望を託すなら、必ず中国語、それもいわゆる標準中国語を学ばせるべきだ。
私自身、娘に中国語を学ばせるために2007年に家族でシンガポールに移住した。私が娘にできた最高の投資は、中国語を話せるようにしたことだと今でもそう思っている。やがてアジアの時代が来ることを考えると、中国語の語学力とアジアの経験は最上のスキルとなる。万が一私の予測が外れ、アジアの時代が来なくとも、中国語は世界中で約15億人が使っている言語だ。学んでおいて損はない」。

「何かで成功したかったら、滅びゆくものにしがみついてはいけない。これが真理だ。世界の言葉は、これから数百年もすれば30くらいになっているだろう。もしあなたが滅びゆく言葉、たとえば日本語しか話せなかったとしたら、ビジネスチャンスを得られないだけでなく、まともな職にさえ就けなくなる」。

厳しいメッセージは「愛の鞭」

ジム・ロジャーズ氏や私が住んでいるシンガポールでは、保育園でも標準中国語と英語のバイリンガルの教育を受けることができます。中国から来た友達も多くいますが、シンガポールの有名私立学校で中国語の講師や家庭教師をして引っ張りダコの人もたくさんいます。ローカルの友達でも両親の母国語が中国語ではないので幼少期から家庭教師をつける家庭も多くいます。それくらい、国家も各家庭も生存戦略として中国語習得に躍起になっています。

我が子が通っているインター校も3歳から毎日中国語の授業があり、歌や身の回りのもので中国語を学ぶので私よりも子供の方が中国語の習得は早いです。日本にいる友達の中にも中国から来た家庭以外にも中国語と英語が学べるという理由で中華学校を希望している家庭もいます。「Duolingo」などのアプリで中国語などを学ぶこともでき、スカイプの外国語会話レッスンもあるために現在は富裕層以外でも外国語の学習は容易にできるようになりました。


また、シンガポールの多くのインター校ではサマースクールを5日単位で実施していて5日間で5万円程度から受講ができます。我が家も初めてサマースクールを利用しましたが、大陸から短期留学に来る中国人が多く驚かされました。日本人は相対的に非常に少ないと感じます。

イギリスなどの欧米諸国も、中国の留学生で溢れているという声を聞きます。この巨大な市場とマネーを呼び込むためにも国家としての日本も、各家庭ももっと中国語教育に投資してもよいはずでしょう。

ジム・ロジャーズ氏のメッセージは時に非常に厳しいですが、それは愛の鞭です。日本が大好きで、今すぐに行動を移して変わって欲しいと心から願っているからこそ、あえて厳しい警告をしているのです。実際に日本の観光や食事などに対して絶賛しており、もし日本が中国語を話す国であれば日本に移住していただろうとも語っていました。

総務省が発表している人口動態調査によると、国内の人口は10年連続で減り続けています。つまりそれは日本語を話す人が減っているという意味でもあります。日本語だけにしがみついていてもなんとかなる時代は終わったのです。高齢化が進み、人口が減り続ける日本にしがみ続けるのか、平均年齢が若く、成長が予測されるアジアに出て行くのか、その采配によって子供達の未来は大きく変わりそうです。