それだけではない。これまではネイマールの存在があまりにも大きく、チームの攻撃は彼を経由することを強いられていた。つまり、コンダクターだった。しかし、気分によってペースを上げ下げする気まぐれなコンダクターがいなくなってチームに活力が生まれ、最後までペースを落とすことなく選手全員がベストを尽くす機運が高まった。近年、ついぞ見られなかった溌溂としたセレソンが出現したのだ。

 ネイマールを欠くこのセレソンが南米選手権で優勝できる、と断言はできない。しかし、ブラジルのフットボールにとって最悪の事態は、エースにネガティブな話題が集まることで他の選手が集中力を乱され、チーム全体がおかしくなって優勝を逃すことだった。しかし、その心配はなくなった。

 もしこのチームで、若いアタッカーたちが「角を矯めて牛を殺す」ことなく貪欲にゴールを目指してプレーし、しかるべき結果を残せれば、今後のセレソンにとってとてつもなく大きな財産となる。

 そして、すでに漏れ聞こえてくる「セレソンにネイマールは不要」という声が、勢いを増すのではないか。

文●アウミール・レイチ(オ・エスタード・デ・サンパウロ紙記者)
翻訳●沢田啓明