「スマートDC」開発の狙いと今後の推進策について東京海上日動火災保険の確定拠出年金部長の安藤慎氏(写真:左)と同部コンサルティンググループ担当課長の中山祐一氏(写真:右)に聞いた。

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 東京海上日動火災保険は4月から、中小企業向けの企業型確定拠出年金「スマートDC」の取扱いを開始した。導入手続き等を簡略化し、いくつかの選択肢から希望条件を選ぶだけで簡単に制度が導入できる。「スマートDC」開発の狙いと今後の推進策について同社の確定拠出年金部長の安藤慎氏(写真:左)と同部コンサルティンググループ担当課長の中山祐一氏(写真:右)に聞いた。
 
 ――厚生労働省の調査によると、企業年金を採用している企業の割合は1997年に46.7%だったものが2018年には21.5%まで低下しています。中小企業向けの企業年金の普及が課題となっていますが、中小企業の企業年金が手薄になってきた要因をどのように考えますか?
 
安藤 中小企業では、以前は適格退職年金制度(2012年廃止)、そして、厚生年金基金(2019年廃止)などがありました。適格退職年金の廃止にあたっては2万を超える会社が後継制度に移行せずに単純に解約してしまいました。さらに、厚生年金基金廃止では適格退職年金廃止の時に比べて確定給付企業年金制度(DB)や確定拠出年金制度(DC)などへの移行が進まなかったということがあります。
 
 企業年金を導入するということは企業に事務的な負荷がかかりますが、中小企業では専任の担当者の配置は困難です。そのため、厚生年金基金が廃止された後の代替制度ができなかった企業が増えてしまったと考えます。
 
 私どもの従来の企業型確定拠出年金(総合型)は、中小企業を主たる対象としてサービスを提供し、約3,000社に加入いただいていますが、それでも従業員数50名以上というお引き受けにおける人数制限がありました。今回提供を開始する「スマートDC」はそれを20名以上に引き下げたものです。
 
中山 厚生年金基金に加入していたのは当初は約10万社、加入者数で約400万人。解散で後継制度がなくなってしまったのは6万社、加入者数としては300万人弱はいるはず、とかねてから推測していました。企業年金がなくなってしまった企業や、退職金を増額したいという中小企業が、簡単に加入することができる企業年金を提供しようと考え、「スマートDC」を開発しました。
 
 ――「スマートDC」の具体的なサービス内容は?
 
安藤 加入者20名からご加入が可能です。また、加入者の範囲や掛金をいくつかの選択肢から選んでいただくだけで、簡単に加入要件を決定できるシンプルで分かりやすい制度にしました。
 
 加入者の範囲は厚生年金保険の被保険者全員(パートタイマー等を含む)とし、選択していただく条件は「60歳未満/65歳未満」、「役員を含む/含まない」の2つの条件のみです。そして、掛金(月額)は全員一律とし、「5,000円/10,000円/15,000円」の中から選択していただきます。
 
 事務費(制度運営費用)は、導入時に50,000円(税抜)と加入者1人当たり月額436円(税抜)です。この掛金と事務費は全額損金として処理できます。
 
 運用商品は、投資信託商品10本で各社共通です。元本確保型はなく、「DCダイワ・マネー・ポートフォリオ」という現金・預金に近い商品性の投資信託を用意した他、インデックス型の国内外株式・債券、グローバルREIT、バランスという組み合わせです。
 
 このようなシンプルなプランとしたことで、加入者20名以上の企業であれば、簡単に企業年金が導入できるようにしました。
 
 「スマートDC」は、新規に企業年金の導入を考える企業を対象としています。中小企業退職金共済(中退共)や退職一時金制度はあるが、福利厚生向上として、その上乗せとしての企業年金を導入される場合、あるいは、退職給付制度がなく、まったく新規で企業年金を導入されるというニーズにピッタリです。