2区を走ると予想される、予選会で日本人トップでゴールした順大・塩尻和也選手(4年)

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 毎年、熱いドラマが展開される箱根駅伝。現役時代は中央大学の6連覇に貢献した、テレビ解説でおなじみの碓井哲雄さん(神奈川工科大学陸上競技部監督)と、日本大学で2度の出場経験がある俳優の和田正人さんに、初心者から玄人まで楽しめる独自ルールやトリビアの数々を解説してもらいました!

【写真】一目でわかる箱根駅伝コースマップはこちら!

箱根駅伝イロハのイ〜PART1〜

◎箱根駅伝とは

 1920(大正9)年にたった4校(早大、慶應大、明大、東京高師=現・筑波大)から始まり、今大会で95回目。正式には『東京箱根間往復大学駅伝競走』という。東京・大手町の読売新聞社前から神奈川・箱根町の芦ノ湖まで往復217・1キロメートルを10区間に分け、各大学10人のランナーが母校の襷をつなぐ駅伝レースだ。1月2日に往路、3日に復路と、2日間にわたって開催される。

◎出場できる大学

 関東学生陸上競技連盟に加入している大学が対象。そのため、関西や九州などの大学は出場できない。

「今回は記念大会(95回)なので、例年より2校多く出場します」(碓井さん)

 記念大会は5年に1度。末尾が0と5の大会を指す。今大会は、前回大会でシード権を獲得した10校と、関東インカレ成績枠1校、そして10月の予選会を通過した11校、さらに関東学生連合という計23チームが出場する。

◎関東インカレ成績枠

 記念大会のみに適用される特別出場枠。関東学生対校選手権(関東インカレ)男子1部で、過去5年間の総合得点が最も多い1校に出場権が与えられる。

「長距離だけではなく、短距離や砲丸投げなど陸上競技全般が対象です。今大会は、関東インカレで7連覇した日大が出場を決めました」(和田さん)

◎襷(たすき)

 選手が意地をかけてつなぐ、母校の襷。中継所で次の走者に手渡すことによって、走者と区が変わる。どの大学も“全区間、襷をつなぐ”ことが最低目標だ。中継所は神奈川県の鶴見、戸塚、平塚、小田原の4か所にある。

◎花の2区

 各校のエースが顔をそろえることから“花の2区”と呼ばれている。

「1区のスピードランナーたちは僅差で中継所に来るため、2区は駅伝の流れを決める重要区間。有名な権太坂はアップダウンが激しく、速さ+強さの戦い。1区で出遅れた大学のエースが演じる“ごぼう抜き”も見ものです」(碓井さん)

箱根駅伝イロハのイ〜PART2〜

◎山上り&山下り

 箱根駅伝を象徴する5区“山上り”。標高差はなんと800m以上。言わずと知れた難コースだ。

「この特殊区間で求められるのはスピード以上に、ガッツ。5区で驚異的な走りをした選手は“山の神”と呼ばれるようになりました」

 と、碓井さん。元祖・山の神の今井正人さん('04〜'07年・順大)に次いで、2代目の柏原竜二さん('09〜'12年・東洋大)、3代目の神野大地さん('14 〜'16年・青学大)が誕生した。

 6区は反対に“山下り”。

「下りの平均速度は時速25キロメートルにも達します。恐怖心に打ち勝つ度胸。これが何よりも必要です」

◎シード権&予選会

 10位以内であれば、翌年の大会に出場できる“シード権”が与えられる。11位以下になると、予選会から戦わなければいけない。

 予選会は毎年10月。長らく20キロメートル走だったが、今回からハーフマラソンとなり、距離が延びた。各大学10〜12人が一斉に走り、上位10人の合計タイムを算出。今回は記念大会のため、上位11校が本戦に駒を進めた(通常は上位10校)。

◎関東学生連合

 本戦出場がかなわなかった大学の中から、予選会での成績が上位の選手を集めたチーム。オープン参加のためチーム順位はつかないが、個人の記録は認められる。

◎外国人留学生

 外国人留学生の起用は、10区間のうち1区間に限ると決められている。

「どの区の起用でもかまいません。今回、外国人留学生がいる大学は拓殖大、日大、東京国際大、国士舘大、山梨学院大の5校。拓大は、ワークナー・デレセ選手(4年)が外国人留学生初の主将を務めています」(碓井さん)

◎エントリー変更

 12月10日、各大学の出場選手が16人に絞られる(エントリー)。12月29日には各区間を走る10選手と補欠6人が登録される(区間エントリー)。当日のエントリー変更は、区間登録された選手と補欠選手の入れ替えに限り、4人まで。

「手の内をどこでどう明かすか。戦術の探り合いでもあります」(碓井さん)

◎時間差スタート

 復路6区のスタートは、往路のタイム差を守り、順番に走り出す。しかし、10分以上の差がある場合は、10分後に一斉スタート。よって、復路は見た目と本来の順位が違う場合も。

◎繰り上げスタート

 1位の選手が中継所を通過してから、決められた時間内(往路の鶴見、戸塚中継所は10分。平塚、小田原中継所は15分。復路はすべて20分)に走者が到着できない場合、強制的にスタートさせられる。ただし失格ではないので、タイム差はきちんと計算される。

「繰り上げになると、大会本部が用意した“白襷”をかけて走ります。屈辱です。でも往路と復路のゴールとなる5区と10区だけは、母校の襷の使用が許可されています」(和田さん)

箱根駅伝イロハのイ〜PART3〜

◎途中棄権

 ケガや体調不良などで走り続けるのが難しい場合、監督、走路員、審判員の三者合意によって赤旗が上がり、途中棄権となる。

「それ以降のランナーも走れますが、オープン参加扱いになるためチーム順位はつきません。かつ、個人の記録も認められません」(和田さん)

◎3つの優勝

 往路をトップでゴールしたチームが往路優勝。“復路だけ”のタイムがいちばん速かったチームが復路優勝。そして、いちばん大事な総合優勝は2日間の総合タイムで決まる。

「総合優勝すると賞状、優勝カップ、金メダル、優勝旗が贈られます」(碓井さん)

◎区間賞と金栗四三杯

 トップランナーの称号“区間賞”。各区間でタイムがいちばん速かった選手が獲得する。もらえるものは、賞状とトロフィー。

 そして、栄えある最優秀選手に贈られるのが金栗四三杯だ。

「前回は7区で区間記録を塗り替えた、青学大・林奎介選手(現4年)が獲得しました」(和田さん)

1分でマスター! コース解説

■往路
【1区】都心の高層ビル街を抜ける平坦なコース。集団走でのスパートのタイミングが鍵。
【2区】 レースの流れを作る重要区間であり、23.1キロメートルの最長区間。終盤の権太坂が見どころ。
【3区】前半はゆるやかな下り。後半は富士山を正面に海岸線を進む。海風が選手を苦しめる。
【4区】山を除けば20.9キロメートルの最短区間。終盤は立て続けに橋があり小刻みなアップダウンが続く。
【5区】最高地点874mの“天下の嶮”を駆け上がる最大の難区間。ラスト4キロメートルは下りで、切り替えが重要。

■復路
【6区】最初の上り坂を過ぎると、急傾斜をハイスピードで下る。山中の早朝の寒さも要注意。
【7区】中盤のアップダウンの対応がポイント。最終順位を見据えてのペース配分が難しい。
【8区】ほぼフラットなコースだが、海岸線ゆえに風の影響が。15キロメートル過ぎの遊行寺の急坂が難所。
【9区】最初の権太坂の下りは冷静な走りが求められる。中継所での繰り上げのドラマも?
【10区】ラストは日本橋を通り大観衆に迎えられる華やかなコース。シード権争いは最後まで気が抜けない。

《PROFILE》
和田正人さん ◎日大で2度箱根駅伝に出場。4年次は主将。NEC陸上部を経て俳優に。ドラマ『陸王』、舞台『光より前に〜夜明けの走者たち〜』など、その走りを生かした出演も多数

碓井哲雄さん ◎箱根駅伝に3度出場し、中央大の6連覇に貢献。現在は、神奈川工科大陸上競技部監督。近著に『箱根駅伝 強豪校の勝ち方』(文春新書)。箱根駅伝のテレビ解説を務めて25年