同じ名前だけど素材も味も違う。「くず餅」は関東と関西でまるっきり別物だった

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同じ名前でも、場所や時代によって全く違うものになってしまった食文化は日本に多く存在し、西洋起源とされる天ぷらや中華料理をモデルにしたギョウザやラーメンなどがあります。

しかし、日本国内でも地域によって全く非なるものになった和菓子があり、それが本項で紹介する『くず餅』です。

透き通る見た目とさわやかな甘みが夏向け、関西風くず餅

京菓子などでも有名な関西風くず餅(葛餅)は、吉野葛に代表されるクズと言う植物の根から採取したでんぷんで、日本の伝統食品の一つでもある葛粉から作られる餅菓子です。

また、関西の一部ではくず餅の中に餡を入れた物(全国的には葛饅頭と言う呼称が一般的)をくず餅と呼ぶこともあります。

関西風くず餅

そのでんぷんを水と砂糖と共に火にかけ、トロトロとしたものを練っていくと透明に近い色になり、プルプルした食感が特徴のくず餅が出来ます。

葛粉と砂糖さえあればお菓子作りの上手な人なら手作りできることもありますし、手作りキットも売られていたりする関西風くず餅は、時代を超えて人気の和菓子でもあります。

が、その葛粉(特に純粋な葛粉である本葛)が手に入りにくくなっており、芋などのでんぷんが使われることが多くなっているのも現状で、素材を確保するのが大変なお菓子でもあるという悩みを抱えています。

川崎大師由来の逸話がある関東風くず餅は、乳酸菌の風味と歯応えが病み付き♪

川崎大師

対する関東のくず餅(久寿餅)は関西のように葛粉を使わず、小麦粉由来を使って作られます。作り方も関西風とは異なり、小麦粉のでんぷんを乳酸菌で発酵させたものを蒸して作るため、独特の味わいと、どっしりした食感が売りです。

食べる時の味付けは関西風と同じく、黒蜜やきな粉を使うのは変わりありませんが、作り方も風味も違うためにカルチャーショックを受けてしまう人もいるとかいないとか…(筆者もその1人)。

なお、久寿餅と言う名前の由来には様々な説が存在し、江戸時代に東京都を含む葛飾郡と言う地域に因んで『葛餅』にしたが、関西のものと区分けするために今の名称になったと言うものです。

他には川崎大師こと平間寺にまつわる逸話で、久兵衛と言う男性が水に溶いた麦粉を放置した事で出来たでんぷんから餅を作りあげたことに由来します。

試食を頼まれた平間寺の貫主(お寺さんに相談と言うのが江戸時代らしいですね)は餅の味わいを褒め、久兵衛さんの久と、無病息災を願った寿の字から久寿餅とするのが宜しい、とのお言葉があったことから川崎大師の名物・久寿餅になったとする逸話です。

如何でしょうか?くず餅とひと口に言っても関西と関東で大きく違いますし、更には各地域やお店ごとに味や作り方も、当然違ってきます。皆さんが旅行などの時に各地の銘菓としてくず餅を味わう機会があった時、その一助ともなれば幸いです。

参考サイト:住吉, 吉野本葛 天極堂

画像:Wikipediaより『葛餅』『平間寺』