広告主は、自社のメディア購入に関してより高い透明性を要求している。パートナーとのより強い契約を主張し、プログラマティックについての専門知識を深め、アドテクベンダーの利用を減らそうとしている。

世界広告主連盟(WFA)が、世界で500億ドル(約5兆円)以上の予算を使っている28の広告主を対象に行った調査によると、多国籍広告主の10社(全体の45%)は、プログラマティック広告に関してエージェンシーやアドテクパートナーとより透明性の高い関係を築けたと考えている。この調査結果は2月9日(米国時間)に公開されている。

WPPが所有するエージェンシー、ウェーブメーカー(Wavemaker)のグループ戦略ディレクターであるリチャード・ブラッドフォード氏は、2月8日にあったイベント「メディアテル(Mediatel)」で、そうは言っても、ブランドはまだ、キャンペーンの効果を評価するのではなく、リーチを追いかけることに多くのお金を費やしている、と述べた。

「(クライアントたちは)重要ではないものを計測していることに気づきはじめている。計測は、ソリューションと同じくらい、重要な問題の一部だ」と、ブラッドフォード氏はいう。

広告主が予算をよりうまくコントロールできる方法を以下に紹介する。

エージェンシーの信頼性を検証する



WFAの報告書によると、広告主にとって、契約公開はいまや普通になっている。調査に応じた広告主の41%は、プログラマティックのパートナーとの透明性を高めることが2018年の主要優先課題だと回答している。

しかし、透明性の高い契約で信頼性に関する問題がすべて解決するわけではない。クライアントからだけお金をもらい、グループ契約から利幅を得ていないエージェンシーと、それを行っているエージェンシーとの境界線はぼやけていると、メディアエージェンシーであるセブンスターズ(The7Stars)の共同創設者で最高経営責任者(CEO)を務めるジェニー・ビッガム氏は話す。

「(クライアントに対して)あなた方の求めに応じて可視性を提供するが、ほかのクライアントがどうなっているかは心配しなくていい、と言っているエージェンシーがまだいる。(広告主は)社内のメディア専門家による大チームを雇用して、メディアエージェンシーの仕事の効率性を測らない限り(自分たちの予算がどうなったか)わからないのだ」。

インベントリー(在庫)だけでなく、データの透明性を高める



エージェンシーやアドテクベンダーがどれだけ多くのマージンを取っているかを広告主たちが気づきはじめるにつれて、データの透明性とアービトラージ(裁定取引)が議題に上がるようになってきた。メディア予算の使い途がリーチの追跡からキャンペーンの評価へとシフトするなかで、自分たちがブローカーからどれほど不正確なデータを買っているかを明らかにするためには、自社の計測では不十分だと広告主が気づくようになってきたのだ。

ブランドの約2/3(62%)は、データのアービトラージや自社データから得られる利幅の開示を2018年の優先課題にしている。この割合は2017年の14%から大幅に増加していると、WFAは説明する。

アディダス(Adidas)はすでに、サードパーティーから購入しているデータの信頼性を判断するためにエージェンシーのひとつとテストを進めている。これは、計画をよく知るふたつの情報筋から聞いた話だ。このスポーツウェアブランドは、自社で集めたデータとサードパーティーから購入したデータを比較し、オーディエンスセグメントプールを満たそうとしている。

データといえば、GDPRにも触れておこう



マーケターにとって不運なことは、自社ビジネスが欧州の「一般データ保護規則」(General Data Protection Regulation:GDPR)に準拠していると保証するだけでは不十分なところだ。一緒に仕事をするアドテクベンダー、マーテクベンダーもまた、厳しく吟味しなければならないだろう。ジャガー・ランドローバー(Jaguar Land Rover)のデジタルマーケティング部門グローバル責任者、ドミニク・チェンバーズ氏はこう説明する。「我々のアウトバウンドマーケティングに関わるプレイヤーのビッグチェインがあり、全員が一緒に行動し、適切な許可をきちんと得ていることを確認する必要がある」。

リーチよりコンテキストを強調する



オーディエンスプランニングはメディア戦略のなかでますます重要な部分になっている。広告主が、自身の計画におけるサードパーティーのクッキーデータを自社の顧客データやコンテキストデータに置き換えはじめているからだ。オーディエンスプランニングにおける焦点はコンテキストへと移ってきたが、2017年に起きたブランドセーフティに関わるスキャンダルが明確に示すように、広告主が忘れていることがあると語るのは、全国紙向けのマーケティング組織ニュースワークス(Newsworks)でインサイトディレクターを務めるデニス・ターナー氏だ。コンテキストへの注目が集まるにつれ、メディアの振り子は、メディア所有者と直接仕事をしている実績のあるメディアや広告主へと戻ってくるだろう。

価格だけでなく結果にも焦点を



コストに敏感な広告主はいつの時代も存在するが、いまは結果の計測のほうがより重要になりつつある。オンライン食品デリバリーサービスのジャスト・イート(Just Eat)は、商業的利益を示すために広告支出の分配方法を変えた。ジャスト・イートは現在、ブランドにまつわる噂や消費者の反応を追跡して、投資の短期的・長期的見返りを評価していると、同社のメディアプランニングマネージャーのロス・ダンカン氏は語った。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)