日本ハムの野手総合コーチに就任した緒方耕一氏【写真:岩本健吾】

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新設の「野手総合コーチ」に就任「誰がレギュラーを獲るのかというのは当然、競争」

 一昨年、日本一に輝いた日本ハムは昨年、リーグ5位という悔しい結果に終わった。今オフには、多くの新コーチを招聘。目玉の1人となるのが、新設の「野手総合コーチ」に就任した緒方耕一氏だ。古巣の巨人や野球日本代表「侍ジャパン」でコーチを歴任後、野球解説者を務めていたが、8年ぶりに本格的に現場復帰する。

 現役時代には巨人で2度の盗塁王(1990、93年)に輝いたスピードスターは、「『自分が入ったから(チームが)こう変わったんだ』と言うのはどうかと思う」と急激な“改革”には否定的ながらも、盗塁数の増加については「少しでも力になれれば」と意欲を見せる。各ポジションの激しいポジション争いを望み、巨人から移籍してブレークした大田泰示外野手に対しては、さらなる飛躍を期待した。

――2017年の日ハムについては、どう見ていましたか?

「エースと4番というところから入ると、大谷選手がシーズンを通して万全ではなく、投打ともに十分に力を発揮できなかった部分はあると思います。そこが一番大きかったのかなと。あとは中田翔ですよね。自分でもすごく苦しいシーズンになったと感じているんじゃないですかね。打線で言えば、近藤選手も素晴らしいスタートを切ったけど、残念ながら2か月くらいで離脱してしまったので、なかなか打線全体が厳しかった」

――田中賢介が出場機会を減らし、中島卓也が負傷離脱した二遊間はレギュラーを固定できなかった。その分、若手の台頭も目立ちました。

「誰がレギュラーなのかというと、ボヤッとしてしまった。固定できなかった。そういうことも大きかった。ただ、二遊間をああしたい、こうしたいではなくて、誰がレギュラーを獲るのかというのは当然、競争です。なので、こちらが『誰が獲ってほしい』というのは全く無くて、ファンの人も見ていて『こいつがレギュラーと言える数字を残したな』というくらいまで存在感を出す人が二遊間に現れてくれたら大きいですね。ああいう状況だったので、みんなが競争という意識を持っているでしょうから、こっちがどうこうではなくて、選手が闘争心を持って、競争という気持ちを持ってやってくれるんじゃないかなと思ってます」

「外野の競争は嬉しい悲鳴」「大田が天狗になることはない」

――ポジション争いという意味では、外野も大変です。2017年はセンター西川遥輝がチームを引っ張り、大田泰示、松本剛がブレークしました。ただ、本来は捕手の近藤健介も外野が中心となる可能性があり、新助っ人のオズワルド・アルシアも獲得した。その他にも好選手が多く、DHの使い方もポイントになりそうです。

「外野の競争は嬉しい悲鳴で、いっぱい選手がいますから。清宮くんが入ってきて、即1軍で使えるような可能性があったら、どこ守るの、ということにもなります。翔と勝負でファーストやって、どっちかが外野に行くのかとか、DHやるのかとか。ただ、外野はすごくたくさんいい選手がいるんですよ。レギュラーと言えるのは遥輝くらいじゃないかな」

――巨人の後輩にあたる大田は118試合出場、打率.258、15本塁打、46打点という成績を残しました。プロ9年目でキャリアハイの数字ですが、能力を考えれば、もっと出来るという声もあります。

「そりゃそうですよね。今までの中ではキャリアハイだったかもしれないけど、彼の能力からしたら、誰もがこれが最高のパフォーマンスとは思ってないと思うんですよね。もっともっと、というところはあると思うんです。

 1年打ったからといって、新シーズンもレギュラーでいけるかというと心配はあります。例えば、打率.250、20本塁打、80打点とか打てればいいですよ。それが打率.250で10本塁打ではダメだし、3部門のどこか1つが落ちても危ういような競争になると思いますけどね。外野は本当に大変です。実績を残して、実質1年間やって、マークもきつくなる。だから、より頑張るという気持ちで(2017年と)同じくらいの成績になる。

 でも、彼に油断はないと思います。あいつがいいのは、性格がいいこと。変に天狗になることはまずない。そこは心配はしてないです。性格面では全く心配していません」

「盗塁を1人1個増やすだけで、チーム盗塁数は30増える」

――大田は新天地でがむしゃらなプレーを見せてくれましたが、チーム全体の走塁の意識についてはいかがでしょうか? 2017年のチーム盗塁数86はパ・リーグ2位(1位は西武の129)、セ・パ両リーグでは3位(2位は広島の112)の数字でした。順位で見れば悪いわけではありませんが、緒方コーチに期待する人も多いのではないかと思います。少しずつでも変えていきたいという考えはありますか?

「走れないよりも走れるに越したことはないので、少しでも力になれればとは思います。全体で考えて、1軍の野手登録が16人だとして、2軍からの入れ替わりもあれば、1年間シーズンを通すと30人前後が1軍に登録されます。盗塁を1人1個増やすだけで、チーム盗塁数は30増えるわけですから。まずはそれくらいの感じでやれればと思います。

 でも、ファイターズはいい球団なので、自分が『ああしたい、こうしたい』ばかりではなくて、今までのものを大事にしながら、その中でもう少しこういうことができれば、という気持ちです。求められるところでやりたいな、というのがありますね。監督とか、球団が『こうしたいんだけど、どう思う?』という時に一緒にもがきながらでもやっていければなと。『自分が入ったからこうなったんだ』と言いたいから頑張るというのは、どうなのかなと思いますからね」

――パ・リーグは2017年、ソフトバンクが圧倒的な強さを見せて優勝しました。ただ、日本ハムには2016年にそのソフトバンクを大逆転してリーグ制覇し、日本一に輝いたという実績があります。若いチームなので、勢いも出やすい。ソフトバンクを倒すために必要なのは、どういうことになるでしょうか?

「秋季キャンプというのは、どこでも若手中心の厳しいメニューだから若いと思うんでしょうけど、(11月に)沖縄の国頭に行かせていただいて、本当に若いなぁと思いましたね。泰示とかが上の方ですからね。若いチームとは思っていたけど、実際に中に入ったら本当に若いなと思って。

 ソフトバンクは、ゲーム差を見ても、順位を見ても強い。でも、当然、上位を狙って戦います。簡単ではないですが、ソフトバンクだって今年勝ったから来年も簡単なんて思ってない。勝ったチームでもそうは思ってないので、下位のチームが大変だというのは、みんながわかってることです。

 ただ、スタートは0勝0敗なので、当然、優勝を狙っていきます。その差は短期決戦じゃないから大きいのは間違いないと思いますけど、育成という面で考えても、勝ちにこだわらないと、強い選手は育たない」

 若いチームで選手の成長を手助けしながら、なおかつ、自身も成長する。そして、勝つ――。“緒方効果”は気づいたときにはチームに浸透し、選手を変えているのかもしれない。(Full-Count編集部)