二つのロボットの開発費は約10万円。普及しやすさを意識した費用だが、上からロボットの位置を見るカメラの画像認識にはAIを使っている。効率的にゴミ箱へゴミを運ぶ手順を考え実行する。

接客タスク/音声認識技術がカギ
 東京大学稲葉研究室の「Cチーム」は、THKの双腕ロボットを使った。チームリーダーの矢口裕明さんは「人型ロボットを使うことで、来店客と心を通じ合わせやすくなるのでは」と話す。

 双腕ロボットが棚の陳列作業をしているとき、来店客が近づくと、来客対応を優先するかどうか判断する。来客が「このお菓子を下さい」と言うと、「お客さまはロボットに難しい注文をしますね」など文句を言いつつ棚から商品を取り出し、ロボットに付いたカメラで商品を認識、決済まで行う。複雑な作業のため再試行を繰り返したが、ロボットが店内作業をするとこんなことができるという絵姿は見せた。

 一方、中部大学の「CU―HUB」は、トヨタ自動車の「HSR」にマイクを搭載して2人が同時に発話した注文内容を聞き取り、一つずつこなす予定だったが、音声認識がうまくいかなかった。人が多い場所での音声認識技術はまだ向上の余地があるようだ。

 各競技を観戦していた佐藤知正東京大学名誉教授は「店全体をロボットシステムと捉えており、この着眼点は良い。ロボットの調整は相変わらず難しいが、未来のコンビニを感じさせるアイデアがあった」と評価する。
<フューチャーコンビニエンスストアチャレンジとは>
ロボット技術により従業員の負担を軽減し、顧客に新たなサービスを提供する未来のコンビニを実現することを目指した世界初の競技会。トライアル大会の位置付けだが2020年までの毎年開催を予定している。17年は10企業・大学が参加。(1)陳列・廃棄タスク=日常商品(おにぎり、お弁当、サンドイッチ、カップ飲料)の自動補充と消費期限切れ商品の廃棄(2)接客タスク=ロボット技術を利用した近未来の洗練された顧客サービスの提案と実演(3)トイレ清掃タスク=個室トイレの便器、床、壁の清掃―の3タスクを実施。各チームのロボットシステムが持つ提案性、有用性、実現可能性を競った。

(文=石橋弘彰)