代表初ゴールとなる決勝点を奪った小林。終盤に中国を突き放した日本だが、もう少し違いを見せてほしかった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 中国戦は終盤に生まれた小林悠と昌子源の代表初ゴールもあり、2-1で勝つことができた。結果から言えば、もちろん勝利できたのは良かったが、今の日本にとって、若手中心で臨んできた中国には勝って当然だし、もっと早い段階でゴールを奪って、格の違いを見せて勝利を掴んでほしかった。
 
 相手は、イタリア人のマルチェロ・リッピが指揮を執っていたけど、従来の中国とあまり変わらないオーソドックスにフィジカルで真っ向から挑んでくるタイプのチームだった。何か個人の仕掛けや変わったコンビネーションで攻撃するという個性的なアイデアもない。やり方が見えれば、そうそうやられてしまうような怖い相手じゃない。
 
 つまり勝利はごくごく順当なもので、中国戦ではもっと攻撃面でどうやってゴールを奪いに行くのか、その形をきっちりと提示してほしかったね。今回の中国は、北朝鮮とは違ってそんなにべったり引いてカウンターを狙ってきたわけじゃないし、ある程度中盤でパスも回させてくれたはずだ。
 
 にもかかわらず、日本もアタッキングゾーンに入ってからのところでチャレンジが足りなかった気がする。さっきは中国のことを言ってしまったけど、結局日本も攻撃面ではこれといったアイデアがなかったわけだ。トップに対して縦パスが入る場面も少なかったし、北朝鮮戦で鋭いドリブル突破を見せていた伊東純也なんかも、ちょっと単発的な印象しか残らなかったのは残念だったね。
 そうしたなかで光るものを見せてくれたのは、ゴール前で粘り強く持ち運んで小林のゴールにつなげた川又堅碁のプレーだった。彼の身体の強さや空中戦の強さは、あの時間帯でうまくハマっていた。
 
 要するに日本は、あるいはハリルホジッチ監督は、こういった個人を輝かせる戦い方に長けてないように見える。伊東の使い方ひとつにしてもそうだ。彼には持ち前のスピードを活かすべく、他の選手がその邪魔をしないように、最初から十分なスペースを空けておいてあげればいいんだ。
 
 古い話だけど、僕がメキシコ五輪を戦った時には杉山隆一さんという素晴らしいウイングがいた。チームメイトはみんな、杉山さんの突破力には一目置いていたから、誰もそのエリアに入って彼の進路を妨げるようなことはしなかったんだ。杉山さんにボールが入れば、あとは敵との1対1で個の勝負になる。そういう状況になったら、杉山さんはかなりの確率で目の前の敵に勝っていたからね。
 
 例えば、ウイングであれば、伊東にしろ、浅野拓磨にしろ、彼らの個性や能力をもっと信じてそういう風にチームとして個の力を生かせれば、攻撃力のアップにもつながると思うんだが……。
 そう考えると、北朝鮮戦といい、中国戦といい、課題は攻撃面により多くありそうだ。守備面でもGKに助けられている側面は大きいが、なんとか終盤まで凌ぎ切っているだけに、組織としてそんなに大きく崩されているわけじゃない。
 
 韓国戦では、攻撃陣の選手たちがいかに奮起してみせるかがポイントになるだろう。もはやハリルホジッチ監督のなかで、7〜8割方は決まっていると思われるメンバーのなかにこれから割り込んでいくには相当なアピールが必要だ。
 
 その韓国戦だけど、やっぱり生半可な気持ちで臨んでは痛い目に遭うと思う。元々韓国は日本に対して特別な感情を持っていて、他の国と戦う時とはまるで違うものを出してくる。それは、もう僕らの一世代、二世代あとになったら、だんだんなくなっていくんじゃないかなと思っていたけど、最近の日韓戦を見ても全然変わっていない印象を持っている。
 
 本当に闘志を剥き出しにして向かってくるし、力と技の勝負というより力と力の戦い。韓国戦は、伝統的に力勝負で、球際が激しく、気持ちのぶつかり合いになる。なんと言っても、そこが一番のポイントになる。
 
 お互い海外組がいないし、ベストメンバーではないけど、日韓戦はどんな状況でも国の威信を懸けて戦わざるを得なくなる。そういう意味では、ワールドカップのいい予行演習になるんじゃないかな。