日本女子フィギュアスケートの平昌五輪代表切符は2枚。その争奪戦はいっそう激しさを増していきそうだ。今季グランプリシリーズ(GP)第3戦となる中国杯が11月3日、4日と北京で行なわれ、代表レースを競う高校生トリオがそれぞれの持ち味を発揮した。

 2016年の世界ジュニア女王で今季シニアデビューを果たした本田真凜は、前戦のスケートカナダから連戦となったが、疲れも見える中で大きなミスなく演技をまとめた。


GP2戦目の中国杯はSP6位、フリー5位、総合5位に終わった本田真凜

 ショートプログラム(SP)では『ザ・ギビング』の曲調に乗って滑らかな演技を披露。連続ジャンプの2つ目の3回転トーループで回転不足を取られたが、ステップと3つのスピンではすべてレベル4と認定されるなど、まずまずの出来で66.90点の6位発進となった。スケートカナダであったジャンプの転倒やスピンでのレベルの取りこぼしをしっかりと修正してきた。

「今回は、特にSPで自信を取り戻せる演技ができればいいなと思っていました。まだまだ直さなければいけないところはたくさんあると思いますけど、SPの演技には満足しています」

 こう振り返るように、自信を回復させる演技だった。

 GP初陣のスケートカナダでは総合5位と、鮮烈なデビュー戦とはならなかった。それだけに、世界のファンにもジャッジにも認めてもらうには、このGP2戦目で是が非でも表彰台に立つ必要があった。それは本田自身もわかっていたはずだ。フリー『トゥーランドット』ではどんな演技で巻き返すのか期待されたが、演技全体にやや覇気がなく、動きに鈍さが見られた。

 3回転フリップで回転不足があったり、スピンでも1つがレベル3で取りこぼしたりしたほか、ジャンプで出来栄え(GOE)加点があまりつかなかったために、得点はそれほど伸びなかった。合計198.32点と200点の大台に届かずに、スケートカナダ同様に総合5位となり、シニア初のGP2戦はほろ苦い結果で終えた。

 演技後の本田は「うん、うん」と首を縦に振った後、首をかしげながら笑顔で挨拶し、キスアンドクライに座った。

「フリーに関しては頑張ったかなという印象だけど、満足のいくものではなかったです。でも、全体的にはよかったんじゃないかなと思います。(今回の中国杯は)慎重にいき過ぎていたかなと、滑りながら思っていました。

 カナダのSPのときに1回、自信がなくなったんですけど、その後で3回のプログラム(スケートカナダのフリーと中国杯)を滑ってみて、ちょっとずつオリンピックに出たいなという気持ちが沸いてきたので、自分ができることを、全日本までの間にしっかりと後悔のないような練習ができればいいかなと思います」

 この試合の経験は本田にどんな教訓をもたらすか。”練習嫌い”を公言する16歳が、シニアらしく戦うマインドを持つことでどう練習に取り組むようになるのか。次戦となる全日本選手権で実力を発揮し、念願を成就できるかが楽しみだ。

 一方、注目度では1学年下の本田に後れを取っている高校2年生の樋口新葉。だが、今季は「GPファイナルに絶対に出ること」を目標に掲げており、シニア2年目の充実ぶりが見られて頼もしい。GP初戦のロシア杯で3位に入っており、2戦目の中国杯で2位以上となれば12月初旬のGPファイナル進出に望みがつながることから、モチベーションは高かった。

 その中国杯では、優勝した昨季世界ジュニア女王のアリーナ・ザギトワ(ロシア)に1.36点差の僅差で及ばなかったが、合計212.52点をマークして堂々の総合2位。目標クリアに大きく前進した。

「こんなに思い切り滑って、ノーミスしたのが(昨季の)国別(対抗戦)以来だったので、それがすごく嬉しいです。ただ、(1位との僅差が)すごく悔しいです。もうここまでファイナル(出場)に向けてできるだけのことをやってきたつもりなので、本当に出られるように願うだけです」

 五輪シーズンに作った樋口のプログラムは、SP『ジプシーダンス』とフリーが『007スカイフォール』。この2つのプログラムは彼女のよさを十分に発揮できており、滑るたびに魅力が増している。中国杯ではSP、フリーともに、昨季、そしてGP1戦目よりも成長している姿を見せ、高得点を叩き出した。70.53点のSPも141.99点のフリーもトップとの差はわずかで、細かい取りこぼしがなくなれば逆転できるだけの伸びしろがあることがわかった。

 SPでは3回転フリップに「!」(エッジ警告のアテンションマーク)がつき、ステップとスピン1つがレベル3だった。また、フリーでもステップがレベル3と認定されたのに加え、ジャンプのGOE加点の付き方がザギトワに比べると総じて低かった。こうした部分の技術の向上と振り付けの工夫を図れば、出来栄えの点数が増えるはず。まだ出場が決まってはいないがGPファイナル、そして全日本選手権までの間にさらにプログラムに磨きをかけたいところだ。

「とにかく毎回の試合で全力を尽くすつもりで全日本まで戦って、オリンピックに行けたらいいなと思います」

 持ち味のスピードあふれるスケーティングとともに、勢いのある演技がはまってきた樋口の活躍に期待が高まる。

 樋口や本田に引けを取らない実力者で、昨季と同様、日本女子の中心的役割を担う存在として期待されているのが三原舞依だ。お姉さん格の高校3年生は普段は控えめだが、シニア2年目の今季ははっきりと意気込みを語っており、一皮むけた大人の滑りに変身を遂げた。

 GP初戦となる中国杯ではジャンプの回転不足でSP7位と出遅れたが、満足のいく演技を見せたフリーでは3位と巻き返し、合計206.07点の総合4位に食い込んでみせた。目指す五輪代表に向けて、まずまずのスタートを切ったと言っていいだろう。

「フリーは最後まで思い切って滑ることができました。ダブルアクセルだけ少し危なかったんですけど、それ以外はステップもスピンもレベル4が取れていたのでよかったかなと思います。(次戦の)フランス杯ではSP、フリーともにパーフェクトで滑ることが目標なので、練習から思い切ってスピードを出し、何があっても自信をつけられる練習ができたらいいと思います」

 フランス杯はスケートカナダを制したケイトリン・オズモンド(カナダ)や中国杯優勝のザギトワら強豪との勝負となる。中国杯で得た課題を克服してGP2戦目に挑み、GPファイナル進出のチャンスを掴み取ってほしいものだ。

Sportiva フィギュアスケート特集号
『羽生結弦 いざ、決戦のシーズン』
好評発売中!


★詳しくはこちらから>>

フィギュアスケート 記事一覧>>

フィギュアスケート特集ページ>