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■もくじ

どんなクルマ
ー右ハンドルの生産型タイプR初試乗

どんな感じ?
ー5代目シビック・タイプR どう違う?
ー「あの」鋭いレスポンスは過去のものに
ーアクセルペダルを強く踏みこんでみる

「買い」か?
ーゴルフRやフォーカスRS、A45などの競合多し

■どんなクルマ

右ハンドルの生産型タイプR初試乗

不機嫌そうな表情にブリスターフェンダーをまとい、ゴツゴツとした見た目の5代目ホンダ・シビック・タイプRがついにデビューした。

旧モデルよりも速く、力強く、先進的に生まれ変わったホットなホンダ・シビックは、英国のスウィンドン工場を拡張して生産されているが、実力は、さてどうだろう?

10年ぶりに全輪が独立サスペンションとなったタイプR。従来のプラットフォームは利用せず、高性能を求めてゼロから開発されている。

ニュルブルクリンクの北コースで、前輪駆動車の最速ラップを2017年のはじめに奪っている。右ハンドルの生産型モデルを、初レポートしてみたい。

5代目シビック・タイプR どう違う?

これまでの歴代タイプRと同様に5代目もFFだ。

そして、魅力的なホットハッチで、シンプルにダイナミックな走りが可能なようにと、6速マニュアルトランスミッションをホンダは選んだ。

4代目と比べて、ボディ剛性は一層高くなり、軽量化され、全く新しいサスペンションとステアリング機構が盛りこまれている。

エンジンは徹底的に見直されて10psの増強が行われたが、最大トルクは変わっていない。

クルマの性能データに興味があるひとなら、このモデルに関しては余り大きな感動はないかもしれない。

10psのパワーアップとファイナルギアレシオを7%改めることで、新しいタイプRは0-100km/h加速を5.7秒に短縮し、最高速度が約3km/h速くなっている。

「あの」鋭いレスポンスは過去のものに

ノーマルのホンダ・シビックと同様に、ボディサイズはライバルとなるモデルと比較して大型化されており、英国の道には若干持て余す感がある。

新プラットフォームにより、ドライビングポジションは改善されたものの、着座位置は依然として高く、ステアリングのテレスコピック調整機能も備わっていない。

一方、パワーステアリングやクラッチ、シフト、ブレーキペダルの感触は非常によく練られており、斬新で正確。重さも適切だ。

しかしターボ化されたことでスロットルレスポンスに甘い部分があり、従来のタイプRが持つ鋭いレスポンスが高い評価を得てきただけに、上記の良い部分を阻害している。

4気筒エンジンを積むホットハッチの多くは、ターボラグをなくす努力をしている。しかし、高回転型エンジンとするためにショートストロークに設計されており、極わずかながらラグを感知できてしまう。

そしてこのターボラグは、タイプRを心から楽しめないクルマにしてしまっている。ただ、このエンジンの出力域は幅広く、競合する4気筒エンジンと比較すると強力だという点には気づくはずだ。

アクセルを強く踏みこんでみる

アクセルペダルを踏みこむと、3500rpmから回転に勢いがつき、5000rpmから7000rpmにかけてその勢いは加速していく。

ヒュンヒュンという感じでもなく、バーチャルな感じがしない、弾け飛ぶような一級品のエンジン音だ。間違いなくとてつもなく速く、これが重要なこのクルマの特徴といえる。

乗り心地とハンドリングは全モデルからだいぶ改善されているが、シビックがホットハッチの王者とまでには至っていない。

20インチホイールと扁平タイヤのせいで高速道路でのノイズが目立つが、旧モデルよりはるかにしなやかだ。高速道路から街中に移っても、アダプティブダンパーの設定を「コンフォート」しておけば、段差の処理も上々。

しかし、全体的には「スポーツ」モードが硬さと正確さ、ダンピングのバランスが取れている。スピードを上げていくと、よりその印象は良くなる。

コーナーを抜けると、コンチネンタルのハイグリップタイヤと優れたハンドリング、車体が大きい割に素晴らしいボディコントロール、LSDが組み合わさることで、穏やかな挙動を生み、急激なテールの角度変化には至らない。

攻めていけるクルマだ。

■「買い」か?

ゴルフRやフォーカスRS、A45などの競合多し

ジュニア・ツーリングカー的な雰囲気を先代のタイプRは持っていたが、新しいタイプRの性格づけにもモータースポーツシーンは重要な要素だ。レースカーの感覚はホンダの車にとって魅力の中心となるものだと思う。

今回は、優しい乗り心地と、気軽に乗れるクルマになっている。率直に言えば、「スピードと安定性が一番重要」というホットハッチが欲しいひとの理想像は、それほど身近にあるものではない。

タイプRをホットハッチとして運転するには、路上でのかなりのスキルと気持ちの入れこみが必要だろう。しかも実際のところ、競合モデルの方がホットハッチ的な性格が強い。

フォルクスワーゲン・ゴルフRやフォード・フォーカスRSの方がより幅広いドライバーに対して訴求力があるモデルだ、というのが私の意見だ。

値段を気にしないのなら、メルセデス-AMG A45が最もスリリングな1台だと言える。

そして、新型のアウディRS3に関しても、英国の公道での試乗が間もなく控えている。これら5台の比較テストを近日中に行う予定だ。

とは言え、タイプRは現在の市販車の中で最も速いホットハッチである可能性はある。

しかも、比較的手頃な価格のままで。この2点が、好むと好まざるとに関わらず、シビック・タイプRから目が離せない理由なのだ。

ホンダ・シビック・タイプR GT

■価格 £32,995(467万円) 
■全長×全幅×全高 - 
■最高速度 271km/h 
■0-100km/h加速 5.7秒 
■燃費 13.0km/ℓ 
■CO2排出量 176g/km 
■乾燥重量 1380kg 
■エンジン 直列4気筒1996ccガソリンターボ 
■最高出力 320ps/6500rpm 
■最大トルク 40.7kg-m/2500-4500rpm 
■ギアボックス 6速マニュアル