生徒らが寄付を集めて購入したロボット(画像は『Fox 5 NY 2017年5月25日付』のスクリーンショット)

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クラスメートのおかげで、病気で学校に通えない男子生徒に希望の光を与えるアイデアが実現した。米ニュージャージー州イースト・ブランズウィックにある学校の生徒や教師、その教区の人々の心温まる親切な行いを米『Fox 5 NY』や『Catholic Philly』が伝えている。

カトリック系の学校「セント・バーソロミュースクール」の生徒タイラー・ヌーレク君(13歳)はホジキンリンパ腫を患い、治療のために昨年12月から学校を欠席している。

タイラー君にとって学校に通い友達と過ごすことは何よりの望みであり、また幼稚園の時から共に進級してきたクラスメートたちも彼の長期欠席は心痛めるものであった。

タイラー君を心配する友人らと同じように、タイラー君の母ジャッキーさんも息子に孤立感を抱いてほしくないという気持ちから、なんとかして学校と接点を持つ方法はないかと悩んでいた。そんな時テレビのニュースで「VGo」ロボットのことを知り、今年1月に学校長アン・ヴャースビッキ(Ann Wierzbicki)さんに、学校でロボットをレンタルもしくは購入可能かどうかを尋ねた。

1月18日はタイラー君の誕生日でもあったために学校側はリサーチを進め、技術コンサルタントとの会議も行い、VGoロボットを購入する計画を立てた。

その一方でロボット購入には4,000ドル(約44万円)の費用がかかると知ったクラスメートたちは、タイラー君の回復のために自宅や学校で祈りを捧げ、週末には教会のミサで話をするなどして精力的に活動し資金を集めた。このことが知られるようになると、幼稚園児たちが大量の1セントを持ってきたり、1,800ドル(約20万円)を快く寄付してくれるファミリーもいたという。そして2週間でロボット費用の2倍に上る8,000ドル(約89万円)が集まり、VGoロボットを購入した。

アン校長は「タイラー君のキャンペーンは大成功でした」と喜び、スクールITコンサルタントのマーク・ブリッソンさんは「タイラー君はすぐに操作方法を覚えました。今の子供たちはゲームに慣れていますから、マインクラフトでキャラクターをナビゲートしているようなものなのでしょう。当校はこの10年間、教育のために導入した機器のアップグレードを計っていたので、学校側もロボットの購入には積極的でした。伝統的なカリキュラムに盛り込んだテクノロジーは、生徒たちに楽しみや希望、愛や思いやりをもたらしてくれます」と述べている。

マークさんの言葉通り、VGoロボットを得たタイラー君は自宅のiPadを使用して、まるで教室にいるかのようにクラスメートや先生の声と姿を感じることが可能になった。また授業だけでなく、ランチや校外の行事などにも一緒に参加することができるため、タイラー君にとって学校と繋がっているという希望を与えられた。

教師の1人であるジョージー・ウィリアムズさんは「タイラー君が私たちの姿を見ることができるように、私たちもVGoロボットを通して彼の姿や声を知ることができます。体調が悪い時には、姿を見せずに音声もミュートにしていていますが、生徒たちはそんなタイラー君を理解しています。ロボットはライトを点滅させて“イエス”や“ノー”を伝えることができますし、教室で手をあげて質問する代わりにタイラー君はスカイプメッセージを通して、私に質問することも可能なのです」と話している。

現在アメリカ国内では、2000体のVGoロボットが使用されているという。うち500体はタイラー君のように長期欠席している生徒のために学校で使われているそうだ。

クラスメートたちが「まるでタイラー君がこの教室にいるみたい」と喜んでいるように、VGoロボットの導入によりクラスメートの寂しさやタイラー君の孤立感も解消されたようだ。タイラー君のことを思いやるクラスメートたちはつい最近もiPodシャッフルを買い、タイラー君が少しでも元気になるように明るい曲をダウンロードしてプレゼントしている。クラスメートたちは「学校に来られなくても、タイラー君はずっと私たちの仲間の1人」と言い、ジャッキーさんも「学校や教区、生徒のみなさんの愛とサポートを得た息子が、さらにみなさんとの絆が深くなったことはとても貴重であり感謝の言葉もありません」と述べ、続けてこのように語った。

「長期の治療となると、誰でも孤立しやすく無力感を抱いてしまうものです。みなさんの力により購入できたVGoロボットは、タイラーのそうした気持ちを拭い去ってくれました。息子の回復に力をくれたみなさんに、息子自身もとても感謝しています。私はみなさんがしてくれたように、いつか息子にも苦しんでいる人たちの心に希望の光を灯すような人になってほしいと願っています。」

画像は『Fox 5 NY 2017年5月25日付』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)