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●発表会の主役は新料金プラン?

NTTドコモは24日、2017年夏新サービス・新商品発表会を開催した。「Challenge to Change」を標語に掲げ、新たな取り組みなどを紹介したが、本当の主役は何だったのか。

○最も注目を集めたもの

今回の発表会を記者目線で捉えたときに、最も注目を集めたのが、新料金プラン「docomo with」だ。発表会の質疑応答、吉澤和弘社長の囲み取材を含め、そのほとんどがdocomo withに関する質問だった。逆にそれ以外に関するものがなかったというのが印象だ。

docomo withは対応機種を定価で購入し、永続的に月額1,500円の割引きが受けられる料金プランで、対応端末を使えば使うほどに大きなメリットを享受できる仕組みだ。

前記事で述べたとおり、対応機種が2機種に限られる理由や新料金プランがドコモの戦略上何を意味しているのかを解き明かすことに時間がとられた発表会だったといってもいい。

意外だったのは、新端末に関することだ。Galaxy S8を初めとしたサムスン製端末の安全性など、改めて強調される発表会になるかと思いきや、サムスンに関する言及はほぼなく、質問さえ出なかった。むしろ、端末において重視されたのは、4KHDRでの表示が可能な「Xperia XZ Premium」のほうだったようにさえ感じる。

Galaxyシリーズに関して、付け加えるとすれば、今回の発売にあたり、サムスン側がバッテリ等の検査を十分に行い(このあたりはホームページ上でも公開されている)、ドコモもその検査結果の妥当性を評価してもらったという説明員からの話が聞けたくらいだ。

●dジョブに感じる可能性

○eSIMは期待はずれ

端末でもうひとつ注目しておきたいのは、ドコモが提供するタブレットの「dtab」だ。dtabはeSIMに対応した端末だからだ。eSIMとは、通信キャリアの選択をソフトウェア上で選択可能にする仕組みで、従来のようにSIMカードを抜き差しすることなく、ユーザーは好みのキャリアを自由に選択できるのがメリットだ。

ユーザーにはキャリア選択の自由度を高めるため、メリットは大きいが、ドコモにとっては契約者を簡単に失いかねない手段ともなる。思い切ったことをやってきたとも最初は思ったが、説明員に聞くと、eSIM本来の機能については制限がかかっており、キャリア選択はできないという。現状は、オンラインでdtabを購入したときの開通作業を遠隔から行える程度の機能に過ぎないようだ。

○dジョブ周辺に注目

サービス系で注目したいのは今秋サービスが開始される「dジョブ」だ。どのメディアも注目していないが、その根本的な考えは大きなビジネスにもなりうるからだ。まずdジョブの概要について述べておこう。

dジョブは、アルバイト・派遣社員・正社員の求人情報から、データ入力、ライティングなどのクラウドソーシング、ウェブアンケートなどの副業的な「スマホワーク」までを網羅したプラットフォームだ。複数の求人サイトの仕事情報を集約掲載しているという。

提携求人サイトについては明らかにしていないが、ドコモの集客力を存分に生かすことが可能だ。また、スマホワークに対する報酬として、dポイントを活用するなどドコモのアセットを活用している。

興味深いのは、dジョブが生まれた発想についてだ。もともと、就職、転職などのライフステージに応じて、既存の企業のサービス、ドコモが提供する新たな価値を足し合わせ、プラットフォーム化したのだという。

人生における重要な局面、かつお金が動くところで考えると、結婚、住宅など別のキーワードも浮かんでくる。今後のビジネスの広がりが予測されるとともに、新たなプラットフォーマーの誕生という流れもありうるかもしれない。

●あまり目立たなかった発表会の主役

○発表会の主役、実は5G

さて、今回の発表会の標語は「Challenge to Change」である。その言葉に一番マッチするのは、ドコモの5Gへの取り組みだ。

5Gの特徴は、高速大容量、低遅延、多数端末接続であり、この特性を生かした新たなサービスを創出するには、ドコモの力だけでは無理だ。そのためドコモは"協創"という言葉を掲げ2020年以降に向けてビジネスを展開しようと考えている。

この考えを具現化したのが「5Gトライアルサイト」であり、パートナーと開発した有望なサービスの一端を一般の人たちが体験できるようにしている。

今回の説明会では、この5Gトライアルサイトの取り組みを多くのドコモユーザーに広めるとともに、ドコモはビジネスパートナーを広く募っていることも同時に伝えたかったのではないだろうか。そのために女優の中条あやみさんが登場するCMを披露したり、フジテレビとの5Gに関する取り組みなどを発表するなど、5Gの説明に多くの時間を割いていた。

多くのメディアは新料金プランの狙いや意図、そして、新端末の紹介をメインにしている観が強い。地味すぎるがゆえに、目立ってほしいとも思えた今回の主役。「ドコモは5Gで頑張っています」をドコモは一番伝えたかったのではないだろうか。