【流通役員報酬ランキング】小売りトップはユニクロ2億円超

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■サラリーマン経営者としては例を見ない存在

セブン&アイ・ホールディングス(HD)の鈴木敏文最高経営責任者の退任については『図解! 業界地図2017年版』でも触れたが、同氏は高額の年俸を得ていたことでも知られる。年俸で鈴木氏に続く経営者は出てくるのだろうか。主な小売り各社の経営陣の懐具合を調べてみた。

鈴木氏の年俸は、2億円台での推移で、15年度は子会社のセブン−イレブン・ジャパンやイトーヨーカ堂などからの支給分を合わせて2億8200万円台だった。イオンの岡田元也グループCEOは、明らかになっている過去最高額は8400万円で、基本的には4000万円台での推移である。年俸では大差をつけていたわけだ。

鈴木氏はまた、書籍取り次ぎのトーハンからセブン&アイHDに移った転職組である。いわば、サラリーマン経営者だったが、所有する自社株を約500万株まで積み増した。1株配当金が85円だった15年度でいえば、4億3000万円の配当金を得ていたと推定される。サラリーマン経営者としては、他に例を見ない存在だった。

15年度において、高額な報酬を得ていた経営陣を見てみよう。

ファーストリテイリング柳井正会長兼社長の年俸は、2億4000万円だ。同氏は唯一の社内取締役であることから、平均額も同額で小売りトップである。

その柳井氏を上回るのは、日本調剤やヤマダ電機、ヤオコー、ニトリHDなどの創業オーナーである。三津原博日本調剤社長は7億3700万円、スーパーのヤオコーの川野幸夫会長は2億9100万円、家具のニトリHDの似鳥昭雄会長は2億4500万円である。ヤマダ電機は副会長は年俸1億8500万円だが、山田昇会長は3億2200万円だ。

2億円台で柳井氏に続くのは、ドラッグストアのマツモトキヨシHDの松本南海雄会長(2億1500万円)と、オフィス用品通販のアスクルの岩田彰一郎社長(2億1200万円)である。

年俸が1億円台の経営陣がいるのは、ドラッグストアではサンドラッグとツルハHD。コンビニのローソン、スーパーのイズミ、家電量販店のエディオン、ホームセンターのコーナン商事、100円ショップのセリア、バッグ販売のサマンサタバサジャパンリミテッドなどである。

■高額年俸の外国人経営幹部も急増中

平均額も見ておこう。15年度の平均額が前年度比で大きく上昇しているのは、アスクル、ニトリHD、イズミ、サンドラッグ、ツルハHD、松屋などだ。年俸1億円以上の経営陣の誕生や支給総額の増額があったためだ。丸井グループとイオンは、支給対象人員が減員になったことで平均額がアップした。

逆に14年度から大幅な減少になっているのは、ローソン、セリア、青山商事、クオール、ユナイテッドアローズ、コメリ、大塚家具、それにファミリーマートとユニー・ファミリーマートHDを結成したユニー・グループHDなどである。高額な年俸を得ていた経営トップの退任で支給総額が減少したことなどが要因だ。

青山商事は14年度には年俸1億円以上の取締役が2人いたが、15年度はいなくなったためにダウン。ホームセンターのコメリは、創業者に退職金を含め6億6800万円を支給したことで14年度は平均でも1億円を超えていたが、15年度はほぼ通常の平均額に戻っている。大塚家具も1億1000万円の年俸だった現社長の父親が社を去ったことで、平均額がダウン。セリアは15年度に1億円以上の経営陣が誕生したにもかかわらず、支給総額が減額になったことで平均額が100万円以上減額になった。

ところで、小売業で年俸トップは、セブン&アイHDの取締役だが、前述した鈴木氏でない。ジョセフ・マイケル・デピント取締役である。年俸額は、21億8700万円。そのほとんどは経営トップの座にある米国7-Elevenからの報酬であり、セブン&アイHDから受け取った報酬は1600万円にすぎない。イオンの場合も、年俸が1億円を超えている唯一の経営幹部は外国人である。

店舗の海外展開も目立つようになっており、小売業でも高額年俸の外国人経営幹部は増えてくるのは確実のようだ。

(ジャーナリスト 鎌田正文=文)