侍ジャパン・坂本勇人【写真:岩本健吾】

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侍打線はつながるのか、日本代表で求められる「チーム打撃」とは?

 3月の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)へ向けて、最後の調整を行っている野球日本代表「侍ジャパン」は、26日にKIRISHIMAサンマリン宮崎での4日間の強化合宿を打ち上げた。2017年の“初戦”となった25日の練習試合・ソフトバンク戦では打線が4安打に終わり、0-2で完封負け。本番へ向けて、やや不安を残す“初陣”となった。

 小技を絡めた「スモールベースボール」で第1、2回大会と世界一に輝き、第3回大会はベスト4に進出した日本。短期決戦では当然、「チームバッティング」が必要になってくる。では、各球団の主力選手が集まった代表チームにおいて、「チームバッティング」はどうあるべきなのか。

 稲葉篤紀打撃コーチは「あまり『つなぐ、つなぐ』という意識を持ちすぎて、小細工しすぎると、よくない。つながなきゃいけない場面は当然、出てくると思いますけど、基本的には自分の形で今までやってきた自分のバッティングをするというのが第一なので。そこをあまり変に小細工しすぎると、僕は良くないかなと思います」と言う。

 象徴的な場面として挙げたのが、ソフトバンク戦の初回1死二塁の坂本の打席だ。前を打つ菊池がセンター前ヒットで出ると、坂本は2球目をライトに打ち上げ、右飛に倒れた。

「サインがないときは自分の好きなバッティングすればいい」

「あれも『つなげよう』という逆方向への意識がありすぎて、どうしても自分のバッティングができていないというか、弱い打球になってしまっている。ああいうときは考えすぎないで、とにかく自分のバッティングをしっかりする。結果がどうであれ、そこが1番大事なんじゃないかと。

 つないでほしい時はつないでほしいというサインが出ますし、そういう指示も出ると思うので、あまり打席の中で『こうしたほうがいいかな。ああしたほうがいいかな』と考えるのはよくないと思います。サインがないときは自分の好きなバッティングすればいいのかなと」

 日本代表に入り、チームバッティングをしようとする意識が強すぎるあまり、持ち味が失われてしまうのは良くない。日本球界でトップクラスの打者が集まっているだけに、それぞれの特徴をしっかりと出すことが、何よりもチームのためになる。

 同じソフトバンク戦で、稲葉コーチが逆に「よし」としたのは、4回の場面。先頭の筒香が四球で出塁したが、続く中田は遊ゴロ併殺打に倒れた。

「あれはしょうがない。あそこで中田に『一二塁間を狙え』とか、そんなことはやらせないと思いますし、中田でゲッツーならしょうがないという感じで監督もサインを出してると思いますので。究極を言えば、本当にセカンドに送ってほしかったら、バント(のサイン)を出すんじゃないですか。監督は筒香と中田にバントのサインはないと言っているので、ないとは思いますけど」

「みんなが小さくなるっていうのが一番怖い」

 むしろ、同じような場面で中田に右打ちを求め、打撃が縮こまってしまう方が、チームにとっては痛い。坂本はこの日、中田、菊池、平田らとの居残り特打を行ったが、終了後には「(チーム打撃の意識は)しすぎると打撃が小さくなってしまうので、自分のスイングを第一にその中で色々な工夫をしていきたい」と話した。一方、山田は「(チーム打撃は)時と場合なので、なんとも言えないです。その時の状況次第ですね。(右打ちは)しないといけないところはしないといけない。場面によってくる」と言う。とにかく、「チームバッティング」を意識しすぎるのは逆効果と言えそうだ。

「とにかく自分のことを。今までやってきたことしか選手はできないので、それ以外のことをやってくれっていうのは、なかなか難しい。自分がやってきたスタイルで3月7日までに調子を上げてくれればいいのかなって。坂本選手も、つなげようという意識が強すぎて、だんだん打撃が小さくなってきているっていう話を、今日もちらっとしました。つなげようという気持ちはありがたいですけど、その気持ちが強すぎて、みんなが小さくなるっていうのが一番怖いなと思っているので、今日も坂本選手と話しながら、自分のスタイルで、もし進塁打とか送ってくれっていう時はサインが出るので、あまり小さくならずにやろうよって話はしました」

 稲葉コーチはこう強調した。まずは自分の持ち味を生かすことが、チームのためになる。そういう意味では、昨季リーグ最多の23犠打を決めながら、こちらもリーグ最多の181安打を放った菊池のような選手は、打線に欠かせない存在となりそうだ。侍打線はつながるのか。あと4度の強化試合でしっかりと形を作っていきたい。