「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「覚える」、「感覚」「覚悟」の「覚」。春眠暁を覚えず……と唱えつつ、ゆっくりと朝寝を楽しみたい季節にひもとく漢字です。



まず、「覚」という漢字の古い字体を見てみます。

かんむりの上にのっているカタカナの「ツ」に似た部分。

ここは、旧字体では学問の学(學)でも使われている形です。

ちょっと、「臼」という字を思い出してください。

それを縦半分に割って、その間にバツ印を二つはさみます。

これが「ツ」の部分。

これは「千木(ちぎ)」と呼ばれる交叉した木を屋根にのせた学び舎に、左右から人の手を添えた様子を描いたもの。

この部分は、教え子たちを導く教師の両手を意味しているといわれます。

そして、その下にある「見」という漢字。

これは「目」を強調した人間を横から見た姿を描いた象形文字で、目の前の対象をしっかりと見つめる行為を示しています。

いにしえの人々にとって「見る」という行為は、相手と心を通わせ、その働きを我が身に移しとること。

つまり「覚」という漢字が意味しているのは、学び舎で教師が手を使って実際にやってみせながら教えを授ける。

その姿をしかと見て生徒たちが真髄を学びとり、悟ること。

そこから「さとる、めざめる、おぼえる」という意味で使われるようになったのです。

それはまさに、すべて現場で伝え、実際に体験して身につけさせるという、教育の基本。

頭で知識を覚えるだけでなく、全身を使う学びは、記憶にしっかりと刻まれるのです。

ではここで、もう一度「覚」という字を感じてみてください。

学び舎で得た知識を本格的に実践するのは、卒業した後の話。

目が覚めるような思いをするのは、ここからです。

経験が浅ければ、当然、失敗もする。

でも、きちんとした理由のもとで叱られ、改めて指導を受けた体験は、強い記憶となって脳に深く刻みこまれるといいます。

挫折感や悔しさは、次の成功への大きな一歩。

それは、知識が生きた知恵へと変わってゆく過程になります。

何かと忙しい日々ですが、大人になった今、春雨の静けさに耳を済ませ、足元の花に触れ、星の動きに目を凝らす。

暮らしの中の小さな発見が、眠れるあなたの才能を目覚めさせてくれるかもしれません。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『上手な脳の使いかた』(岩田誠/著 岩波ジュニア新書)

3月4日の放送では「税」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。

<番組概要>

番組名:「感じて、漢字の世界」

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/



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聴取期限 2017年3月5日 AM 4:59 まで

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