大掃除に年賀状、正月飾りやおせちの用意と、この時期は「お正月」を迎えるにあたってやることが目白押し。そこで今回は、「お正月」を迎えるために知っておきたい耳よりな情報を、TOKYO FMの番組の中で専門家の方々に教えてもらいました。
(TOKYO FM「ピートのふしぎなガレージ」12月10日放送より)


明日誰かに話したくなる、「お正月」耳より情報!



◆「年賀状に新春と書く理由は……」
〜国立天文台 暦計算室長 片山真人さん


多くの文明では月の満ち欠けを基にした「太陰暦」が先に作られました。月の満ち欠けは見た目でわかりやすく、「月が満ちた日に会いましょう」なんて約束もしやすいですから。月の見える位置や時間も同じ周期で巡っていて、三日月の頃は夕方の西の空に見え、だんだん月が太っていくにつれて南へ移動し、満月になると夕方の東の空に上ってきます。そんなわかりやすい周期を昔の人は暦にしたのでしょう。

ただし月の満ち欠けは29.5日周期で、それを12回繰り返すと354日。つまり太陽を基準にした「太陽暦」と較べると、太陰暦は1年に11日ずつ早まっていくんです。そのままでは同じ月でも季節がどんどんズレてしまうので、3年で33日、つまり+1ヵ月を加える調整をします。厳密には「19年に7回」の調整を行うことで、ほぼ太陽暦と同じ周期になるんです。こんな調整を加えた「太陰太陽暦」が紀元前から各地で使われていました。

たとえば中国には「二十四節気」という考え方があります。昼と夜の長さが同じになる春分・秋分や、昼が一番短くなる冬至が今でも知られていますね。そのほかにも24の季節の節目を決めて、それに合わせて太陰暦を調整したんです。春分や冬至といった季節の節目は太陽の動き(天文学的に言えば地球の公転軌道上の位置)で決まりますから、太陰暦に太陽の動きを加えた太陰太陽暦だったんです。

現代もおなじみの太陽暦が使われるようになったのは紀元前45年の「ユリウス暦」からです。これは古代ローマのユリウス・カエサル(英語読みならジュリアス・シーザー)が定めた暦で、1年を365日とし、4年に1度のうるう年も盛り込まれています。

こんなふうに歴史的にはいろんな暦がありましたが、それぞれ1年の最初の日をどこに定めたかはさまざまです。ユリウス暦は冬至の近くでしたが、春分を始まりにしたところも多かったですし、中国や日本では立春の前後のいわゆる旧正月でした。日本は西洋式の暦を導入したときに伝統行事もそちらに合わせましたが、中国の旧正月のように暦は国際基準に合わせても伝統行事は昔のままという地域の方が多いと思います。

年賀状で「新春」と書くのは、昔は立春の前後がお正月だったので、文字通り「これから新しい春が始まる」という意味でした。その立春ですら「早すぎる」という声もありますが、今の暦で年賀状に新春と書くと、残念ながら実情とは大きくズレてしまっています。

◆「12月13日は正月事始めです」
〜日枝神社 広報課 波多野正紘さん


日本では12月13日からお正月の準備を始めるのが昔からの習わしで、これを「正月事始め」と言います。12月13日という日付は、かつて江戸城で大掃除が行われるのが毎年この日だったところから来ています。だから正月事始めも「すす払い」、今風に言えば大掃除から始まりました。

ただし、すす払いは単なる掃除ではなく神道の行事としての側面もあります。お正月に新しい年神様をお迎えするにあたって、神棚をキレイにしたり、家の中や外を掃除するという意味があるんです。もっとも、昔は12月13日に行われていたすす払いですが、それでは早すぎて年を越す前にまた汚れてしまうということで徐々に日程が下がってきて、今では年末の大掃除として行われるようになっています。

お正月といえば神棚や玄関のしめ縄を付け替えたり、門松や鏡餅などの正月飾りを準備するのも伝統的な行事ですが、こちらは「一夜飾りは良くない」と言われます。これは単純に「31日に飾って元日を迎えるのが良くない」という意味ではなく、正月事始めで半月以上かけてお正月の準備をするものなのに、年末のギリギリになってから慌てて準備を始めるのが良くないという意味です。もう少し余裕をもってお正月を迎える準備をしましょう。

お寺や神社では12月31日の夜にお籠もりをする「除夜詣(じょやもうで)」という習慣もありました。これはお祓いの一種で、大晦日にお寺や神社に籠もって体と心を清め、新しい年を迎えるという風習です。今ではそれがずれて、年が明けてからのお参りする「初詣」になりましたが、それが昔は年を越す前だったんです。神社によっては大きな行事の前に3日間とか1週間も籠もるところもあります。それくらい神道では言葉を慎み、肉食を避け、心と体をキレイに保つことが大切だとされます。

お正月は新しい暦の導入によって季節がずれてしまいましたが、実は節分は変わっていません。これはお正月が「暦の上での年の変わり目」で行われる行事なのに対し、節分は「一陽来復」といって、冬至で太陽の出ている時間がもっとも短くなったところから徐々にまた伸びてきて、ここからまた春に向かっていく「季節の変わり目」で行われる行事だからです。こんなふうにカレンダーで決まる行事と、季節感で決まっている行事があります。

◆「プロが教える大掃除のコツ」
〜日本清掃収納協会 会長 大津たまみさん


大掃除を始めるときは、まず外の光が入るかどうかを確認しましょう。玄関や窓ガラスなど、外の光がないと汚れがしっかり見えない場所は早めに済ませておくのが大掃除における順番のコツです。

掃除には「時間」「温度」「洗剤の濃度」「こする力」という4つの要素があります。この中で時間と温度を上手に使って掃除をすると、楽をして簡単に汚れがとれます。たとえば浸け置きをするなら、温度を高くすると汚れが落ちやすくなるんです。重曹も42℃のお湯を使ったホット重曹にするようにしましょう。

時間に関しては、たとえばスプレーで洗剤を吹きかけても、時間が経つと乾いてしまうケースがあります。そこで泡になっているタイプを使えば乾きにくく、洗剤が浸透する時間が長くなるので汚れが取れやすくなります。キッチンペーパーをこより状にして洗剤を染みこませ、汚れた部分に載せておくのも効果的です。

鏡のうろこが取れないと悩む人が多いのですが、これは中性洗剤やアルカリ性の洗剤を使っているからです。この場合に必要なのは酸性の洗剤なので、クエン酸を吹きかけた後、キッチンペーパーを貼り付けておくと落ちやすくなります。さらに歯磨き粉を研磨剤として使う手もあります。ただし鏡は傷つきやすいので、手につけてクルクルとこすり、こびりついた汚れをこそぎ落とすのだけに使って下さい。ジャガイモの皮の白い部分でこすってもデンプン質が汚れを落としてくれます。これはガラス製のコップにも応用できます。

使い古したボディタオルは網戸の掃除に使いましょう。網戸は濡らして洗うのではなく、乾いた状態のままボディタオルで軽くこすると汚れがポロポロと落ちます。最後にどうしても汚れが落ちないところだけ濡らして洗って下さい。

網戸に限らず、乾いた汚れはできるだけ乾いたまま取り除くのが掃除のコツです。ハンディタイプの掃除機を片手に持って、ハケで汚れを掻き出しながら吸い込んでいくのが一番キレイになります。これが私たち掃除のプロがキレイに仕上げる一番の秘訣なので、ぜひ試してみて下さい。

TOKYO FMの「ピートのふしぎなガレージ」は、《サーフィン》《俳句》《ラジコン》《釣り》《バーベキュー》などなど、さまざまな趣味と娯楽の奥深い世界をご紹介している番組。案内役は、街のはずれの洋館に住む宇宙人(!)のエヌ博士。彼のガレージをたまたま訪れた今どきの若者・新一クンと、その飼い猫のピートを時空を超える「便利カー」に乗せて、専門家による最新情報や、歴史に残るシーンを紹介します。

あなたの知的好奇心をくすぐる「ピートのふしぎなガレージ」。12月17日(土)の放送のテーマは《やきとり》。お聴き逃しなく!

<番組概要>
番組名:「ピートのふしぎなガレージ」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国37局ネット
放送日時:TOKYO FMは毎週土曜17:00〜17:50(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/garage