年末年始から正月にかけての時期は、忘年会から大晦日、元日のお祝いなど、ごちそうを食べる機会が増える。そして、年が明ければ、おせち料理にお雑煮、餅と、おいしいものが目白押しである。
この多分に太りそうな気配のある正月料理は、実に太りやすいのだという。
糖尿病治療を行う内科医の水野雅登先生に、正月はなぜ太りやすいのかを聞いてみた。

正月に太りやすい理由は?


「基本は『食べるから太る』です。餅やおせち料理の糖質が多い、が最大の原因でしょうね」

まず水野先生から返ってきたのは、この回答だった。
家で過ごすことが多い正月であるがゆえに、運動不足も多少影響はある。しかしやはり、食べることが大きな要因であるようだ。餅は糖質が多いイメージがあるが、おせち料理に糖質が多いとは意外だ。普通の食事より多いのだろうか。

「相当、糖質が多いです。保存のために濃い味付けになっています。おせち料理の成分表を見ると驚くかと思います。家で作るときも、砂糖を大量に入れて作ります。田作り、栗きんとん、蒲鉾、黒豆、などなど、全部、糖質山盛りです。
伊達巻きも、相当、糖質が入っていますし、昆布も昆布自体に糖質が多いのに、さらに砂糖を加えて作ります」

ここにお雑煮の餅が加われば、とてつもない事態になる。「糖質」という視点で考えるならば、元旦の食卓に並ぶものは、和やかにみえて、実は新年からやる気満々であったようだ。

おせち料理正月太りを防ぐための対策は?



しかしながら、正月は親戚との付き合いもあり、出されたおせち料理を食べないわけにはいかないシーンもある。また、主婦の立場ともなれば、家庭内で「自分は糖質控えたいから」と孤立してもいられない。
そこで水野先生に、この糖質の多いおせち料理への対処法を聞いてみた。

おせち料理は、基本、砂糖を大量に入れて作るので、ラカントなどに置き換えるといいでしょう。栗きんとん、昆布巻は、素材が糖質過多なので、避けて他の食材を使うなどするのがいい対策かと思います。蒲鉾は、糖質オフのものを買うか、ごく少量に。
おせち料理を買う場合は、糖質オフのものを選ぶとよさそうです」

糖質が多いものは、工夫して調理するのが良さそうだ。ところで、おせち料理の中でも糖質が少なそうな、紅白なますと数の子は食べても大丈夫なのだろうか。
「紅白なますは、大量摂取しなければOKです。数の子は、普通に食べても大丈夫ですね。」

なますには酢が入っているが、酢は血糖値の上昇をゆるやかにすると聞いたことがある。また、よく野菜を先に食べることでも、血糖値の上昇を防ぐことができると聞く。
おせち料理を食べるときにも、これらは有効なのだろうか?

「酢や野菜先食べは、多少、血糖値の上昇を緩やかにはします。でも、緩やかになるだけで、吸収はされるので、糖質量が多ければ太ります」

結論として、正月料理への対策は以下の通りになった。

・絶対に太りたくない人は、おせち料理や餅を食べない。(もしくは食べた分を消費する)
おせち料理を食べなくてはならない場合、少量、もしくは紅白なますや数の子などを選んで食べる。
おせち料理を自作する場合は、砂糖をラカントに替える、もしくは、糖質オフおせちを購入する。
・糖質の多いものは、少量に留め、酢の活用や野菜の先食べを実施し、血糖値の急上昇を防ぐ

ぜひ来年の正月は、おせち料理を賢く制覇して、正月太りを回避しよう。
(石原亜香利)

取材協力/水野 雅登(みずの まさと)先生
1977年愛知県生まれ。1997年杏林大学医学部医学科入学。卒業後、同院高齢医学科に所属。東京警察病院を経て、2006年より友愛病院に勤務し、2007年より副院長就任。2015年より講演活動を開始。講演会の様子をYouTubeにアップしている。両親とも糖尿病家系で、精力的に糖尿病治療に取り組む。100単位に及ぶインスリン注射も不要となった実績を持ち、関東一円から外来患者が訪れている。
http://www.mizuno.tokyo/