いよいよファイナル! 太田基裕&井澤勇貴が誘う『Club SLAZY』の世界へ
“ファイナル”の知らせに一抹の寂しさを覚えつつ、太田基裕も井澤勇貴も、寂寥とは別に心の内からわきあがる熱いものを感じていた。「これぞ『Club SLAZY』だなって思います」――そう口を揃える。2013年から、『Another world』を含め、これまで5作が上演されてきた人気舞台が12月の『Club SLAZY The Final invitation 〜Garnet〜』でシリーズ最終章を迎える。ラストショーを前に、シリーズを支えてきたふたりが本作の魅力を語り尽くす!

撮影/祭貴義道 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.



現LAZY集結! シリーズ最終章への想いとは



――本日は、『Club SLAZY』ファンのみなさんに珠玉のナンバーや名シーンを楽しんでいただくフェスイベント『Club SLAZY Song Collection Screen LIVE』の会場にお邪魔して、イベントの合間にお話を伺っています。ちなみに、こちらの場所ですが、なんと…。

太田 池袋サンシャイン劇場ですよ!
井澤 贅沢すぎますよね(笑)。普段、芝居の公演で満員にしたくてもなかなかできないこともあるのに…。
太田 実際、本当に埋まるのか不安でしたけど…。支えてくださるファンの方々がここまで増えたのかと感慨深いですね。1作目の公演は新宿フェイスでライブハウスの規模からのスタートでした。 それがイベントをサンシャインで行うことができるのは本当にスゴいことだと思います。
井澤 ホント、感慨深いです。

――こちらのイベントで、次作の『Club SLAZY The Final invitation 〜Garnet〜』でシリーズ最終章を迎えることが発表されます。ファンにとっては“悲報”かと思いますが…。

太田 そうですね。ただ、僕は最後だから寂しいってよりは…いや、寂しい気持ちはもちろんありますけど、それ以上にどういうメンバーでやるのか? ということが気になってました。初演のメンバーの多くが集まるので、「これぞ『Club SLAZY』!」という最後が迎えられそうだなと思ってます。寂しい?
井澤 いや、まったく同じ気持ち。もちろん、寂しさがないわけじゃないけど。最初、続編があるなんて考えずに、とにかく必死でそれが『2』につながって、『3』、『4』、『Another world』とどんどん大きくなって…。『ファイナル』で、みんなと一緒に舞台に立てるのがうれしい。『Club SLAZY』らしいよね? 新宿フェイスで『1』をやったときの感覚を思い出してます。


▲太田基裕


▲井澤勇貴


――第1作『Club SLAZY』は2013年でした。

太田 さっきも言いましたけど、ライブハウスですよ。ミュージカル要素はあるけど、いかにもって感じの“ザ・ミュージカル!”でもないし、お客さんと歌うようなライブっぽいところもあったり。こちらも「どうなるのかな?」という感じだったし、お客さんもどう臨めばいいのか? とうかがうような感じだったと思う。

――大都会の片隅に存在し、選ばれたお客様だけがその場所を見つけられると言われる「Club SLAZY」。そこで歌い、踊る美しき男たちによる物語に、多くの観客が魅了されました!

太田 僕が演じたBloomや勇貴のEnd、会場をにぎわせるCoolBeans(米原幸佑)…。個々のキャラクターの持ち味をお客さんも僕らも少しずつ、一緒に理解していった部分もあったよね。



井澤 独特の世界観で、テンポも速いし、これをお客さんがどう受け止めるのか? 受け入れてもらえるのか? 不安はあったけど、意外と反応がよくて、その空気に助けられてどんどん乗っていくことができました。作品としての成長をお客さんと共有してる感覚が、他の作品よりも強い!

――シリーズとしての成長という意味で面白いのは、おふたりとも全作品に出演されているわけではないという点。BloomやEndが不在のまま、物語は進むし、そこにいない人間の意外な過去や真実が暴露されたりもして…。

太田 「ステージには出なくても生きているんだな」って。裏には存在している設定なんです。
井澤 制作陣の優しさを感じます。僕は『1』と『3』には出てるんだけど、自分が出てない『4』を見に行ったら、Endは謹慎処分で監禁されてました(笑)。Odds(藤田 玲)が猫アレルギーだと知らずに、猫を持ってきたことが原因で…。そこで初めて知ったんですけど(笑)。
太田 でも、初めて知るエピソードが、「え! こんなこと!?」ということだったりもする(笑)。そういうのがツボなんですよね。かわいいなぁって親近感がわいてくる。





――それぞれ演じられたBloomとEndの成長や変化は感じますか?

太田 そこは実はあまり感じない。キャラクターの根本はあまり変わってないなと思うんです。
井澤 全然、変わってない。
太田 新たな情報がどんどんプラスされていくのは事実なんですけど、不思議なことにそこで根本がぶれないんですよ。
井澤 だから、自分が出ていようがいまいが、違和感がないんだよね、いつ戻っても。
太田 (脚本の)伊勢直弘さんと(脚本・演出の)三浦 香さんが、キャラクターをしっかりと考え抜いているからだと思います。特別なエピソードはいっぱいあるので、それで深みは増すけど、“変わる”というのとは違う。もともとあった本質が、公になったかどうかという違いだけ。





自らの実体験を再現…地獄のレッスン!?



――最初からきっちりと世界観が構築されていたんですね。

太田 自分で言うのもなんだけど、そこであの独特の世界観をきっちりと固めた初演のメンバーってスゴいよね(笑)。
井澤 俺は“地獄の1日”があったからね…(苦笑)。

――地獄の1日?

井澤 1作目の稽古最終日の前日かな? 急に三浦さんから「Endできてないぞ。バックボーンをちゃんと作れ!」と言われたんですよ。「いまから、共演者の中から恋人役をひとり選んで、実体験を演じてみろ!」と…(苦笑)。
太田 急だったなぁ…(笑)。
井澤 こっちは「えっ? えっ?」って感じだけど「(相手役は)誰がいい?」って聞かれて。そのとき残っていたのはもっくんかフッキーさん(藤原祐規)しかいなくて、三浦さんが「もっくんかフッキーか…」って言う「フ」のところで「も、もっくんでお願いします!」って(笑)。





――その場で太田さんを相手役にして、“恋愛のエチュード”を…?

井澤 ガチで自分の恋愛体験談ですよ! その流れが実際、初登場シーンで活きてるんだよね(笑)。新たな扉を開けたというか、洗礼を受けたような感覚というか…。

――しかも稽古最終日の前日?

太田 必死だったよね。でも正直、シチュエーションとしては面白いじゃないですか? 第三者としては「おいおい、どうなる?」って楽しみつつ(笑)。三浦さんも、言うタイミングも含めて絶対に少しは心のどこかで楽しんでたよね?
井澤 実際、ちょっと笑ってたもんね!(笑) すべてが終わったら、三浦さんと「実はあのときは…」って話をしたいな。

――太田さんはBloom役に関して苦労は?

井澤 最初からできてたもんね?
太田 できてないよ!(笑) 楽曲は難しいし、周りのみんなのポテンシャルは高いし、すごく苦労しましたよ。ただ、さっきの勇貴の話もそうだけど、周りがいつも支えてくれたってのはある。直接、何かを言わずとも、みんなで作り上げてたよね。

――先ほどから「独特」という言葉が出てきますが、世界観は独特でも、役者が要求されることは歌にダンスに芝居での深い感情表現と、ある意味で正統派と言える要素ですね。

太田 独特だけど王道。そしてなじみやすい! この独特の世界に対して、親近感を抱いてもらわないと成り立たなかったし。
井澤 役者に要求されるひとつひとつの要素のレベルの高さはもちろん、物語の質も高いなと感じます。たとえば、それぞれのキャラクターの抱えるドラマや謎が必ずどこかできちんと回収される。パズルのピースがキレイにハマっていくような、洗練されたおしゃれさを持ってると思います。