目の前には、天本の大将。カウンター8席しかない客席にいささか緊張してしまう。静かな店内に響く「あずささん、よろしくお願いします 」の一声により、天本劇場が幕を開ける。滅多にお寿司を食べることのない所謂一見さんの私にも、優しく丁寧な対応で迎え入れてくれた。南青山「海味」で9年の修行を経て、滋賀の「しのはら」や京都の「祇園 さヽ木 」で和食を学んできたという大将。凄いお店に来てしまった、一瞬でそう思った。

新感覚、酢飯を使った焼きリゾット

目の前で酢飯を混ぜて、殻の中に戻す。そこから調理場の真ん中にある焼き台の上で焼き始める。「今日はいつもと違った感じにしてみます」と大将。
そんなチャレンジ精神から仕上がった焼きウニのリゾットは、濃厚なウニと温かい酢飯との相性が抜群。すべて計算されて作られているかのような完璧さがある。まさに、ウニ好きな私にはたまらない一品。今も脳裏に焼きついて離れない。

大きさと厚さに圧巻!の巨大鮑

この鮑を獲る事が出来る海女さんは、たった3人しか存在しないという、希少な代物。この大きな鮑の入った皿を前に出し、笑顔で快く写真撮影に応じてくれる。みなカメラを手に大喜び!
鮑はというと、厚みがあり、旨みも濃い。もちろん味は絶品。希少な鮑だというのに、あっという間に完食。

艶の良い縞鯵の握り

見た目からも分かるように、鯵はぷりぷりで歯応えが良い。赤酢の利いた、少し硬めの酢飯と合って美味しい。シャリも食べやすい大きさ。しばし口福感で満たされる。

淡い色合いがとても綺麗な春子の握り。

酢で締めてあって、ふっくらとした身が印象的。とても美味しい。春子、鯛に似ているなとおもったら真鯛の幼魚の総称とのこと。無知な私は後ほど知ることに…後悔の念に駆られる。 次回はもっと勉強してから伺おうとつくづく反省。

私の大好きな肉山の光山さんが紹介されている、「東麻布 天本」さん。今回ご縁があって、開店前から予約待ちという噂の新店に伺うことが出来たが、なんと次の予約は来年とのこと。それも納得、私達客を魅了し楽しませようというパフォーマンス、そしてつまみと握りどちらも全く手を抜かず全てにおいて全身全霊、一人でその仕事をこなしている大将。居心地の良い店の空間、感動の天本劇場は何時間居ても苦にならない。また直ぐにでも行きたいが、予約が取れたのはだいぶ先。それでもまた伺いたいとこれだけ強く思う店は初めてだ。再訪が楽しみで仕方ない。