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●楽天がネットラジオ配信プラットフォーマーに
楽天がインターネットラジオ配信プラットフォーム「Rakuten.FM」を立ち上げた。コンテンツプロバイダーを広く募って音楽番組やトーク番組などを配信し、将来的には広告を入れることで収益化を図るという。ネットの音声広告市場が成熟していない日本で、同サービスはビジネスとして成立するのだろうか。

○20局のネットラジオステーションが集結

Rakuten.FMはPCやスマートフォンなどのウェブブラウザで聴くことができるネットラジオ配信サービス。楽天が用意したスマホ用アプリでも聴取可能だ。開始時のコンテンツプロバイダー(ネットラジオ局)は計20局だが、順次拡大していく予定だという。放送している内容は幅広く、音楽のジャンルだけでもダンスミュージック、ポップス、ロック、ハワイアン、クラシックと多彩だ。

楽天は自身もネットラジオ局「クリムゾンエフエム(Crimson FM)」を立ち上げ、放送を始めている。同局の運営では、エフエム東京グループのTOKYO SMARTCAST、ジャパンエフエムネットワーク、VVJ(ライツ管理会社)と協力する。クリムゾンエフエムはエフエム東京が立ち上げたデジタル放送「i-dio」でも同時放送している。

○日本に残された音声広告市場というフロンティア

Rakuten.FMに参画するネットラジオ局は、このプラットフォームを通じて自らが制作した音声コンテンツを配信できる。楽天は参画するネットラジオ局に対し、将来的に広告配信などによる収益獲得の機会を提供する予定。広告収入をネットラジオ局と分け合うことで楽天は同サービスをマネタイズする。

ネットラジオの収益化を図るには、聴取を有料とするか、音声広告を挿入するのが一般的。Rakuten.FMは無料放送であるため、マネタイズするには広告が不可欠となる。海外ではネット上の音声広告が一般化しており、米国ではネットラジオを含めたラジオ広告市場が1兆円を超える規模に成長しているというが、日本ではこのような市場がほとんど育っていない。楽天が挑戦しようとしているのは、日本のネット上に残された未開拓市場だということができる。

●広告だけではない収益化への道
Rakuten.FMを広告収入だけで収益化するのが理想だろうが、日本では前例のない取り組みであるため、成功の確率は未知数というほかない。海外のネットラジオは、リスナーの属性に合わせたコマーシャルを配信できる「ターゲティング広告」の技術を活用しているが、日本では同技術に取り組む企業が出始めたばかり。この技術を使う予定があるかどうか楽天に問い合わせてみたが、回答は得られなかった。

○ネットラジオが楽天の玄関に?

ネットラジオの配信プラットフォーマーになろうとする楽天は、同社の他の事業とネットラジオを結びつけるような将来像を思い描いていないのだろうか。楽天が手掛ける幅広いビジネスのなかには、ネットラジオと親和性の高そうなものも存在する。例えば音楽を流しているネットラジオと「楽天チケット」を連携させることができれば、Rakuten.FMを聴いて興味を持ったアーティストのライブに足を運ぶリスナーを獲得できそうだ。CDやDVDなどの販売につなげることも可能だろう。

ネットラジオ配信プラットフォーマーとして広告収入で稼ぐ方法と、同サービスを玄関口としてCD・DVDの販売・レンタルやチケット販売などに結び付ける方法。Rakuten.FMでは2通りのビジネスモデルが考えられる。楽天の広報は「本サービスは、広告ビジネスです」と明確に答えているが、同サービスに大勢のリスナーが集まれば、広告以外にも収益化の道が開けることは間違いない。まずは楽天が広告収入による収益化に成功できるかどうかに注目したいが、将来的なビジネスの広がりにも目を配っておく必要があるだろう。

(藤田真吾)