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賃貸物件の退居通知。多くは退去希望日から1カ月前の予告と定めているが、稀に2カ月前というケースもある。失念していると退居時に思わぬ痛手を被る「2カ月前退居通知」の落とし穴。実際に痛手を被った筆者の経験をふまえ、ここに注意を喚起したい。

新旧住居の契約が重複し、家賃をダブルで払うことも……

賃貸物件間の引越しにあたっては、当然ながら旧居を引き払う必要がある。(新居契約のタイミングに合わせ)退居の1カ月前に通知すればいいやとのんきに構えていたところ、実際の規定は2カ月前だったために新旧住居の契約期間が重複。1カ月分の家賃をダブルで支払うハメになった。そんな泣くに泣けない事例もあるようだ。まあ、それは筆者のことなのだが。

改めて旧居の契約書を確認すると、なるほど確かに「解約予告は2カ月前」と記されている。しかし、どこか釈然としない……。なぜなら、過去10年間で6回転居しているが、これまでの物件は全て1カ月前通知だったからだ。

こうした「解約予告2カ月前」の物件(以下、2カ月前物件)は、どの程度存在するのだろうか? 賃貸管理会社ウィルステージの志村晃芳氏に聞いた。

「感覚値ですが、全体の2割程度ではないでしょうか。こうした解約予告にまつわる定めについては契約時に不動産会社から説明されているはずですが、入居時点で退居のことを気にする人は少ないと思います。ですから、いざ退居の段になって『聞いてない』とトラブルになるケースも少なくないですね。なかには理想の新居が見つかった後でそれが発覚し、契約の重複を避けるために泣く泣く引越しを断念したお客さまもいらっしゃいました」

契約の際には退居告知のタイミングについてもしっかり確認を

もちろん、そもそも契約内容をしっかり把握していればそんな悲劇を招くこともなかった。だが、レアケースゆえ、だまし討ちに遭ったようなモヤモヤがどうしてもぬぐえない。今後のため、2カ月前物件の傾向などがあればぜひ知っておきたい。

敷金礼金がかからない『ゼロゼロ物件』や、入居当初の家賃が無料になるフリーレント物件は特に注意すべきかもしれません。初期費用を軽減し入居しやすい印象を与える一方で、退去のハードルを上げ、出づらくしている可能性があります。お得なように見せかけ、退居コストで相殺するというのは常とう手段のひとつですから。募集時に解約予告期間が表示されている物件は少ないので注意が必要です」(志村氏)

なお、「聞いてない」とゴネたところで、訴えが認められる例はほぼないという。

「“恩情”が出ることは稀ですね。大手の場合、融通がききにくいのでまず難しいでしょう。地場の不動産会社が扱っている物件なら、時期によって臨機応変に1カ月分ディスカウントしてくれるかもしれませんが……」(同)

ちなみに筆者の場合、新居も「2カ月前物件」だった。志村さんのいう2割のケースにたまたま当たったのか、それともこうした物件が増えているのか……。
いずれにせよ、契約の際には退居告知のタイミングについてもしっかり確認しておいたほうがよさそうだ。

●取材協力
有限会社ウィルステージ