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●業績振るわないTwitter
140文字でコミュニケーションする人気の「Twitter」だが、ここ最近業績が振るわないなど、元気がない様子ばかりが伝わってくる。日本では依然として人気を獲得しているTwitterだが、そのアイデンティティというべき140文字の制限を撤廃するのではないかという噂が流れるほど、大きなテコ入れが求められているようだ。一世を風靡したTwitterが、なぜここまで調子を落としているのだろうか。

○日本では人気だが業績も利用者数も伸び悩み

140文字という短い文章制限の中で思ったことをつぶやき、コミュニケーションできることが人気を博しているTwitter。2006年のサービス開始以降急速に人気を高め、昨年末時点では月間アクティブユーザー数(MAU)が世界3億2000万、日本でも3500万に達するなど、今なお非常に多くのユーザーを抱える人気のコミュニケーションサービスとして知られている。

災害時の利活用が注目されるほか、芸能人・著名人のツイートが話題となるなど、今なおTwitterは多くの人に利用されている。それゆえ一見すると、Twitterは順調に成長しているように見えるのだが、そのTwitterを運営する米ツイッターの業績を見ると、決して好調とはいえない状況が続いており、明るい話題を耳にすることはない。

ツイッターの売上自体は伸びており、2016年度第1四半期の売上高は前年同期比36%増の5億9450ドルに達している。だがその伸びは業績を大きく改善するほどには伸びておらず、純損益は長い間赤字が続いている。同四半期の純損失は7973万ドル(約89億円)に達しており、決して業績が芳しいとはいえない状況だ。

そして、ツイッターにとってより深刻なのは、Twitterの月間アクティブユーザー数の伸び悩みだ。実際、同四半期のMAUは3億1000万と、こちらも3億前後で横ばい傾向が続いている。Twitterは広告を主体としたビジネスを展開しているだけに、ユーザー数の増加は単なる人気の指標を示すだけでなく、売上にも大きく影響してくるものだ。それだけに、赤字が続くTwitterの利用者数が伸び悩んでいることは、赤字が改善する可能性が低いことも示しており、ツイッターのビジネスそのものの見直しが求められていることが分かる。

だが、先にも触れた通りTwitterの利用は、日本では人気が継続しており、利用者が減少している様子も特段感じられない。Twitter利用の初期を支えたITリテラシーの高いユーザー層だけでなく、学生を主体とした若い世代もTwitterを積極的に利用しており、友達とのコミュニケーションなどに活用されているようだ。にもかかわらず、Twitterがこれほどまでに苦戦しているのには、どのような理由があるのだろうか。

●Twitterを苦戦させる2つの要因
○スマートフォン時代の新サービスが台頭

その大きな要因となるのは、世界的なスマートフォンシフトだ。Twitterが登場した2006年当時、インターネットの利用はパソコンが主体だった。だがそれから10年が経過した現在、インターネット利用の主体はスマートフォンであり、スマートフォンへのシフトがコミュニケーションのあり方に大きな変化をもたらしたのである。

1つはコミュニケーションのあり方が、よりクローズドで細分化された形へと変化したこと。Twitterは登場当初"ミニブログ"という呼び方がなされていたように、多くの人に情報を発信するブログの延長線上にあるサービスとして展開されてきた。それゆえオープンな場で議論を好む人たちが、Twitterを積極的に利用することで、利用が広がった経緯がある。

だがスマートフォンによって、インターネットの利用がより大衆化されたことから、幅広い人たちと議論をするよりも、近くの友人と日常的なコミュニケーションをすることが重視されるようになった。そこで台頭してきたのが、日本でいえばLINE、海外であればWhatsApp MessengerやWeChatなどのメッセンジャーアプリであり、知り合いだけのクローズドな空間で、リアルタイムにコミュニケーションができることから人気を博すに至っている。

そしてもう1つは、コミュニケーション自体のあり方の変化だ。Twitterは短い文章とはいえ、テキストを主体としてコミュニケーションするスタイルをとっている。キーボードが備わったパソコンであれば文字入力に苦はないが、スマートフォンではパソコンよりも文字入力がしづらいのに加え、カメラを標準で備えていることから、写真や動画による、より手軽なコミュニケーションの利用が拡大する傾向にある。

それを象徴しているのが、写真を通じてコミュニケーションする「Instagram」の人気だ。Instagramは登場した当初、写真好きが利用するアプリとして知られていたが、Facebookなど既存のコミュニケーションサービスで、大人世代との接触を好まない若い世代が、写真を活用して気軽にコミュニケーションできるツールとして活用することで爆発的に広まった。最近では日本でも若い世代を主体に利用が広まっており、スマートフォンの利用に積極的な世代の心をつかんでいることが分かる。

クローズドと写真という2つのコミュニケーションを合わせる形で、海外では10秒で投稿した写真が消える「SnapChat」も、若い世代から支持を得て人気となっている。日本では熱心な利用者を獲得したことで若い世代からも支持を獲得しているが、そうした国は比較的稀なこと。多くの国では、スマートフォン時代の新しいコミュニケーションサービスに押される形で、Twitterの利用が減少傾向にあるのだ。

●求められる新たな施策
○既存ユーザーの壁を越えて新たな施策が打ち出せるか

Twitterの利用の落ち込みという課題に対して、ツイッター側もさまざまな取り組みで利用の回復に向けた取り組みを進めている。特に、ツイッターの創設者であるジャック・ドーシー氏が2015年10月にCEOへと復帰して以降、同年8月にはダイレクトメッセージの文字数を140文字から10000文字に拡大したほか、今年2月には重要だと思われるツイートをタイムラインの上部に表示するなど、さまざまな改変がなされている。

また今年1月には、ダイレクトメッセージだけでなく、ツイートできる文字数を10000文字に拡大するという報道がなされ、それに応える形でドーシー氏が、長文の画像を用いて文字数拡張の可能性を示したこともあった。この試みは、ユーザーの反発を受けて実現には至っていないが、140文字ルールを若干緩和する方針が5月24日に発表された。今後も利用を拡大するため、さらに改変を加える可能性は十分考えられそうだ。

また、ツイッターはTwitter単体だけでなく、6秒の動画を再生できる「Vine」を2012年に、そして動画のライブ配信サービス「Periscope」を今年3月に買収するなど、利用が高まっている動画のコミュニケーション拡大も進めている。最近ではこれらのサービスと、Twitterを積極的に連携させる取り組みを進めていることから、今後ツイッターはユーザーの幅を拡大するため、文字だけでなく動画を主体としたコミュニケーションの取り組みを増やしていくとも考えられる。

少なくとも現在のTwitterのスタイルを維持しているだけでは、スマートフォン時代に登場した新しいサービスに押される形で、利用者数が頭打ちの状況が続くことは明白となっている。だが一方で、現状のTwitterを好んで利用しているコアユーザーも少なくなく、安易な改変は一層のユーザー流出へとつながる可能性もある。既存ユーザーを満足させながら、新しい取り組みを進めることは容易ではないだけに、ドーシー氏の手腕が大きく問われるところではないだろうか。

(佐野正弘)