FIFA理事会の12月3日の夜明け前には、北中米カリブ海サッカー連盟のアウィ会長(左)や南米サッカー連盟のナポウ会長(右)など関係者16人が逮捕された。(C)Getty Images

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 役員らの収賄疑惑に揺れながら、組織改革を試みているFIFA(国際サッカー連盟)。その改革案を検討する12月の理事会当日に幹部役員に新たな逮捕者が発生する。その数日後には、ジョセフ・ブラッターFIFA会長とミシェル・プラティニ同副会長が絡んだ不正疑惑究明について新たな文書が発覚したと、欧州メディアが報じた。一連のFIFAスキャンダルは、新たな展開を迎えている。
 
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 今年二度目の逮捕劇は、12月3日の夜明け前。理事会のためにスイス・チューリヒのホテルに宿泊していた現職のFIFA副会長2人ら中南米の役員数名が、米国司法当局の要請を受けたスイス当局によって身柄を拘束された。今回起訴されたのは彼らを含めて総勢16名で、アメリカ大陸の大会のテレビ放映権やマーケティングに絡んだ贈収賄の容疑だ。
 
 同様の逮捕劇は今年5月下旬のFIFA総会直前にもあり、FIFA役員7人がチューリヒで拘束され、他2人のFIFA役員と5人のスポーツ関係者とともに贈収賄や資金洗浄などの容疑で米国司法省に起訴された。それが一連の疑惑調査と組織改革に拍車をかける形になったという経緯がある。これまでの賄賂の総額は、米国司法省によると1991年から現在までの間で総額2億米ドル(約240億円)を超えるという。
 
 今回逮捕・起訴された副会長の2人は、CONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)会長で元ホンジュラス・サッカー連盟会長のアルフレド・アウィ氏と、CONMEBOL(南米サッカー連盟)会長で元パラグアイ・サッカー協会会長のファン・アンペル・ナポウ氏だ。
 
 驚くのは今回の逮捕者にFIFAのTV&マーケティング委員会という利権に絡む部署以外に、規律委員会やフェアプレー&社会責任委員会、監査&法令順守委員会という、監督・監査の責務を担う部署の現職メンバーが含まれていること。これではFIFAの改革も、その信憑性や正当性が疑われても仕方がない有り様だ。
 
 また、逮捕者の中にはCBF(ブラジル・サッカー連盟)の元会長リカルド・テイシェイラ氏、元グアテマラ・サッカー連盟会長のラファエル・サルグエロ氏という2人の元FIFA理事も含まれており、さらには11月26日に突然FIFA理事を辞任したCBF会長のマルコポーロ・デ・ネロ氏の名前もある。中南米を中心にした汚職文化の根深さが感じられる。
 
 ロレッタ・リンチ米国司法長官は「信頼への裏切りは言語道断。はっきり言っておくが、いま隠れている者も我々の追求から絶対に逃れられない」と強調。さらなる逮捕者が出る可能性を示唆している。
 一方、早朝の逮捕劇で理事2人を欠きながら、理事会は予定通り12月2〜3日に行われ、独立性を持つFIFA改革委員会から提出された改革最終案のほぼ全容が全会一致で承認された。来年2月の臨時総会で審議の上、正式決定する。
 
 承認されたのは、権力の分散を図った理事会の再編と政策業務を主とする役割の変更をはじめ、最大3期12年とする会長任期、理事の増員、役員報酬の公表、各種委員会数の縮小、各大陸連盟から最低一人の女性理事の選出など。しかし、会長と理事の74歳定年導入は見送られた。
 
 改革委員会のフランソワ・カラール委員長は、「35歳でもできない者はできない」と年齢が問題ではないとし、「新しい時代を始めるうえで、非常に重要な一歩を踏み出した」と理事会の決定を評価。同案作成に協力したFIFA監査・法令順守委員会のドメニコ・スカーラ委員長も、「重要なのは任期。改革案承認に満足している。FIFAのリーダーシップが変わるという良いサインだ」と進展を歓迎した。
 
 改革案の一環としては、ワールドカップ出場国増(2026年大会から現行32から40へ)も提案されが、承認は見送られ、2月の臨時総会まで継続検討とされた。理事からは増枠による競技の質低下や運営負担などが問われており、報道陣からも増枠の妥当性や必然性を問う声が相次いでいる。