コーヒーを楽しめば健康効果も得られる

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コーヒーの健康効果は知られているが、このところ海外では、乳がんや大腸がんといった個別のがんの死亡、再発リスク低下にコーヒーが関係していることを確認する研究が次々と発表されている。

1日2杯以上で乳がんが小さく、4杯で大腸がん死亡リスクが低下

コーヒーの健康効果を示唆する研究は、過去5年以内に発表された論文だけでも「肝硬変発症リスクの低下」「うつ、自殺リスクの低下」「2型糖尿病発症リスクの低下」「アルツハイマーの発症を遅らせる」など、多数存在する。

個別の疾患への効果だけではない。2012年には米国立がん研究所が、米国在住の40万人を13年間にわたって追跡調査した結果、1日4〜5杯飲んでいる人は全死亡リスク(あらゆる死因を含めたリスク)が男性で12%、女性で16%低下したと発表。さらに、2015年5月には日本の国立がんセンターが40〜69歳の男女約9万人を対象にコーヒーと全死亡リスク、がん、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクとの関連をそれぞれ分析し、がん以外は3〜4杯でリスク低下が最も大きくなっていると発表した。

さすがのコーヒーも、がんにまで健康効果は及ばないかと思われた。しかし、今年に入って、すでにがんを発症している患者がコーヒーを飲むことで死亡リスクや再発リスクが低下したことを確認した研究が次々と発表されているのだ。

まず、スウェーデンのルンド大学の研究チームが2015年4月に、米国癌学会誌「Clinical Cancer Research」オンライン版で1090人の乳がん患者のデータを分析し、コーヒーの摂取量と乳がんの関係を調査した結果を発表している。これによると、コーヒーを1日2杯以上飲む乳がん患者女性は、0〜1杯の女性に比べ乳がんの大きさが小さく、再発リスクも49%低下したという。

さらに、8月には米カリフォルニア大学の研究チームが、ステージ3(中程度まで進行した状態)で手術と化学療法を受けた大腸がん患者953人を対象に追跡調査を実施。コーヒーや紅茶の摂取量とその後の経過を分析したところ、1日4杯以上のコーヒーを飲んでいた患者は、まったく飲んでいない患者と比べて死亡リスクが52%、再発リスクが34%低下していたと、米国臨床腫瘍学会誌「Journal of Clinical Oncology」オンライン版で発表している。

治療薬になるわけではない

ルンド大学の研究では培養したがん細胞にコーヒーを投与し、どの成分が作用していたのかまで調査をおこなっている。この調査によると、カフェインががん細胞を増殖させる物質の生成を抑え、コーヒーの香りや色のもととなっているコーヒー酸ががん細胞そのものの増殖を抑えていたという。

カリフォルニア大学は成分の特定まではしていないものの、ハーブティーや紅茶、デカフェ(カフェイン抜き)のコーヒーを飲んでいた患者ではリスク低下が確認できなかったとしている。こうした結果を踏まえると、カフェインやコーヒー酸などに何らかの健康効果があると考えられる。

もちろん、がんになった際の健康状態や治療の効果の影響なども考える必要があるため、コーヒーが治療薬になるわけではない。[監修:渡邊昌彦 北里大学医学部外科学教授・北里研究所病院副院長・日本内視鏡外科学会副理事長]

参考論文
Caffeine and Caffeic Acid Inhibit Growth and Modify Estrogen Receptor and Insulin-like Growth Factor I Receptor Levels in Human Breast Cancer.
DOI:10.1158/1078-0432.CCR-14-1748 PMID: 25691730

Coffee Intake, Recurrence, and Mortality in Stage III Colon Cancer: Results From CALGB 89803 (Alliance).
DOI:10.1200/JCO.2015.61.5062 PMID: 26282659

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