高橋「押し入れが、ドラえもんがいなくなっちゃったみたいにポッカリ空いて……悲しかったですね」

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今も昔も小学生の男子たちを熱くしてくれる漫画雑誌「コロコロコミック」が好きすぎることでお馴染みの芸人・キングオブコメディの高橋健一とともに「コロコロコミック」「コロコロアニキ」編集部に潜入するべく小学館さんまで向かったものの、part1は高橋さんのコロコロ愛が炸裂しすぎ&しゃべりすぎにつき、編集部にたどり着く前に、まさかのスペースが尽きてしまいました。

気を取り直してのpart2は、ついに編集部に突入し「コロコロコミック」「コロコロアニキ」の編集者にして、のむらしんぼ先生が「コロコロコミック」創刊当時の思い出を描いた漫画『コロコロ創刊伝説』の担当でもある石井宏一さんに話を伺った!



「コロコロコミック」こそが僕らの雑誌だ!


高橋 ああーっ、あの石井記者!


石井 最近よくいわれます(笑)。僕は36歳なんで創刊当時に編集部にいたわけではないんですけど「コロコロアニキ」で、のむらしんぼ先生の『コロコロ創刊伝説』を担当しているので、当時の話は色々と聞いていますから、何でも聞いてください!

高橋 それじゃ、のむら先生の借金の件なんですけど……。

石井 その辺はちょっと(笑)。

高橋 あ、やめときましょう(笑)。

──高橋さんがコロコロを読みはじめたのは、わりと創刊してすぐくらいの時期なんですよね。

高橋 そうですね、まだ藤子不二雄先生の漫画の割合がメチャクチャ多かった時代です。

石井 当時『ドラえもん』がものすごく人気があったので、創刊号はほとんど『ドラえもん』増刊号という感じでしたよね。「週刊少年サンデー」や「週刊少年マガジン」といった、少年漫画週刊誌や青年漫画が盛り上がっていた時期なので、子ども向けの児童漫画というのが少なくなっていて、漫画家さんも編集者もやりたがらなかったんですよ。

高橋 それはやっぱり「児童漫画なんて……」と下に見られていたということなんですか?

石井 うーん、残念ながら、そういう面もあったと思います。

高橋 逆に、僕も小学生時代からジャンプやマガジンをチラチラ読んではいましたけど、やっぱりちょっと大人の読み物という感じがしましたね。「コロコロコミック」こそが僕らの雑誌だと! また、他の雑誌と比べてページ数がすごく多かったのも嬉しかったです。最初は500ページくらいだったのが、600ページになり、700ページになり……。

石井 コンスタントにこれだけのボリュームでやっている雑誌はなかなかないと思いますよ。ちなみに今月号は776ページですから!

高橋 まだ増えているんだ、スゲエ! 次号予告でも「来月号は○○ページ!」みたいな感じで、ページ数を盛り上がりのバロメーターとしてものすごく押していたんですよ。当時「コミックボンボン」と「100てんコミック」という子ども向けの漫画雑誌があったんですが、その中で「コロコロが一番厚い!」というのは誇らしかったです。


──高橋さんお得意の「ページ数が多い方が得!」という理屈ですね。

高橋 コロコロって基本的に発売日は毎月15日ですけど、時々13日になったり14日になったりすることがありますよね?

石井 ああ、15日が日曜日だったりすると繰り上がるんですよ。

高橋 なるほど。そういうのが子どもだから分からなくて、とにかく次の号を一番最初に買いたかったから、カレンダーに「来月は13日発売」とか丸をつけていましたもん。一緒にコロコロを買っていた三上くんという友達と、発売日になると「今日は何があっても怒れませんなぁ〜」とかいって、学校が終わったらすぐに本屋まで走っていました!

石井 それは嬉しいですねー。僕も子どもの頃、そんな感じだったからすごく分かります!


──コロコロはこの厚さとともに、少年誌よりひと回り小さいサイズも特徴的ですよね。

石井 その昔……戦前の話ですが、「少年少女譚海」という児童誌があって、それが当時、この判型だったらしいんです。今はお亡くなりになっている初代の千葉編集長が、子どもの頃に読んでいたそうなんですけど、「子どもが手に取りやすいサイズ」ということで同じサイズに決まったらしいです。あとは、ランドセルに入るようなサイズというのもあったんでしょうね。

高橋 このサイズでこの厚さだからこそ、「雑誌が立つ」というのが嬉しくって! 僕は押し入れの中に本を並べていたんですけど、自立する雑誌なんて他になかったですからね。ジャンプとかだと倒れちゃうんですよ。コロコロをズラーッと並べて、ロゴの色の変遷を眺めるのがすごく好きでした。

藤子キャラはシルエットだけでも誰だか分かる


高橋 コロコロの表紙で印象的なのが、藤子不二雄先生のキャラクターだけ線が太いところですね。『ゲームセンターあらし』とか、他の漫画は普通に細い線なんですけど、『ドラえもん』はやけにクッキリと太い線なんですよ。あれはやっぱり意識的にやっていたんですか?


石井 そこは「ドラえもんの雑誌なんだぞ」というのをハッキリ伝えようという意図があったと思います。それにキャラクターデザイン的にも、これだけパーツが少ないのにどのキャラクターか分かるっていうのはなかなかないんですよ。他のキャラクターだと、線を太くすると成立しなくなっちゃいますから。

高橋 ああー、藤子先生のキャラクターってどれも無駄がないデザインですからね。

石井 それは「コロコロコミック」の伝統として、新人漫画家さんたちにも「藤子先生のキャラクターくらい、シンプルでも伝わるデザイン性を追求していきたいですね」といっています。たとえば、この『100%パスカル先生』って、パッと「目」だけ見ても、シルエットだけ見てもパスカル先生だって分かるじゃないですか。


高橋 そうですね! ボクらの世代だと片倉陽二先生の『アカンベー』(宇宙マクラという設定)なんかも、シルエットを見るとそのまんま枕だからすぐ分かりますもんね。

石井 そういうところは児童漫画にとって……特にギャグ漫画に関してはすごく大事な要素だと思いますね。

高橋 デザインの話でいうと、コロコロのマスコットキャラクターの「コロドラゴン」もシルエットだけで分かる、かなり特徴的なデザインですよね。僕、コロコロのマスコットが「コロドラゴン」に変わったタイミングを鮮烈に覚えているんですよ。創刊号からしばらくは「コロちゃん」っていうマスコットキャラクターだったのに、それが突然いなくなっちゃって……。

石井 「コロちゃん」は、わりと……味のあるデザインですよね……(笑)。コロコロしているから「コロちゃん」だったんだとは思いますけど。調べてみてわかったんですが、コロドラゴンと同じデザイナーさんが手がけたようです。実は。

高橋 藤子キャラっぽいデザインですけど、子ども心に「ちょっと違うな」とは思っていました。でも、まさかいなくなっちゃうとは思わなかったですよ!



キングオブコメディのルーツは……


──いまだに表紙には必ずドラえもんが入っていますけど、その辺もルールとして決まっているんですか?


石井 ルールというか「当然あるべき」という考えですね。コロコロの表紙にドラえもんなしというのはちょっと考えられないです。だから、そこを変える気はまったくありません。

高橋 さすがに最近はあまり読んでいないんですけど、本屋に行ってチラッとコロコロを見かけた時に、表紙にドラえもんがいるのを確認すると、すごく安心しますよ。

石井 編集している僕らからしても心強いものがありますね。ドラえもんっていまだにすごく人気があるんですよ。これだけ新しい漫画が載っていても、再録の『ドラえもん』も人気があったりしますから。

高橋 昔は『ドラえもん』の扉ページの「藤子不二雄」という表記の前に「笑いの王様」とか「まんがの王様」みたいなキャッチフレーズがついていましたよね? だから子どもの頃、漫画を描く時には必ず「笑いの王様・高橋健一」と書いていたんです。考えてみたら、今、芸人になってコンビ名が「キングオブコメディ」ですから、訳すと「笑いの王様」なんですよ!


──おおーっ、コンビ名のルーツが藤子不二雄だったと!?

高橋 ところで、こういうキャッチフレーズって、誰が決めているんですか?

石井 これは担当編集が、その月々のテンションを反映させて決めていますね。

高橋 ああ、今もちゃんと残っているんですね。「ギャグ王・沢田ユキオ」とか「孤高のギャグモンスター・穴久保幸作」とか(笑)。



石井 こういうところもコロコロらしさですよね。

高橋 「辛いことは堪え忍ぶ・村瀬範行」ってすごいですね! 『ゾゾゾゾンビーくん』に至っては「不死身!!・ながとしやすなり」って書いてありますよ(笑)。ゾンビーくんは確かに不死身かもしれないですけど、ながとしやすなり先生は不死身じゃないでしょう!



「小学生男子」がターゲット


高橋 表紙もかなり密度が詰まっていますけど、企画ページのレイアウトなんかも相当ゴチャゴチャしていて、そこがコロコロらしいですよね。

石井 そうですね(笑)。大人からすると「ゴチャゴチャしてて読むの面倒臭いな」って思われてしまうかもしれないですけど、シンプルにまとめちゃうのではなく、元気が良くて勢いのあるレイアウトというのは心がけています。

高橋 子どもの頃は、ページが読みにくければ読みにくいほど嬉しかったですもん。なんたってこっちは1ヵ月間読みまくりますからね。ゴチャゴチャしていると、読み直す度に新たな発見があるんですよ。


石井 ビジュアルがバーンとあって、見出しがしっかりあると、多少ゴチャゴチャしていても読んでもらえる……というようなノウハウはもちろんあるんですが、さっきのキャッチフレーズにしてもそうですけど、読みやすさ以上に、いかに隅々まで楽しませるかというのは重視していますね。

──1ヶ月間何度も読み返すだけに、漫画も基本的に1話完結になっていますよね。

石井 ストーリー漫画など、一応話が続いているものもありますけど、それでも1話は1話としてある程度話をまとめてもらうようにしています。子どもって、先月の事を覚えていないかもしれないし、いきなりある号から読みはじめても楽しめる……というのは、どの漫画家さんも意識していると思います。

高橋 確かに、コロコロに慣れていたんで、ジャンプやマガジンを読むと、毎回モヤモヤするところで終わっちゃうから気持ち悪かったですよ。

石井 毎回引きを作って、ずっと決着がつかなかったり(笑)。

高橋 だから「コロコロはなんて読みやすいんだ」と思っていましたね。

石井 それと、他の少年誌・青年誌の場合は、雑誌より単行本になった時に楽しめる場合が多いんですけど、コロコロの場合はなるべく雑誌単体で完結して楽しめるようにしているんですよね。

高橋 なるほど! もちろん『ドラえもん』や『ゲームセンターあらし』の単行本は買っていましたけど、とても全部は買えないから、「だったらコロコロを捨てずにとっておいた方が得だ」とは思っていましたね。

──コロコロを全部とっておけば単行本を買わなくてもいいとう。

高橋 それが、中学生の終わりか高校生のはじめ頃に全部捨てられちゃったんです……。押し入れが、ドラえもんがいなくなっちゃったみたいにポッカリ空いて……悲しかったですね。


石井 まあ、大人になってまでコロコロをとってある人ってあまりいないですからね。とにかくかさばるんで。それに、ある段階で「コロコロってダサイな」って思って卒業していっちゃうんですよ。

高橋 あんなに好きだったのに、中学生くらいになると色気づいてそう思っちゃいますよね。

石井 読者の数も、中学生になるとグッと減りますね。だからターゲットは本当に「小学生」なんです。普通だと「女性にもアピールしてみよう」とか「もっと上の世代も読めるものにしよう」とか考えてしまいがちなんですけど、そこで「小学生の男子」と絞り込むことによって、漫画家さんも漫画を作りやすいですし、だからこそ小学生に熱烈に支持されているのかなと思います。

高橋 小学生の短い期間だけ読まれる雑誌なんですね。だから、コロコロの話をしていても、世代によってまったくイメージするものが違いますよね。

石井 僕の時はミニ四駆でしたし、もうちょっと前になるとラジコンやチョロQ。今で言うとベイブレードとか妖怪ウォッチとか……。

高橋 僕、若手芸人といいながら45歳なんで、僕が読んでた頃のコロコロの話が通じるのが中堅以上の大御所の芸人さんしかいないんですよ。


──普通、のむらしんぼ先生といったら『つるピカハゲ丸くん』ですけど、高橋さんは『とどろけ!一番』だっていいますからね。

石井 なるほど(笑)。

──ところで、高橋さんはコロコロの読者投稿ページに採用されたことがあるらしいんですよ。

石井 どんな投稿なんですか?

高橋 『キンタマン』の顔をまんじゅうに見立てた「キンタマンじゅう」っていうネタと、『怪物くん』がクルクルパッて顔を変身するとハガキになっているというネタですね。

石井 それじゃあ、高橋さんが読んでいた頃のバックナンバーを持ってきますよ。高橋さんの投稿を探してみましょう。

高橋 ええーっ!? いいんですか?

なんと、思い出の「コロコロコミック」バックナンバーを見せてもらえることに。果たして高橋の投稿は見つかるのか!?

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(北村ヂン)


昨年、誕生した“大人のコロコロコミック”「コロコロアニキ」は、 ただいま第3号が発売中! のむらしんぼ先生の「コロコロ創刊伝説」をはじめ、 武井宏之先生の「ハイパーダッシュ!四駆郎」や、こしたてつひろ先生の「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」、 それに「あまいぞ!男吾」や「かっとばせ!キヨハラくん」など全てが完全新作で大集結! くわしくは特設サイトをチェック!

キングオブコメディ高橋健一プロフィール