©2015「リアル鬼ごっこ」学級委員会

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今年は園子温監督の映画が続々と公開される。新宿・歌舞伎町が舞台の『新宿スワン』、完全無欠のファンタジー映画『ラブ&ピース』に続いて、現在上映中なのが『リアル鬼ごっこ』だ。今作の「鬼」のターゲットはJK(女子高生)だが、果たして本当に恐れるべきものは「鬼」なのだろうか?

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「観客が期待する園子温が出せた」園版『リアル鬼ごっこ』

この作品は、いい意味で見る人の予想を裏切った『ラブ&ピース』と異なり、「みんなが僕に求めているもの、期待している園子温を出せた」映画だと監督は語っている。

グロテスクな場面はもちろん、逃げるJKのパンチラシーンも26回出てくる。しかもこれまで映画化された『リアル鬼ごっこ』とは異なり、原作は読まずにタイトルにインスパイアされた内容を映像化した、園監督のオリジナル映画である。

トリプルヒロインのトリンドル玲奈、篠田麻里子、真野恵里菜を始めとするJKたちが、文字通り命からがら「鬼」から逃げ続けるのだが、そこにはウソのない「友情」も描かれている。

3人のヒロインたちは、心から信じあえる友人と出会い、彼女たちに助けられ、守られながら走る。時には笑顔で手をつないで、そして時には必死の形相で。
そこには各々の個性を受け入れ、リアルに人と人とがつながる様子が見えてくる。

グロテスクな中にもリアルな人と人とのつながりが描かれた作品

さて、今回の『リアル鬼ごっこ』では、JKを対象とした試写会でアンケートを取っている。映画の感想としては「グロテスク」や「怖い」といった、映像に対する反応が多かった。また、最近学校で流行っていることについても聞いており、動画を撮ってSNSにアップする、アプリのゲームなど、ネット関係のものが大半だった。

ここから見えてくるのは、「物事へのかかわり」の度合いである。ビジュアルへの感想は想定内だが、中には「友情の大切さを知った」というものもあった。今はSNSがコミュニケーションツールとして重要視される時代。直接的な関わり合いで友情をはぐくむのは難しいのかもしれない。

ちなみに、全国の女子中高生を対象としたアンケートでは、「信頼できる友だち」だと思っていた相手に裏切られた経験があるという答えが、回答者の半数以上というものもあった。そして急に無視されたり、グループからハブられたりするのだそうだ。

もちろん、すべてのJKがこれに当てはまるわけではないが、これらのアンケートから感じるのは、目の前の一瞬に反応し、それがすべてとして決めつけてしまう、人や物事へのかかわり度合いの希薄さだ。

そんな時代の中で『リアル鬼ごっこ』では、自分を犠牲にしてでも友だちを助けようという人と人とのつながりを、グロテスクなシーンの中にもしっかり見せてくれている。これを前後の流れと関係なく、映像だけに反応して気づかないままいるのはもったいない。

トリプルヒロインが思わず涙したほどの「本気」と向き合え!

「女子高生」と呼ばれていたころから、JKはオトナから見ると特殊な存在だったのかもしれないが、今はネットの発達と急速な広がりの中で、分かりにくさを秘めている気がする。表向きは友だちの顔をしていても、本当はどう思われているのか。裏表がありそうな、なさそうな…。

そう考えると、本当に怖いのはもしかしたら「鬼」ではなく、「JK」?という気もしてくる。

公開初日舞台挨拶では、ヒロインの3人が皆、エンドロールで涙目になっていたそうだ。トリンドル玲奈は「もっとパッションを!」と言われ、死ぬ気で努力したと話している。また、篠田麻里子はアクションシーンにも挑戦。最近、園作品への出演が続いている真野恵里菜は、この作品では体力の限界まで走り抜いたということだ。

トリプルヒロインが思わず涙するほどウソ偽りのない本気で取り組み、さらにリアルな人と人とのつながりも描いている『リアル鬼ごっこ』。JKの皆さん、そして最近、人間関係が希薄だと感じる皆さん、まずはこの作品と向き合ってみては?

『リアル鬼ごっこ』
現在 全国ロードショー!
配給: 松竹、アスミック・エース