連続テレビ小説「まれ」オリジナルサウンドトラック2 音楽 澤野弘之 SMR
7月15日発売予定

写真拡大

朝ドラ「まれ」(NHK 月〜土 朝8時〜)7月10日(金)放送 第15週「下克上駄菓子ケーキ」第89話より。脚本:篠崎絵里子(崎の大は立) 演出:渡辺一貴

希(土屋太鳳)と大悟(小日向文世)のケーキをロベール幸枝(草笛光子)が
食べ比べた結果、大悟のケーキのクオリティーはひじょうに高く、希のケーキは「未熟 まったく未熟 とことん未熟」と手厳しい評価でした。
その未熟さが一般受けするのだ、と幸枝。
例えるなら、高級フレンチ(大悟のケーキ)と茶漬け(希のケーキ)。
輪子(りょう)や美南(中村ゆりか)が調子にのって、安いチョコや駄菓子のほうが好きとか言いだして、大悟の機嫌を損ねます。
船越英一郎演じる榊原の妻も駄菓子が大好きで、だから希に頼んだのだと言い、いっそのこといちごのショートケーキ(フランス菓子にはないジャンル)をつくってほしいとまで。
いや、いいんですよ、希の個性が庶民的な駄菓子でも全然。
だーけーどー 
だったら、希が大悟のケーキが好きで、なにがなんでもこの店で働きたいと希求した意味がわからないし、榊原もマ・シェリ・シュ・シュに頼まなくていいではないですか、横浜にはいっぱいケーキショップがあるだろうから。
希が浅はかな直感娘であるにしても、言動に根拠なさ過ぎ、かなあ・・・と。
榊原はブランド志向であるから高級フランス菓子店に頼んでしまったのかもしれないし、輪子と美南が大悟と趣味が合わなくても家族だからがまんしてつきあっていたっていうこともありそうな話だとは思うのですが、希の言動にはどうにもこうにも違和感を覚えてしまうのです。
違和感やひっかかりも大事ですけど、この不安定さは、見る人を選ぶと思います。ドラマ自体は庶民的な茶漬けではなく、通な高級フレンチです。
朝15分の短い食事時間では喉につかえて消化もなかなかできません。

希の都合よい言動を


89話の終わりで、希は「自分がつくりたいケーキと 食べる人が喜ぶケーキは同じなのか」と前進してきた足をふと止めます。
やりたいことと求められることが違うという現実は、誰もが通る道。このドラマは、希が「本当の私」(主題歌の歌詞にあるやつ)をみつけていく物語で、おりにつけ、希が他人のためにがんばるタイプだということが描かれているので、彼女の「本当の私」とは、たとえ大悟や幸枝に否定されても、食べたひとが笑顔になることを目指す私であることを描きたいのだろうということは想像に難くありません。ただ、その流れにするために、周囲が希の都合よい言動をしてしまい過ぎる。
もしかして、希が導かれているのは、大悟いわく「小憎らしい人形」のキッチンウィッチの魔法だっていうエクスキューズなんでしょうか。
そのうち、魔女がヒロインの朝ドラも登場したりして。
(木俣冬)

エキレビ!にて月〜土まで好評連載中! 木俣冬の日刊「まれ」ビュー全話分はこちらから

いまひとつ視聴率が伸びないが、奮闘は讃えたい。NHK朝ドラ「まれ」おさらい(54話までを総括))