「マッドマックス 怒りのデス・ロード」ワーナー・ブラザース映画提供
6.20より全国ロードショー公開

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とうとうこの日がやってきた。『マッドマックス』が帰ってきた!

待望のシリーズ4作目『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が、いよいよ6月20日から全国公開される。期待値マックスで待ちわびている皆さん、アクセル全開で映画館に駆けつけるがよい。その価値は十分にある!

すでに30年も経っちゃったのだ


ここで簡単におさらい。1作目『マッドマックス』が日本で公開されたのは1979年。まだ映画にCGなんか取り入れられていない時代。極悪暴走族に妻子を殺された警察官マックスの復讐物語を生のアクションで見事に描き、世界中で大ヒットを記録した。

前作公開から3年後の1981年、2作目の『マッドマックス2』が登場。今度は世界大戦によって文明の崩壊した世界が舞台に。石油の精製所とそれを狙う暴走族、そしてその戦いに巻き込まれるマックス。半裸にホッケーマスクのヒューマンガスなど、一層狂気を増した敵キャラクターの造形が注目を集め、シリーズではこの作品を最高傑作として挙げるファンも多い。

3作目は1985年公開の『マッドマックス/サンダードーム』。ここにきて初めてアメリカ資本が入ったためか、ティナ・ターナーのスター映画のような側面もあって印象が薄い。シリーズの熱烈なファンほど積極的に記憶から消そうとしているフシがある。

というわけで、いま何年? 2015年! そう、『マッドマックス』の火が消えてからすでに30年も経っちゃったのだ。監督、何やってんだよ! と怒ってはいけない。監督ジョージ・ミラーはずっと作りたかったのだ。自分の手で新たな『マッドマックス』を。

しかし、企画を立てては頓挫し、立てては頓挫し、を繰り返してきた。現実の戦争による政情不安がアフリカロケに支障をきたした。撮影予定地の砂漠が15年に一度しか降らない雨でお花畑になったりもした。マックス役のメル・ギブソンが降板してしまった。ずっと一緒にシリーズを育ててきた盟友のプロデューサー、バイロン・ケネディが事故で亡くなっていたことも影響しただろう。

それでも監督は成し遂げたのだ。妻子を奪われてもなお立ち上がったマックスのように。

死の追跡ロードが始まる


タイトルは10年前からすでに決まっていた。『マッドマックス 怒りのデスロード(現題はMad Max: Fury Road)』。舞台は同じく荒廃した世界。今作の敵となるイモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン:1作目のトーカッター役!)は、水源を有する砦で飲料水を人質に民衆を働かせ、自動車崇拝教のような集団を形成していた。

映画が始まると、見慣れたうしろ姿。マックス(トム・ハーディ)登場だ。と、そこに武装車両に乗り込んだ集団がやって来る。愛車のV8インターセプターを奪われたうえ、捕らえられてしまうマックス。砦から脱出するのは容易ではない。そのとき、イモータン・ジョーからの信頼が厚かった大隊長フュリオサ(シャーリーズ・セロン)が、ジョーの5人の妻を連れて逃亡したとの知らせが入る。激怒したジョーは大部隊を率いて追跡にかかる。マックスは、放射能の影響で常に輸血が必要な若き戦士ニュークスの献血バッグとして点滴パイプでつながれたまま、暴走車両のフロントに縛り付けられる。そうして死の追跡ロードが始まるのだ!

ここまでが公開された予告編の内容。あの予告編があまりにすごすぎたのでみんな興奮したわけだが、あれはまだまだプロローグみたいなもんだ。ここから先の展開がさらにその100倍すごい!

なにしろ登場する改造車がいちいち狂ってる。安全性も燃費も車検も陽炎の彼方に吹っ飛ばしたようなクルマが、砂塵を蹴立てて爆走する。追いつ、抜かれつ、激突する。ジョーの配下であるウォーボーイズたちは、命を捧げることこそ尊いと信じているため、死を恐れず突っ込んでくる。爆発と火炎と血飛沫。

戦意を高揚させるためだけの車両が存在するって、何事だろう。「ドゥーフ・ワゴン」と名付けられたそれは、90年代にオーストラリアで流行したパーティスタイル(荒野に巨大なサウンドシステムを設置して重低音で音楽を流す)のドゥーフ(Doof)からヒントを得て作られたという。トラックの背面には太鼓部隊が張り付き、ドンドコドンドコと殺しのリズムを叩き付ける。車両の前面にはギタリストがぶらさがり、メタルなフレーズをかきむしる。ギターヘッドからは火炎放射。バカだ、バカすぎる……。
現在でもDoofは開催されている。

かなり危険なシーンばかりが続く『マッドマックス 怒りのデス・ロード』だが、ほとんどが実写と人間によるライブ撮影で、CGでの加工はほとんど使用していないという。ってことは、CGはフュリオサ(シャーリーズ・セロン)の左手を消しことぐらいにしか使っていないわけだ。無茶するな〜。しかし、そんな1作目からの伝統をちゃんと踏襲しているところにもグッときてしまう。

それが『マッドマックス』というものだ


レビューの最初で、ぼくは「『マッドマックス』が帰ってきた」と書いた。普通なら「マックスが帰ってきた!」と書くところだろう。けれど、あえてそうしなかった。なぜなら、『マッドマックス』シリーズは、よくあるヒーロー映画のように主人公の活躍を楽しむことだけが目的の映画ではないからだ。主人公マックスはもちろんのこと、敵キャラクターの造形、数々の改造車、そして暴力に支配された“世界そのもの”を楽しむ。それが『マッドマックス』というものだ。

もういちど繰り返す。6月20日からいよいよ全国公開だ。30年の時を経て帰ってきた新たな『マッドマックス』ワールドを、存分に楽しんでほしい。

最後に余談を。主演のマックスとフュリオサそれぞれのスタントを演じた俳優のダン・グラントとダイナが、ナミブ砂漠での過酷な撮影に挑むうち愛し合うようになり、ついに結婚したのだという。現在は生後14ヵ月の男の子まで授かっているらしいよ。なんという運命の巡り合わせだろう。コンチクショー、幸せのウェディングロードを歩みやがれ!
(とみさわ昭仁)