春日部共栄vs埼玉栄
高野凌治（春日部共栄）
春日部共栄vs埼玉栄と埼玉県の高校野球を知る方ならば、おっと思わせる好カードが2回戦で実現した。埼玉栄は昨年まで九州国際大付で監督をしていた若生氏が就任。再び埼玉の頂点を狙おうと強化を始めたのだ。またこの日は平日ながら埼玉栄はブラスバンド、チアリーダーも動員するなど夏さながらの応援態勢に、野球部に対する期待度の高さがうかがえた。
近年、浦和学院、花咲徳栄、春日部共栄、聖望学園、川越東の5つの私学が埼玉をリードしてきたが、埼玉栄がその5強に加わる存在となるか、それとも春日部共栄が強さを発揮するのか。注目の一戦となった。
いきなり試合は動き、埼玉栄の1番持木幹太（3年）は左中間を破る三塁打を放ち、無死三塁のピンチに立たされた。高野は、「なんとしても先制点は取られたくなかったので、全力投球でいきました」と、ストレートで押していき、2番神保 翔（3年）を見逃し三振に打ち取ると、3番秋山 凌（3年）を二飛に打ち取り、4番黒澤 俊幸（3年）を一ゴロに打ち取り、ピンチを切り抜けた。
試合は3回裏、春日部共栄が9番磯田 歩甫（2年）の二塁打、1番関谷 将貴（2年）の敵失で無死一、二塁のチャンスを作り、2番早坂 倖太（3年）の犠打で一死二、三塁のチャンスを作り、3番桑原 寛の犠飛、4番高野の適時打で2点を先制。さらに5回裏、二死一塁から5番鈴木新太郎（3年）の適時三塁打、さらにバッテリーミスで1点を追加し、4対0とリードする。
ここまで春日部共栄が相手のミスを逃さず、先制し、さらには二死から2点を奪うなど、相手チームにとってはダメージを与えるような点である。
2番手・出井敏博（埼玉栄）
投げてはエース・高野が要所を締める投球。コンパクトなテイクバックから投げ込む速球は、130キロ前半の速球、スライダー、チェンジアップ、カーブをテンポよく投げ分ける投球。去年まで野手としての出場が中心。秋からエースとして投げるようになったが、秋までは力任せで投げることが多かった。この冬は「一試合通して投げられるスタミナと、連投しても完投できるスタミナ作りと力配分すること」を意識して取り組んできた。
力配分を意識した投球で、埼玉栄打線に安打を打たれながらも要所を抑えていく。そして9回も、一死一塁から併殺に打ち取り、6安打完封勝利で3回戦進出を決めた。
本多監督は、「コントロールがまだまだですね。今日の投球は65点」と厳しかったが、やはりさらに高いレベルを求めるとなるとまだまだと考えているのだろう。去年まで野手中心で投げていた選手が、これほどまとまりのある投球ができる。そしてクイック、フィールディングも実に軽快。細部まで鍛えられていると伺える投手であった。
野手については、昨年の正遊撃手・清水 頌太が左手の骨折のため、ベンチ外。攻撃も、守備の中心であった清水の離脱はかなり大きく、必死にやりくりしている状況のようだ。また昨秋は8強で敗れたため、経験値が少ない。春季大会期間中は、多くの選手に経験値を積ませ、夏につなげていきたいと語る春日部共栄の本多監督。夏へ向けて着々とチームを強化を行っているように感じた。
敗れた埼玉栄だが、若生監督を夏へ向けてさらに仕上げていくだろう。キーマンとなりそうなのはエースの出井 敏博（3年）。手足が長く、すらっとした投手体型から常時120キロ後半の速球、キレのあるスライダー、カーブをテンポよく投げ分ける右腕。まだ体の芯が弱いように感じたが、夏へ向けて逞しさが出てくれば、面白い投手に成長するのは間違いない。
（文＝河嶋 宗一）
