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○結婚するための驚愕の条件

「猫を捨ててこい。そしたら結婚してやる」。

プロポーズされた後、相手が放った一言がそれだった。0.000056秒で怒りのあまり全身の血液が沸騰した。

誰が捨てるか。ふざけるなよ。うちの子を捨てるくらいなら何のためらいもなくお前を捨てるわ。月曜の朝8時に間に合うよう燃えるゴミの日に憎悪を込めて出してやろうか?命を何だと思ってる。私はうちの猫を幸せにするためだけに生きている。うちの子のご飯代を稼ぐために働き、うちの子の喜ぶ顔が見たくて何時間もかけてオモチャを選び、うちの子が健康に長生きするために日々身体チェックを欠かさないでいる。うちの子を捨てるくらいなら結婚なんか一生しなくていい。

○猫を飼っている女は婚期が遅れる?

「猫を飼っている女は婚期が遅れる」とよく聞く。その背景には色々な事情があるのだろう。猫が可愛すぎて恋愛に興味を持てずにいたり、相手が猫アレルギーで結婚をあきらめたり、愛猫との時間を優先しパートナーとの時間を作れずにいたり……。私の場合は、「猫を捨てろ」と言われて激昂し、逆に相手を捨ててしまったことが婚期が遅れた原因だ。

今、「婚期が遅れた」と書いたが、特に結婚願望があったわけではなかった。子供のころから結婚に対する憧れがひどく薄かった。結婚に関しては、「別にこの人がいなくても私は一人で生きていけるけど、一緒にいると幸せだから一緒にいたい」と思える人がいたら一緒にいよう、と思っていた程度だ。相手に依存するのも苦手だし、相手に依存されることに依存するのも苦手だ。私が「この人だ!」と思える人がいなければ、気ままに独身生活を謳歌し続けるつもりだった。天使のようにかわいらしいうちの猫と、あとキンキンに冷えたビールがあれば、ただそれだけで十分私の人生は満ち足りているのだ。あとネットがあれば嬉しい。あ、あとフカフカの布団。あとできれば低反発の枕もあると嬉しい。あとDSかPS Vitaがあると嬉しい。

○まさか自分が捨てられるとは思っていなかったらしい

当時お付き合いしていた殿方は、かなりの長身(たしか182cmくらい)だったので、会わせるとうちの猫がおびえてしまっていた。大きいものが動くとうちの子はひどく怖がるのだ。なので極力会わせないようにしていた。そのこともあってか、相手の殿方は私が心から猫を愛していることをあまり理解していなかったようだ。

「いや、猫を捨てるくらいならアンタを捨てるわ」と私が言い放った瞬間、ものすごい驚愕の表情をしていた。まさか自分が捨てられるとは思っていなかったらしい。どこにそんな自信があったのか今でも不思議で仕方がない。

もちろん、大好きな人と結婚するために、どうしても、どうしても愛猫を手放さなければならないこともあるだろう。身近な人たちを振り返っても、何人かそういう人たちがいた。事情があるのだし、実際その人たちの愛猫は無事に新しい家族が見つかって今も幸せに暮らしている。新しくできた優しい家族の元で、全力で可愛がられている猫を見ると私まで幸せな気持ちになる。

ただ、私は無理だった。うちの子と離れ離れになるくらいなら死んだほうがマシだ。猫を捨てるのが結婚の条件なら、むしろ相手を捨ててやる。微塵の躊躇もなく。一片の後悔も無く。なぜなら私はうちの子を愛してやまないからだ。

「猫を飼っている女は婚期が遅れる」という巷のウワサ。私の場合は、このような理由から「ああ、本当なのかもしれないな」と思ったのだった(続く)。

○プロフィール

うだま猫好きの独身アラサー。猫の漫画や日常の漫画をよく書く。猫ブログ「ツンギレ猫の日常-Number40」は毎朝7時30分に更新している。ツイッターでは常に猫への愛を叫び続けている。下ネタツイートは最近控えるようにしている。

○マイナビニュースでの連載

・1コマ漫画 「独身アラサー女にありがちなこと」・1コマ漫画 「猫にありがちなこと」・8コマ漫画つきコラム 「猫マンガ家の日常」・漫画付きエッセイ 「猫なんか、二度と飼うもんか」

(うだま)