国際法的には解決している問題を、国内裁判で勝手に裁き直す――法治国家とは思えないお粗末な法廷が隣国でまかり通っている。大マスコミが報じない日韓の大問題を、産経新聞ソウル駐在特別記者の黒田勝弘氏が緊急レポートする。

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 先月、韓国の最高裁は、戦時中に韓国人(朝鮮人)を労働者として使った日本企業に対して、元労働者たちが未払い賃金などを個人補償要求することを認める判決を出した。

 韓国人労働者は、戦時中の国民総動員下で日本に渡航・就労し“徴用工”といわれた。そして、戦後は受け取っていなかった賃金などの支払いを求め、訴訟を繰り返してきた。

 過去、日韓の裁判所は「補償問題は国交正常化の際の協定で終わっている」とし、個人の補償要求は認めなかった。だが今回は、韓国の最高裁が「個人の(日本企業への)補償請求権はある」として補償裁判のやり直しを命じたのだ。

 慰安婦問題でもそうだが、韓国では「日本はひどいことをした!」というイメージを強調するため、日本統治時代のことはすべて「強制」だったとする「強制史観」が定着している。徴用工もすべて「強制労働」という。そこでは自らの動機や家庭の事情などまったく無視される。今回、新日本製鉄相手の原告の一人(89歳)は、韓国マスコミとのインタビューで当時の日本渡航のきっかけをこう語っている。
 
「20歳になった1943年9月、月給もたくさんやる勉強もさせてやるという日本の新聞の虚偽広告を見て、2年契約で海を渡り大阪に行った。家が貧しく散髪屋の手伝いでは稼ぎがなくて(以下略)」
 
 終戦は北朝鮮の清津にあった分工場で迎えた。契約満了後もらうことになっていた賃金がそのままになったというのだ。

 訴訟の原告が当時、日本企業で働くきっかけを「新聞広告を見て応募した」と語っているのに、マスコミが「企業による強制徴用」と強調することに疑問はあるものの、確かに彼らには補償を求める権利はある。日本の銀行や郵便局にあずけた預貯金を受け取れなかった人もいたからだ。

 問題は、個人補償を誰に求めるかだ。

 一言でいえば、徴用工でも慰安婦でも、補償問題は韓国政府に要求すれば解決する。なぜなら1965年の国交正常化の際、すべての補償は韓国政府が一括して受け取り、個人補償は韓国政府が代わって行なうことで双方が合意しているからだ。この際、韓国政府がまとめて日本から請求権資金(5億ドル)として受け取っている。

 交渉過程では、日本側がむしろ個人補償案を主張し、韓国側はそれを断わったことが外交文書に記録されている。後日、さまざまな理由をつけて新たな要求が出てくる可能性があるため締結した「請求権協定」には、これで補償問題は「完全かつ最終的に解決」したと明記されているのだ。

 にもかかわらず韓国で日本への補償要求が続いてきたのは、韓国政府およびマスコミがこの事実を意図的に無視し、隠してきた(?)からだ。

 韓国では日韓国交正常化以降、「日本は何も償っていない!」という虚偽キャンペーンが続いた。「日本を許したくない」からだ。そのことによって韓国人は元気が出るし、日本からさらに利益を引き出せる。

 しかし韓国は国交正常化の際、日本から得た5億ドルの「請求権資金」と「経済支援」で、現在の発展の基礎を築いた。世界が認めるこの事実を、韓国はいまだ表向き認めたがらない。

 ただし今回は、日本からの資金でスタートあるいは成長した韓国企業が基金を出す「補償財団」創設の動きが出ている。個人補償は韓国側で面倒を見る――これが“正論”である。韓国で世論を含めこの原則が確立されれば、日本の方でも政府あるいは企業が「それなら」と、人道的配慮で何らかの新たな協力ができるかもしれない。

※週刊ポスト2012年6月29日号