4月15日、第5節が終わった時点で、我がベイスターズは、4勝8敗、勝率3割3分3厘で、見事に定位置の最下位にとどまっている。オープン戦の絶好調をみていたら、もしかすると何かが起きるかもしれないとも思ったのだが、やはりいつも通りの結果になってしまった。

 実は数字は悪くない。これまでのチーム打率は2割6厘と、高いとは言えないが、4位広島の2割4厘を上回っている。トップ阪神の2割2分7厘とも大差がないのだ。もっと驚くべきは投手力だ。ベイスターズの防御率2.26はリーグ3位で、トップ阪神の2.46を超える好成績なのだ。

 ということは、いまの成績は不運が重なっているだけで、試合数を重ねていくとベイスターズの順位が上がっていくのか。実は、そうはならないと私は思っている。数字はよいのだけれど、成績が悪いというのは、いまに始まってことではないからだ。

 マシンガン打線で得点をするときには集中的に打つから、打率は高まる。ピッチャーも、そこそこは抑えるから、それなりの防御率は取れる。ところが、ここ一番で打てないし、ここ一番で守れないから、勝てないのだ。

 打って欲しいところで打ち、抑えて欲しいところで抑える。それがスター選手というものなのだが、いまのベイスターズには、本当のスター選手がいない。

 2000年に金城龍彦選手が首位打者を取ったとき、彼の年俸は3900万円だった。同じ年の松井秀喜選手の年俸は5億円。だが、私はこの年俸のバランスはおかしくないと思う。松井は本当にここ一番でよく打っていたからだ。

 以前、興味深い話を聞いた。スポーツ新聞のカメラマンで本当に一流の人は、バットにボールが当たった瞬間の写真を必ず撮るという話だ。インパクトの瞬間は、本当に一瞬なので、普通のカメラマンは、なかなかその瞬間は捉えられないが、スターカメラマンは、何事もなくやってのけてしまうのだそうだ。

 いまのところベイスターズが勝っているのは、ベテランの活躍によるところが大きい。三浦大輔、中村紀洋、森本稀哲など、ベテランはみなスター選手だった。ただ残念ながら、全盛期は過ぎている。だから、これからのベイスターズに本当に強くなるために必要なのは、やはり働き盛りのスター選手なのではないだろうか。

 DeNAは、5月末から、毎日無料のランチを従業員に提供するらしい。それはそれでよいのだが、スター選手の獲得にもう少しお金を使ってほしい。

■森永卓郎「ハマスタから遠吠え」
第10回〜低予算チーム
第9回〜やっぱり不安は拭えない
第8回〜今年もダメかもしれない
第7回〜ベイスターズは大丈夫
第6回〜DeNAはベイスターズの文化を変えるな
第5回〜ユニクロいいかもしれない
第4回〜ショウアップナイター
第3回〜なぜベイスターズは弱いのか
第2回〜私がベイスターズに望むもの
第1回〜私がベイスターズファンになった理由

森永卓郎(もりながたくろう)
昭和32年生まれ 東京大学経済学部経済学科卒業
日本専売公社、経済企画庁総合計画局、(株)UFJ総合研究所などを経て、現在、獨協大学経済学部教授。専門は労働経済学。主な著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』光文社2003年、『しあわせの集め方 B級コレクションのススメ』扶桑社2008年など多数。
森永卓郎オフィシャルWEBサイト