サッカーの日韓女子リーグチャンピオンシップは15日、ホームズスタジアム神戸(神戸市)で行われ、昨季プレナスなでしこリーグを制覇したINAC神戸レオネッサが、韓国WKリーグの覇者、高陽大教ヌンノピを3−0で下した。

 開始早々の8分。FWで先発した大野忍(28)が相手ゴール前、ディフェンダーの密集をワンツーパスで抜き去り、鮮やかに先制点を決めた。その後、INACはポゼッションが高く中盤も支配していたが、ボールをゆっくり回そうとすると相手の強い当たりにも手こずり、ゴールへ結びつけることができない。

 39分、状況を打開するためINACはルーキー京川舞(18)を投入。トップの位置に入るとチーム全体に縦への意識、裏を狙う動きが活発化した。ハーフタイムをはさんで51分、左サイドから上がったクロスに京川が頭で合わせて追加点。京川は87分にも同様にヘッドで3点目を決めた。

 体調不良の澤穂希(33)はベンチ入りしたが出場せず。絶対的エースを欠いたINACだったがパス、トラップ等の技術や、DFラインコントロール、ボールへの集散の早さで高陽大教を上回り、試合を終始リードした。

■日韓女子リーグチャンピオンシップ
INAC神戸レオネッサ 3−0 高陽大教ヌンノピ
 得点(INAC)大野8' 京川51' ,87'
 
 「大野はバルセロナでのメッシ」星川敬INAC監督は記者会見でそう言った。高陽大教のパク監督も印象に残った選手を聞かれ、ルーキーで2ゴールを決めた京川ではなく「INACの10番」と大野の名前を挙げた。

 先制点の場面。相手DFの密集地帯に突っ込んでいき、ワンツーパス。軽やかにデフェンスエリアを越えると冷静にゴール右隅にボールを流し込んだ。「厳しいプレスの中、決められたのは大きかった。チームとしても落ち着きが出た」と本人も話す。

 その後も左腕にキャプテンマークを巻いた10番はチームを牽引していく。京川にトップを譲った後は一列下がったポジションとなるが「トップの戦力ダウンよりも大野がボールを多くさわることが重要」と星川監督が話すように、彼女のボールタッチから後半のINACはより冷静にボールがまわしていった。その上で機を見るとスルスルと上がっていき得意のドリブルを見せる。

 パスを受けることも出すことも可能、ドリブルでの仕掛けもする。攻撃の中枢を担う存在。今季からキャプテンとなり、そのうえ今日の試合では澤不在のためチーム内、ピッチ内の重要度はさらに増した。「キャプテンとしてのプレッシャーは特にありませんでしたが…」と本人は笑うが。

 常にフォワード、得点にこだわる大野だが、チームや代表で他のポジションを任されることでプレイの幅が広がっていることを改めて感じる。それ以上に感じたのは精神面。記者会見でも落ち着いて言葉を選んで受け答えをし、あどけない顔にも大人の、フットボーラーの自信が見え隠れしていた。

 7年ほど前、彼女のプレイを初めて見た時、すでに重要な選手だった。だがその巧みなプレイと合わせ、試合後に彼女が友人と休みの日の相談をしているときの、無邪気で、ちょっとやんちゃな顔の表情を覚えている。7年が経ち、彼女のその印象は変わったと再認識した(当たり前だが)。

 「澤同様、換えのきかない選手」と星川監督は話す。本人は今後の課題を口にし、ルーキーのゴールを褒めた。だが図らずも監督のたとえをピッチ上で示し、誇張でないことを証明したように思う。

(取材・文=小崎仁久)