コナミ日本シリーズ2011福岡ソフトバンクホークス中日ドラゴンズ戦は、4勝3敗でホークスが制した。第7戦に3対0で勝利し、8年ぶりのシリーズ制覇を果たした。

 両軍3勝3敗で迎えた第7戦、ホークスは3回に川崎宗則が押し出しを選び1点を先制すると、4回に山崎勝己、7回にも内川聖一のタイムリーヒットで1点ずつを加え、ドラゴンズを突き放した。

 追うドラゴンズは、ホークス先発の杉内俊哉の前に打線が沈黙。ホークス投手陣の前に12三振を喫し、すでに今季限りでの退団が決まっている落合博満ドラゴンズ監督のラストゲームを勝利で飾れなかった。

 はたしてこのシリーズ、ホークスの勝因は何だったのか。それは、秋山幸二ホークス監督が、第3戦以降、クローザーの馬原孝浩に見切りとつけたことではなかろうか。

 12日の更新「頂上決戦」(http://blog.livedoor.jp/yuill/archives/51628245.html)では、野球を統計学的に分析するセイバーメトリクスのシンクタンク、ベースボール・プロスペクタス(BP)社が発案した「シークレット・ソース」を紹介した。
 シークレット・ソースは、ポストシーズン・ゲームなどの短期決戦の行方を占う指標で、(1)投手陣の奪三振能力、(2)野手陣の守備力、(3)クローザーの安定感の3項目で対象となるチームを比較する。

 レギュラーシーズンでの成績でホークスとドラゴンズを比較すると、(1)投手陣の奪三振能力と(2)野手陣の守備力ではホークスが優勢だが、(3)クローザーの安定感では馬原が懸念材料。ドラゴンズの勝機は、拮抗した終盤に馬原を打ち崩すことにあるを予想した。

 手前味噌で申し訳ないが、第1、2戦ははたしてその通りになった。馬原が立て続けに救援に失敗し、ホークスは連敗スタート。スコアはともに1対2と僅差だったが、ホークスには点差以上に痛い連敗になった。

 ここで秋山ホークス監督が動いた。第3戦以降のクローザーを、セットアップマンのブライアン・ファルケンボーグに切り替えた。
 はたしてこの配置転換が、功を奏した。数少ないアキレス腱を克服したホークスは、第3、4戦に連勝。対戦成績を2勝2敗の5分に戻した。この間、ファルケンボーグは2セーブを記録。馬原の穴を埋めた。

 一方、定位置を奪われた馬原は、第5、6戦に登板。第5戦は5対0でホークス、第6戦は1対2でドラゴンズが勝利したため、セーブがつく状況ではなかったが、馬原に自信を回復させようとする首脳陣の配慮が伺えた。

 だが、終わってみれば、これが今シリーズでの馬原の最終登板だった。第7戦で秋山ホークス監督は、3対0と3点リードで迎えた最終回、8回からマウンドに上がったファルケンボーグを続投させた。ファルケンボーグは、この回先頭打者の井端弘和の打球を受け降板したが、秋山ホークス監督はマウンドに森福允彦攝津正を送り込み、最後までクローザー馬原をコールすることは無かった。

 第3戦からのクローザーの見直しが、今シリーズの分水嶺になったことは素人目にも明らか。秋山ホークス監督は、不調の馬原から好調のファルケンボーグに代えることで、自らの弱点を摘み取った。

 短期決戦では、調子のいい選手から使うのは定石。クローザーの見直しも、当然と言えば当然だ。だが、頭で考えるのこと、それを実践するのとでは、天と地ほどの差がある。
 いくら結果を出せなかったとはいえ、シリーズでの配置転換は馬原のプライドを傷つけたことだろう。また、ファルケンボーグも、レギュラーシーズンでは馬原に代わり19セーブを記録し、シリーズでも第1、2戦で好投していたとはいえ、シリーズでクローザーの大役を果たせる保障はない。仮にファルケンボーグも打ち込まれれば、秋山ホークス監督への非難は避けられなかっただろう。

 そんなリスクを犯しても、秋山ホークス監督はファルケンボーグに賭け、ファルケンボーグはその期待に応えた。
 今シリーズでのホークスの勝因はやはり、クローザーの馬原に見切りをつけ、ファルケンボーグに一任したことではなかろうか。