トヨタ自動車やソニー、パナソニックといった日本を代表する大企業が軒並み巨額の赤字を計上し、工場の稼働停止や人員削減に励むなかで、大儲けしている企業がある。任天堂や、「ユニクロ」のファーストリテイリングは当然としても、肥料会社の片倉チッカリンや小麦粉製造の昭和産業といった地味目の会社の名前も挙がる。今時の儲けの秘密は何か。

09年3月期決算で64社が過去最高益を見込む

   新光総合研究所の調べでは、東京証券取引所に上場する企業のうち09年3月期に本決算を迎える1232社の予測は、前期比の売上高増減率でマイナス6.4%、経常利益増減率でマイナス60.9%、純利益増減率ではマイナス83.4%になるとみている。

   しかし、多くの上場企業が減収減益に苦しむ中で、09年3月期決算で64社が過去最高益を見込んでいる。儲かる企業のキーワードには、「巣ごもり」「内需」「低価格」をあげる。「巣ごもり」で儲かった企業の代表格は、任天堂。家庭でゲームが楽しめる「Wii」の売れ行きが好調だった。それにともない、任天堂のゲーム機の部品をつくっているメガチップスも経常利益が前期比48.3%増。

   家庭用ゲームソフトのカプコンに、カップめんの東洋水産、携帯サイト「モバゲー」のディー・エヌ・エーや、ヤフーなども名を連ねる。カップめんをすすりながら、ゲーム三昧の若者が日本の「消費」を支えているといえなくもない。

   25周年イベントや新アトラクションの投入効果もあって、入場者数が増えた東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドは、「内需型」だ。

   2月13日付の日本経済新聞社は、2ケタ増益で最高益を更新する主な企業を「低価格・節約志向」「新市場」「環境・エネルギー」の3つのキーワードに分類した。

   「低価格」では、防寒素材の「ヒートテック」が売れたファーストリテイリングや、家具やインテリアの安売りが話題を呼んだニトリ。「新市場」の分野では、後発医薬品の東和薬品や日医工。「環境・エネルギー」分野では、原発向けプラント部材の日本製鋼所が伸びた。

肥料会社片倉チッカリンの「伸び」は目を見張る

   ふだん、あまり聞いたことのない、「隠れた」優良企業は少なくない。肥料会社の片倉チッカリンの「伸び」は目を見張る。09年3月期は過去最高益を見込んでいて、前期比の経常利益増益率で222.6%にもなる。08年は「食の安全」が大きく問われたが、それが国内の農業生産の見直しにつながり、肥料が売れたこともある。

   昭和産業というとピンとこないが、「SHOWA」ブランドの小麦粉や食用油といえば聞き覚えがあるだろう。同社も前期比95.4%増と好調。しかし、「前年(07年)に原料価格の高騰があってかなり落ち込んでいたため、数字上では(08年度が)ものすごく伸びたように映っているだけ」と説明する。

   小麦粉の原料の小麦は大半を輸入に頼っていて、政府が価格を決めている。原材料費の上昇前に、早めに手配し、製造コストを抑えた。一方で商品の販売価格を引き上げたため、そのタイムラグもあって儲かった。

   ただ、足元の収益状況は厳しくなっている。この不景気で、今度は原料価格の下落で販売価格を下げざるをえなくなっている。「タイムラグのあいだに、どこまで儲けを維持できるかですね」と、今後の見通しを語る。

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