小沢民主党代表をめぐる、今回の大連立・辞任・撤回騒動は、なかなかの驚きであった。野党党首の辞任でこれだけ大ニュースになるのは、まさに現在の政治状況を映したものだろう。

 今回の辞任発表が民主党にとっても小沢氏にとってもダメージになったことは間違いない。

 仮に大連立に政治的メリットがあるとすれば、小沢氏はあの状況でもっと慎重に党内と世間の空気を読み、根回しすべきであった。たとえば党に提案したら反対されるのかされないのか、反対するのはどの議員で、それに対してどう対策するべきか、といったことを事前に計算すべきだろう。いきなりトップダウンをしておいて、反対論に対して直ちに「これは私への不信任だ」と暴発するのは、自ら選択肢を狭める下策である。

 党首会談の時点では、もっと時間稼ぎができたはずだし、福田総理とも影でいろいろと工作できたはずだ。総理と携帯電話の番号交換でもして慎重に進めるのが普通だったのではないか。

 それが、反対されると我慢できずにあのように爆発してしまう。端的に言って小沢氏は「我慢の出来ない男」である。それは小沢氏の性格なのだろうし、それをうまく利用した福田総理側が巧みだったのかもしれない。

 よくよく考えてみれば、そもそも本気で連立を成立させようとするなら、福田総理側が衆人注目の党首会談を設定してもちかけるのはおかしい。陰で根回しし、合意ができてからセレモニーとして党首会談を行なうべきであろう。自民党は、民主党を連立協議に引きずり込むのでも、民主党がそれでもめるのでも、どちらでも良いと思っていたのだろう。小沢氏は相手の手が読めず、与野党党首会談に舞い上がったと言わざるを得ない。やはり福田の方が一枚上手であった。

小沢氏は着眼や集中力は非凡なのだが、反対や批判に耐えて、議論をしながら、曖昧と忍耐を駆使する「表に立つ政治家」として本来の能力に欠けるところがある。

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