キーボード奏者であり、作曲家でもある向谷実氏は数多くの駅の発車メロディーなどを作曲したことで知られている人物。そんな向谷氏が作曲した東京メトロ東西線全駅の発車メロディーには、ちょっとした秘密が隠されているとのことで、その秘密に迫ったムービーが公開されています。

In Tokyo, These Trains Jingle All the Way - YouTube

東京メトロの駅のホームで発車メロディーに合わせて「ラーラララー」と歌っているのが、作曲家の向谷氏です。



日本全国にはその駅でしか聴けない特別なメロディーがたくさんあります。東京メトロ東西線の各駅でも固有のメロディーが流れているのですが、これは向谷氏が作曲したもの。東京メトロ東西線に乗車したことがある人ならば、ムービーを再生すると流れてくるメロディーに「聴いたことがある」と感じるはず。



「向谷実です。音楽プロデューサーで発車メロディーの作曲家をしています」



「発車メロディーだけで110以上の駅を担当していて、発着メロディーなど全部合わせると200以上の曲を作っていると思います」



「私は35年間、カシオペアというバンドでキーボード奏者として演奏をしていました」



「キーボードと言っても、シンセサイザーだったので、こんな風に腕を広げて何台も同時に弾く必要があり、とても大変な演奏でした」



その後、向谷氏は「音楽館」という会社を立ち上げ、電車に情熱をささげるようになります。そして、1995年には電車の運転シミュレーターである「Train Simulator」を発表しました。このように電車に関わる仕事を続けるにあたって、同氏に新しいコンセプトが生まれたとのこと。それが、駅で使用されるメロディーを作曲することでした。



向谷氏は発車メロディーの作曲について、「発車メロディーは聴きやすい音であることが大事です。不快な気持ちにさせるような、キンキンした音は避けて、柔らかくて聴き心地の良い音を意識して作曲しています。私の場合は、特にベル系の音を活用しています」と語っています。



「これ以外にも『ここの駅だったら、こういう風に電車が入ってくるな』とか駅の構造や雰囲気などに合わせて、曲を作っています」



向谷氏が作曲した東京メトロ東西線の発車メロディーには、ちょっとした秘密があるとのこと。「東京メトロの東西線では、始発から終点まで一つ一つ発車メロディーを聴いていくと1曲のメロディーになるようになっています」と向谷氏は説明しています。



しかし、それでも駅の雰囲気は大事にしていて、「下町と呼ばれるような駅の発車メロディーは『下町っぽさ』を出すように和楽器を盛り込んだ楽曲にしていたり……」



「学生街の駅ではヤングジェネレーション(若い世代)に合わせた楽曲にしたりと街の雰囲気に合わせた曲を作っています」と同氏が語っています。



雰囲気の違う曲を1曲のメロディーにしてしまう秘訣については「Very Secret Formula(秘伝)ですけどね」と述べて、向谷氏は回答を避けていました。



このように語っている向谷氏ですが、自身のことを「幸運な人間」であると感じているそうです。



「正直なことを言いますと、鉄道ファンである私が『発車メロディー』を作れたことは、とても光栄なことです。そして、実際に自分の曲が大好きな鉄道で使用されていることに、大きな幸せを感じています」と語り、ムービーを締めくくっていました。