三洋電機の野中ともよ会長(資料写真:吉川忠行)

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経営再建中の三洋電機<6764>は18日、06年3月通期の連結最終赤字が2330億円に悪化する見込みとなったのを受けて、野中ともよ会長、井植敏雅社長の役員報酬を12月から07年3月まで50%カットすると発表した。創業家出身で前会長の井植敏代表取締役兼取締役会議長は、役員報酬の全額を返上する。野中会長は、大阪府守口市の同本社で行った会見で、今回の措置について「過去との決別をしなければ新しいスタートが切れない」と説明した。

 そのほかの全役員約30人に対してもこれまで22─30%だった返上幅を40─50%に拡大して12月から07年3月まで、11─17%だった課長以上には21─27%にして来年1月から、それぞれ給与カットを実施する。一般社員に対しても、1月から基本給を一律5%カットする方向で、経営陣は同日に労働組合に申し入れ、期間などについて交渉に入る。

 三洋は同日、06年3月期の通期業績予想について、2度目となる下方修正を発表。最終赤字が2330億円(前回予想は1400億円の赤字)と、1715億円の赤字と過去最悪だった05年3月期から更に悪化する見通しとした。近藤定男副会長、桑野幸徳取締役相談役の歴代トップ2氏が、経営悪化の責任をとる形で辞表を提出しており、今月末の役員会で受理される。同じく辞任の方向で調整していた井植議長は役職にとどまる。同氏の留任について、野中会長は「改革のために十分に力を発揮していただきたい」と話した。

 また、総合家電撤退を柱とする中期経営計画も発表。新潟県中越地震の影響が長期化して、不採算となっている半導体事業を「分社化を視野に」(井植社長)大幅に縮小。テレビ事業は他社との提携も視野に入れて縮小し、中国での生産・購買に集中する。

 同社が抱える有利子負債1兆2529億円(9月末時点)のうち、約3400億円を占める金融子会社の三洋電機クレジット<8565>は資本・業務提携を軸として、連結ベースの負債を圧縮する方向で財務体質の改善を図る。一部報道で三井物産が挙げられていた売却先については、前田孝一副社長から「現時点では決まっていない」との返答にとどめた。

 一方、設備や研究開発に投資し、環境事業やシェア世界一の二次電池を軸にした構造改革を加速する。米投資銀行のゴールドマンサックス、大和証券SMBC、三井住友銀行を引き受け先とする第3者割当増資を実施し、総額2000―3000億円を調達する予定。【了】