途中出場でまずまずのインパクトを残した久保だが、守備面での仕事はまだまだか。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1・1節]FC東京1-1浦和/2月24日/味スタ
 
 スペクタクルではないが、手堅い。これが、FC東京×浦和戦の印象だった。双方とも組織立った守備で敵の攻撃の芽を摘みつつ速攻からゴールを狙う展開だったが、その傾向がより濃かったのはFC東京のほうだろう。
 
 DFとMFの2ラインがしっかりとブロックを築き、流れの中から浦和に決定機を与えない。とりわけ素晴らしかったのは森重とCBコンビを組んだチャン・ヒョンスで、この韓国代表DFはゴール前に文字通り壁の如く立ちはだかった。
 
 だが一方で、FC東京は攻撃に迫力を欠いた。仕掛けや崩しの局面では2トップの一角を担ったディエゴ・オリヴェイラの個人技に依存する傾向が強く、連動したアタックはほぼ皆無。郄萩のスルーパスに反応した東が先制点を決めたシーンを除けば、決定機らしい決定機はなかった。
 
 途中出場の久保が小気味いいパスワークでリズムを生み出し、試合終盤はゴールに迫る場面もあったが、それでも90分通して攻撃の形はあまり見えてこなかった。
 
 浦和戦だけで判断するかぎり守備はある程度できているので、あとは攻撃、という見解になる。だが、「あとは攻撃」の部分がなかなか難しい。サッカーは、攻撃と守備とで切り離せないスポーツだ。この日のFC東京の守備が素晴らしかったのは、FWの前田がハイプレスを怠らず、サイドハーフの大森が自陣深くまでケアしていたからでもある。
 
 前田はノーゴールという点で、大森はドリブル突破が少なかったという点で不満は残るものの、彼らの貢献なしに強力な守備網は形成できなかった。実際、森重も次のように話している。「前線からしっかり守ってくれたので、最終ラインにいる僕たちの仕事は少なかった」と。
 
 確かに久保の投入で攻撃に流れが生まれた。しかし、同時に自陣エリア内まで攻め込まれる頻度もやや高まった点は見逃せないだろう。なにを主張したいかと言えば、「あとは攻撃」の部分を「久保のスタメン起用」と結びつけるのは早計だということだ。
 
 チーム全体のバランスを考えれば、現時点ではまだ前田を先発で使うべきだろう。ゴールに捉われすぎて、浦和戦で良かった部分(組織立った守備)を壊すようなことがあっては元も子もない。

 久保が素晴らしい才能の持ち主であることは疑いの余地がない。ただし、16歳でフィジカル的な部分はさすがにプロの世界では見劣りする。前田がこなした守備のタスクを、彼が同レベルで実践できるとは考えにくい。
 
 今季のFC東京がここから勝点を積み上げるには「堅守がベース」という部分を崩さずに戦うことだろう。攻撃に特化した久保はあくまでスーパーサブと考えたほうがベターではないか。
 
取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)