このままで自分の力がつくのかな?と不安なので、転職を考えています(写真:KAORU / PIXTA)

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いわゆる大手といわれるIT企業に4月に入社しました。結論から先に言うと、転職を考えています。
業務としては新規事業の検討をしていますが(私はまだ自分の案件があるわけではありません)、上司の仕事を見ていて、仕事のスピードが遅いと感じたり、エビデンスにこだわりすぎているように感じています。
上司からはわからないことがあったら聞いてと言ってもらえるのですが、まず自分の考えを述べてから聞いてと言われます。が、理解するので精いっぱいで、自分の意見や考えを持てず、質問もできなくなってしまっています。
会社も業績はそんなによくなかったりしますし、このまま自分の力がつくのかな?と不安になったりしています。
しかし、これといってやりたい!と思うこともなく、激務じゃなくて、仲のいい職場で働きたい、人にアドバイスしたり、教えることがしたいなど、ふわっとしたことしかありません。自分に合うこと、やりたいこともわからない現状をどうすればいいのかわからないです。
正直、福利厚生などは今の会社ではすごく恵まれていますが、なんとなくずっとこの会社でいいのか?という不安があります。何かアドバイスをもらえると助かります。
IT企業の企画 O.T

環境が悪いからこそ、人は成長できる


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現状の考えのまま転職をしても何も事態の打開には至らないでしょう。

O.Tさんは人にアドバイスをしたり、教えることを最終的なゴールにされているようですが、そのためにはご自身がもっとしっかりしないといけません。

現在の環境や上司の責任にして、やらない、できない理由を並べているようでは他人へのアドバイスも何もないでしょう。

本当にそういったことをしたいのであれば、他人がO.Tさんの話を聞きたいと思えるような実績と考えを自らの経験を通じて蓄積していかなければいけません。

そのためにはもっと悩んで、もっと苦悶して、もっと努力して、その結果としてご自身がご自身に対して自信を持てるレベルに到達することが必須です。

自分自身の問題を解決できない人の話なんて誰も聞きたくはありませんよね? そんな人に相談したいとは誰も思いませんよね?

会社の実績や上司のレベルなどは、ご自身の経験を構築するうえでさほど大きな問題ではありません。いや、むしろ環境が悪いからこそ、人は成長できるのです。

実際に私自身は、文字どおり何もなかった小さな会社でやってきたからこそ、そして何も教えてくれない、いや、もっと言うと、「何もしない、いい上司」に恵まれたからこそ今の自分がいるのだと考えています。

環境が悪くても成功するためには、工夫が必要

問題解決の方法も、仕事のやり方も、他人とのコミュニケーションの取り方も全部自分で考えて工夫して、自分の経験としてきました。そしてその経験が、現在の私を形成しているのです。

要は自分自身がしっかりとしていれば、周りの環境いかんによらず成長もできるし、他人にアドバイスをできるような力強い経験を積めるものです。

環境がよければ誰でも成功できます。一方で、環境が悪くても成功できるのは一握りです。

環境が悪くても成功するためには、工夫が必要です。そしてその工夫が自分自身への自信と個性になり、その自信と個性が、迫力のある言葉へとなり、他人に対する説得力になるのです。

説得力とはすなわち、他人がその人の話を聞きたいと思えるような魅力のことです。逆境は人を創るといいますが、これは事実です。そういった環境であるがゆえに、強い自分が形成される土壌が整っているともいえます。

反対に、そういった逆境を理由に何もしないようでは、つまり他責のままでは他人に対する説得力はおろか、自分自身に対する自信も生まれようがありません。

自分自身に対する自信がない人の話なんて、誰も聞きませんよね。

O.Tさんが、自分に合うことや、やりたいことがわからないと言っている理由は明白で、とことんやってみた経験がないからです。

物事に挑戦してみないことには、物事の本質はつかめません。本質がわからないと、自分に合っているかどうかもわかりません。

O.Tさんは今の状況を最大限生かしきれていないのです。いや、むしろまったく生かしきれていないのです。

今のまま転職しても、同じ問題にぶつかるだけ

大手企業ということは、何かを成し遂げるためのリソースも十分なはずです。そして、聞こうと思えば的確なアドバイスをくれる優秀な人材も周りを見渡せば豊富なはずです。仮に本当に上司がダメだったとしても、アドバイスを求めることができるのはその人だけではありませんよね。

さらにはO.Tさんもおっしゃるとおり、充実した福利厚生もあるのですよね? そんな恵まれた環境、そうそうありませんよ。そういった環境を十分に生かしきれない人が、どうしてそれ以下の環境で活躍できましょうか?

百歩譲って、この会社ではやりたいことができないというのであれば、その会社にあるリソースを活用し尽くして、挑戦し尽くしてから、言いましょう。厳しい言い方ですが、現在のO.Tさんは挑戦せずに、イメージだけで語っている状態です。

そこから実際にアクションを起こさないことには、その会社がO.Tさんにとっていい会社か否かは判断できないはずです。

今のままのスタンスでは、転職してもまた同じ問題にぶつかります。現在の会社でできるかぎりの挑戦をして、それでも本当にダメなときに初めて転職を考えるべきです。

結果を出すためには、自分自身の努力と環境の双方を高めて、自分の実力と環境がうまくかみ合うことが大切です。

だから転職という形で環境だけ変えても無駄なのです。ご自身も変わることで、挑戦への第一歩を踏み出してみましょうよ。

挑戦を通じて見えてくる景色はおそらく現在とは異なる景色でしょう。その景色を見たうえで、転職を含めた次のキャリアの判断をされるのがベストです。

O.Tさんが、現在の恵まれた環境に気づき、まずは挑戦への一歩を踏み出すことを応援しております。